STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
「中瀬さん。君の話した夢なんだが、もしかして場所は沖縄じゃなかったか?」
「え?……そう、だね。うん。たぶん、沖縄だった……と思う。車に乗ってるときに、そういう看板を見た気がする」
「車に乗っていたのは、君と俺と由季さん。他には運転手と背の低い自衛隊の男…」
「う、うん」
「男の名前は…下山」
「……!」
フブキの顔色が明らかに変わった。沖縄を車に乗って走っている夢なら、まだ偶然で済ませられるかもしれないが、具体的な名前まで一致したとなると話は別だ。
俺はその後のことも全て話した。自分の見た夢を寸分狂いなく言い当てる俺に終始驚いていた。
俺はフブキが原因不明の病気ではないことを伝えてやりたかった。だからリーディングシュタイナーの要点についても説明した。
だが、それを話すと、フブキは予想外のことをつぶやいた。
「だったら、他にもいるかも……病気じゃない人」
「そうなのか?」
「ヒマだから、みんなとね、よく話をするんだ。自分の見た夢の話。それがものすごくそっくりで、びっくりすることがあって。さっきも小学生の子と話してたらね、行ったこともないのに沖縄にいる夢を見たって。戦争で東京が燃えちゃって、自衛隊に助けられて沖縄に逃げる夢だったって……」
なんてことだ。フブキ以外にも、病気でもなんでもない人が無意味に長期入院させられていることになる。
「お医者さんに話した方がいい?」
「いや、とてもじゃないが信じてもらえるとは思えない。それどころか、妄想がひどくなったって診断されたりでもしたら…」
「うー。そっかぁ」
「他の人にもまだ黙っていた方がいい。騒ぎになったら大変だ」
と、カーテンの外から由季さんが顔を覗き込ませてきた。
「岡部さん。看護師さんがこっちに来ます」
それは面会終了を知らせるものだった。
「バタバタしちゃってごめんね、フブキちゃん。今度はゆっくりできるように、早めに来るね」
「ああん、マユシィ、行っちゃやだぁ~」
「でも、ナースさんに怒られちゃうよ?」
「そんなの別にいいよー。今夜は私と一緒に寝て?ううん。今夜は寝かせないぜ?」
フブキがいつもどおりに戻って、まゆりの手を離さない。苦笑しつつ、その手を引き離すのはカエデだ。
「まゆりちゃんをとっちゃダメよ?なるべく来てあげるから」
「むぅ。オカリンさんは強敵だなぁ」
だから別にまゆりは俺のものではないって…。
名残惜しそうにするフブキを置いて俺たちは病室を出た。
面会時間の終了した病棟はシンと静まり返っていた。エレベーターを待つ間に、俺はスマホをチェックする。と、鈴羽からラインが来ていた。
『ちょっと2人だけで話がしたい。連絡を待ってる。』
短い文面だが、そこからはただならぬ緊張感が漂っていた。