STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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まゆりたちと別れたあと、鈴羽に連絡したら、待ち合わせ場所としてラジ館屋上を指定された。

 

足を運んでみると、暗い屋上で鈴羽が静かにたたずんでいた。

 

「………」

 

全く笑顔がない。闇の中で鋭く光るその双眸に見つめられると、ゾクリと背筋が寒くなってしまうほどだ。明らかにいつもの鈴羽じゃなかった。というより、本来の鈴羽に戻った、という感じか。

 

俺にとってはあまり快い話にはならなさそうだな。

 

「悪かったね、オカリンおじさん。こんな所に呼び出しちゃって」

 

「話って、なんだ?」

 

「あ、うん……。あたしは、なんていうか、話の駆け引きとか、上手な情報の引き出し方とかそういうの苦手でさ……」

 

言い淀んでいることろを見ると、話しにくい話題なのは間違いない。

 

「単刀直入に言ってくれ。以前のお前なら、たぶんそうしていただろう?」

 

α世界線の鈴羽とは違い、β世界線の鈴羽は冷酷な感じだった。あの日、初めて会ったときにはその違いにずいぶん驚かされた。だが、今では俺を気遣ってくれているように思える。

 

「…あたしはオカリンおじさんの知ってる阿万音鈴羽じゃないよ」

 

「うん?」

 

「今日、あたしはおじさんを尾行したんだ」

 

「尾行?」

 

「そう。病院の中まで、ずっと」

 

なぜ、と考えたが、今鈴羽がそんなことをする理由など、たったひとつしかない。

 

「俺が世界線を移動したことに、気づいたのか?」

 

「あのクリスマスの夜に、おじさんにリーディングシュタイナーが発動したんじゃないかと、ずっと疑ってたんだ。あの日だけじゃない、今日もだ。それで、確信に変わったよ」

 

鈴羽には、世界線変動が起きたことをあえて話さなかった。こうして鈴羽が焦り出すのが目に見えていたからだ。

 

「…………」

 

「訊かせて。ここはもう、前の世界線とは変わってしまったのか?」

 

「…訊いてどうする?」

 

「いいから答えてっ!」

 

その瞬間、目にも見えないスピードで、鈴羽は銃を抜いて俺に向けた。

 

「これは命令だ。岡部倫太郎」

 

「っ……!」

 

狂いなく、その銃口は俺の眉間を狙っている。

 

「冗談、だよな?」

 

「冗談でこんなことはしない」

 

今の鈴羽は、初めてこのβ世界線に来た時と同じ——任務の忠実な遂行者としての自分を取り戻そうとしているように見えた。

 

「もう一度訊く。世界線は変動したのか?ここはもう、以前とは違う世界なのか?」

 

詰め寄って来る鈴羽の手は、微かに震えていた。半年前、この時代にやって来たばかりの鈴羽なら絶対に考えられないことだ。そんな自分を恥じているのか、彼女は歯をさらにきつく噛みしめた。

 

その拍子に唇をかんでしまったらしく、口の端から顎に向かって真っ赤な血がツウッと一筋流れ落ちる。

 

俺はその血の筋を見つめながら答えた。

 

「大丈夫だ。俺たちは、以前のままの世界線にいる……」

 

「…本当に?」

 

「ああ。一度、別の世界線に移動したのは事実だが、再び元の世界線に戻った、はずだ」

 

「それをやったのは誰だ?ロシアか?」

 

「…だと思う」

 

「とうとうタイムマシンの実験を開始したってことか?」

 

俺は頷いた。

 

「それなら、もう一刻の猶予もないじゃないか。連中が実験を続ければ、やがて取り返しのつかないことが起きる。シュタインズゲートに続く道が、閉ざされてしまうかもしれない。…あたしは馬鹿だ。悩んでる場合じゃなかった。もう説得なんて終わりだ……」

 

「どうする気だ?」

 

「岡部倫太郎。あたしの命令に従ってもらう。一緒に、7月28日に行くんだ」

 

「拒否したら?」

 

「拒否なんてさせない」

 

パンッ、と音が鳴り響いた。金属的で不快な耳鳴りとともに、激しい痛みが鼓膜を襲う。

 

撃った。本当に撃った。

 

「次は脅しじゃなくて、当てる」

 

発砲した鈴羽は、今にも泣きだしそうな目で俺を睨みつけていた。

 

「………」

 

俺たちは無言で、じっと視線だけを交わしたまま立ち尽くす。

 

鈴羽を止めるための言葉を探す。だが、適当な言葉では鈴羽は止められない。どうすれば…。

 

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