STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
ふと気づくと、鈴羽はタイムマシンの中で毛布にくるまっていた。
ひたすら泣き続けたせいか、タイムマシンの中に入ったことも、倫太郎が帰ったことも気づかなかった。
隣では、父である至が同じように別の毛布にくるまり、鈴羽のことを見ている。
「落ち着いた?」
鈴羽は小さくうなずく。
「今、何時?」
「もうすぐ日付が変わるお」
「ごめん。こんな時間まで付き合わせて」
「大丈夫。前にも言ったっしょ?父さんのこと、いくらでも頼っていいのだぜって」
「う、うん…」
鈴羽は手袋をはめた手で、自分の頬をさすった。
由季からもらった手袋はとても温かく、手だけはポカポカしていた。
「ボクさ、いつか必ずオカリンもボクらと一緒に……いや、違うな。ボクらの先頭に立って指揮を執ってくれるって信じてるんだよね」
普段おちゃらけてばかりの父が、真面目に語りだしたことに鈴羽は驚いた。
「未来ガジェット研究所は、オカリンがいてこそ、だから。今はちょっと腐ってるけど、きっと立ち直る。同時に、鳳凰院凶真もよみがえるわけ。不死鳥の名は伊達じゃない的な。厨二病乙的な。そのときが来たら、たぶんオカリンは、自分からタイムマシンに乗るよ。鈴羽に言われなくってもね」
父が慰めてくれていることに気づき、鈴羽の胸の奥の方がほんのりとあたたかくなった。
「父さん。すごく恥ずかしいこと言ってるの、自覚してる?」
「うは。ですよねー」
だが、鈴羽は少しだけ吹っ切れたような気がした。
「あたし、明日までに手紙書くよ。オカリンおじさんに。直接顔見て話すと、また変な感じになっちゃうから。ごめんなさいって言うのと、もうちょっとだけ、もがいてみるって。だからオカリンおじさんにも、考えてみてほしいって」
それがいいお、と至は微笑んだ。
「そうは言っても……実はもうあんまり時間はないんだけど」
「うん?ロシアが実験を開始したから?」
「実は、タイムマシンを制御してる量子コンピューターの内臓電池、もうすぐ切れそうなんだ」
「……マジ?」
至は電池が切れることにも驚いたが、さらりと量子コンピューターというワードが出てきたことにも驚いた。未来ではそうなっているらしい。
鈴羽はバツが悪そうに話し出した。
かがりを捜すために、何度もジャンプを繰り返したこと。タイムトラベルをしなくても、座標計算のために内臓電池を消費し続けていること。そして、マシンそのものの燃料よりも、正確に時空間の制御をしてジャンプすることができなくなることの方が深刻な問題であること。未来の技術で作られたバッテリーであるため、充電や取り換えはできないこと。
至もバッテリーを実際に見てみたが、原理も構造も理解できなかった。
「で、このバッテリー、あとどれくらいもちそうなん?」
「たぶん……あと1回か2回ジャンプしたら、それで終わり」
「たったそれだけ⁉」
「うん。残ったバッテリーで正確なジャンプをするには、あと半年が限界だろうね。牧瀬紅莉栖を救いに行けるタイミングも、そこまでってことになる……」
鈴羽は至の背中にもたれかかり、息をついた。ポヨンポヨンとしていて気持ちがいい。
父の温かな背中に寄りかかっているうちに、鈴羽は猛烈に眠気に襲われた。油断すると、即、眠りに落ちてきてしまいそうだ。
たまにはこの睡魔に身を委ねてしまうのもいいかもしれないと思った。
だから、子供のように膝を抱えて、そっと目を閉じた。
「そっか。結局、鈴羽は、この夏までに必ず行っちゃうんだな……たとえオカリンがどんな結論を出すとしても……」
眠りに落ちる直前、耳元で、父の独り言が聞こえたような気がした。