STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

215 / 303
(15)

2011年1月23日(日)

 

 

「こ、これは……まさに“Paradise”……!」

 

秋葉原の街で、真帆は異常なまでにテンションが上がっていた。

 

秋葉原と言っても、いわゆる萌えの街ではなく、電気街の方を案内していた。およそ女の子を案内して見られる反応ではない。そもそも電気街の方なんて案内なんてしない。

 

それからもジャンクパーツを見ては大声を上げて感動している。正直ついていけない。

 

『真帆先輩は、実はこういう人なのよ』

 

「俺も、ここは何度か来たことがあるが、あんな顔をしてパーツを愛でる人間には、これまで1人しかお目にかかったことがない」

 

『分かった。橋田さんのことでしょう?』

 

「ああ…」

 

『さすがにあの人と同類扱いするのは、先輩がかわいそうよ。あんたの話を聞く限り、橋田さんってとんでもないHENTAIだから』

 

 

レスキネン教授と真帆の帰国が数日後に決まった。もうすぐ日本を離れることになったので、以前約束した秋葉原案内を頼みたい、と真帆から連絡があったのだ。

 

だから俺は真帆と“紅莉栖”を連れて、秋葉原の街に繰り出していた。

 

そろそろ昼食でも、と思い駅前の方に出ると、真帆がある店の前で足を止めた。

 

「ちょっとだけ、覗いてみてもいいかしら?」

 

それはゲームセンターだった。

 

真帆はわき目もふらず、クレーンゲームに近づいていくと、ガラスにへばり付いて中を覗き込んだ。

 

そこには、@ちゃんねる生まれのキャラクターを商品化したぬいぐるみが色々と入っていた。

 

もしや真帆も紅莉栖と同じように、隠れ@ちゃんねらーなのだろうか。

 

「おい、“紅莉栖”。比屋定さんもお前と同じく@ちゃんねらーなのか?」

 

こういうものに興味を示すのが意外過ぎて、俺は“紅莉栖”にそう尋ねた。

 

『ちょっ!おま…っ!わ、私、そんなの知らないわよっ!あっとちゃ…?なにそれ?』

 

分かりやすく焦っている。隠すつもり、ないだろコイツ。

 

「隠さなくていい。お前が生粋のねらーであることは把握済みだ」

 

『ちょっとあんた!勝手なこと言ってんじゃないわよ!どこにそんな証拠が……』

 

「ぬるぽ」

 

『ガッ………あ、しまった』

 

コイツ、『Amadeus』でも変わらないな。

 

 

そんな“紅莉栖”は無視して、比屋定さんに声をかける。

 

「比屋定さん、そのぬいぐるみがほしいのか?」

 

「え、ええ。これ、かわいいじゃない」

 

“紅莉栖”と同じことを試してやる。

 

「ぬるぽ」

 

「………?」

 

引っかからない。さすがに違ったか。

 

「ぬる…何?それは何なの?」

 

「いや、“紅莉栖”の好きな——」

 

『うるさいうるさいうるさーい!真帆先輩に余計なこと吹き込んでんじゃないわよ!』

 

「?」

 

必死になる“紅莉栖”に、真帆は首を傾げる。

 

「でも、比屋定さんがそんなぬいぐるみに興味を示すなんて、意外だな」

 

「ああ。これね。紅莉栖のベッドルームに置いてあったのよ」

 

「へぇ。そうなのか」

 

『ちょっ!真帆先輩?』

 

アメリカまでわざわざ取り寄せたのだろうか?

 

「紅莉栖はそれがなんのキャラクターなのか教えてくれたか?」

 

「いいえ。何度か訊いてみたけど、延々とはぐらかされたわ」

 

「ははは。だろうな…」

 

「だからずっと気になっていたのよ。岡部さんは知っているの?」

 

「うーん。まぁ」

 

『お~か~べ~……!』

 

「お、俺も知らないんだ。ははは…」

 

そこまでして隠さなくてもいいだろうに。まぁ、その界隈に明るくない人の反応は刺さるからな。何も知らない真帆には知られたくないというのも分かる話だ。

 

「そう…」

 

名誉は守ってやったぞ。感謝しろ、“紅莉栖”。

 

 

 

 

それから真帆はそのクレーンゲームに挑戦した。クレーンゲームは初めてのようで、意気揚々とチャレンジしたのだが。

 

「ちょっ、これ、どうなってるのよ!アームが弱すぎるんじゃないの⁉」

 

商品を取らせないために弱く設定してあるアームに怒っていた。次々と100円玉を投入しては撃沈している。そして——。

 

 

 

「むぅぅっ……」

 

真帆は唸ると、残った300円を握りしめたまま、ゲームセンターの奥へと歩いていった。

 

…かつて偉い人は言った。クレーンゲームは貯金箱であると。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。