STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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「だから厨二病じゃないんだって!いいか。聞いてくれ。これは鈴羽とも関連している話だ!」

 

「……鈴羽?」

 

鈴羽の名前を出した途端、ダルの表情が変わる。俺の話をなんとなく察したようだ。

 

「お前だって鈴羽の使命を知っているだろ?」

 

「…kwsk」

 

「中鉢論文だ」

 

ダルは大きくうなずいた。全て伝わったらしい。

 

「マジで?」

 

「最初からマジだ」

 

「ま、最初からそんなところじゃないかって予想はしてたけど」

 

ダルはそれ以上は何も言わずに、かたわらのラックに設置されている鍵付きの耐火ボックスを開けた。そこに、ノートPCとハードディスクが隠してあった。

 

「それが…」

 

ノートPCは12インチの液晶モニターを搭載している日本メーカーのものだ。色は深い赤だった。ハードディスクは耐ショック性に優れたラバー外装が売りの米国メーカー製。

 

「確認だが、結局、セキュリティは破れなかったんだよな?」

 

「まぁ、ボクたちが作ったソフトの前には、どんなハッカーもお手上げっつーことで」

 

「もうこれ以上、解析はするな」

 

「一応、依頼料をもらってるわけだが」

 

ダルが申し訳なさそうに真帆を見る。

 

「………」

 

真帆は俺たちを睨んでいる。当然だ。まだ何も説明していないのだから。

 

「……さっきも聞いたけど、あなたたちは紅莉栖の事件についていったい何を隠しているの?」

 

「真実を知ろうとすることが、必ずしも正しいとは限らない」

 

「それはあなたの考えよ。判断すべき情報も提示してくれないなんて」

 

「危険なんだよ!君だってこの間襲われたんだ!それは分かっているはずだろう⁉」

 

「私は“Knight”の後ろに隠れているだけの臆病者になりたくないわ。科学者として、真実に辿りつく努力をやめたくないのよ。たとえそこに、どんな危険が潜んでいるとしてもね」

 

真帆らしい言い回しだ。だが、そんなことが言えるのは、何も知らないからだ。知ってしまえばもう、後戻りはできなくなる。知らないままでいるほうがずっといい。

 

「分からず屋だな…」

 

「もし、私が紅莉栖だったとしても、たぶんそう言うんじゃないかしら?違う?」

 

「……!」

 

ハッとした。真帆の言う通りだった。似たようなやりとりを、俺は紅莉栖ともした覚えがある。たしかあれはSERNについて調べようとしていたときだった。

 

「これはもう、ちゃんと話すしかないって」

 

「ダル!」

 

「何をどう言っても納得しないって顔してるお、真帆たんは」

 

ダルの言う通り、説得は、難しいかもしれない。紅莉栖にそっくりな彼女の好奇心を押さえることなんてできないのかもしれない。たとえその好奇心が、猫を殺すことになったとしても。

 

「ええ。納得しないわ」

 

「それに、中途半端に関わってる方が、かえって危ないんじゃね?オカリンの言うことがマジなら、だけどさ」

 

確かにその言い分には一理ある。このままだと真帆は、知らず知らずのうちに危険なことへ首を突っ込んでしまい、取り返しのつかないところまで行ってしまいかねない。

 

このPCはもう、友達の形見なんていう私的なレベルのものではなくなっている。国家規模で争奪戦を引き起こす代物なんだ。

 

紅莉栖の家をロシア語を話す連中が放火したこと。ヴィクトルコンドリア大学のレスキネン教授の研究室にFBIを名乗る男たちが調査しにやって来たこと。その目的は紅莉栖のノートPCとハードディスクで間違いない。

 

「鈴羽に関することも、話すことになるぞ。ダル。お前はそれでいいのか?」

 

「…しょうがないっしょ。鈴羽には後でボクから話しておく」

 

ダルの返事を聞いて、俺は真帆に向き直った。

 

「比屋定さん。ひとつだけ約束してくれないか?君は科学者だ。しかも、極めて理性的な人だと俺は信じている。感情に任せて迂闊なことはしないでくれ。軽率なことはしないでくれ」

 

——かつての俺のようなことは、しないでくれ。

 

 

「これから話すことは、突拍子もないことだ。馬鹿げていると思うかもしれない。けど、事実なんだ。——だから」

 

「回りくどい言い方はやめて。いったい私に何を誓わせたいの?」

 

俺は腹を決める。

 

「………牧瀬紅莉栖を救おうなんて、絶対に考えるな」

 

「……え?」

 

真帆は何を言われたのか理解できなかったようで、ポカンとしている。

 

「紅莉栖を…救う?」

 

「それが約束できないのなら、話すつもりはない。どうする?」

 

俺とダルの表情をじっと見る。

 

「救える可能性が、あるということ?」

 

「そう思えるかもしれないが、実際には可能性はゼロだということだ」

 

「……さっきも言ったでしょう。判断すべき情報も与えられていないのだから、安易に解答は出せない」

 

「………」

 

「教えて。全てを」

 

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