STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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2010年12月5日(日)

 

 

鈴羽は怒っていた。怒りの原因は父である橋田至だ。昼前に起き、カップ麺を3つも平らげ、お菓子をつまみながらネットサーフィンをしている。

 

そうでなければエッチなゲーム。娘を前に、よくもそんなゲームが出来るものだ。

 

今は、何やらネットで活動している人同士が結婚していたらしく、そのことに腹を立てている様子だ。

 

リア充なんとか……と言っているが、鈴羽にはその言葉の意味は分からない。だが、なんとなくパートナーがいる人に対して妬みや僻みを込めて使う言葉であるらしいことは分かる。

 

至だって将来、阿万音由季と結婚して、自分という娘が生まれるのだ。人の色恋沙汰に口を出す必要はないだろうに。

 

「父さん!」

 

至が振り返るよりも早く、その太い首に整髪用のスプレー缶を押し当てる。

 

「ヒィッ!す、鈴羽?お父さんに銃を向けるなんてダメなんだぞ~。今ならお父さん怒らないから、銃を降ろしてほしいんだお」

 

「怒ってるのはあたしだ」

 

「そうですよねすみません!」

 

以前、銃を一通り扱えることを説明してからというもの、こうしてスプレー缶を当てるだけで、銃を突きつけられていると勘違いしてくれるようになった。

 

親に銃を向けて脅す、という構図に罪悪感は覚えるものの、言う事を聞いてくれない至には、こうするしかないのだ。

 

「何度も言ってるよね?規則正しい生活をしろって。もっと早く寝て、早く起きること。食事も即席麺だけじゃなくて、バランスを考えたものにすること。お菓子はいっさい禁止。運動もすること。あれだけ言ったのに、一つだって守れてないじゃないか!」

 

「ヒィッ!お、怒らないでっ!これからは守るようにしますからぁ!」

 

こうして脅すと、その場だけは大人しく言う事を聞くのだが、日を跨げば元通りになってしまう。

 

「た、ただ、ボクの秘密のバイトは知ってるっしょ?ボクくらいのハッカーになると、海外のクライアントともやり取りしてるんだよね。時差もあるし、昼夜逆転するのも仕方ないっていうか……」

 

「それは仕方がないから目を瞑るとしても、父さんはだらしなさすぎるんだ!娘にこんなふうに怒られて、恥ずかしくないの⁉」

 

首元からスプレー缶を離して、こちらを向かせる。

 

「恥ずかしいっていうか、未来から来た娘に怒られるとか、こんなレアなシチュ、普通は経験できないからどんと来いって感じだお」

 

「…………」

 

デレデレとにやけた顔でそんなことを言ってくる。スプレー缶が至に見えないように背中に回した右腕を少し動かす。

 

「じゅ、銃はマジ勘弁だお!でも、『んもう、ダメだよパパぁ…』って甘やかすような口調で言ってみてくんない?」

 

「…………」

 

「なんでもないでござる」

 

怒る気も失せて、鈴羽はソファにどさっと身を落とした。

 

「って、それスプレー缶かよ!父さんを騙したな!許せん!」

 

銃ではなかったことに気付いて至は憤慨する。

 

「未来の父さんはもっとかっこよかったのに…」

 

「うっ……それは言いっこなしだお」

 

未来の自分を引き合いに出されると、至は弱い。未来の自分は、タイムマシンを作り上げたのだ。そんな偉業を達成したからこそ、鈴羽がこうして目の前にいる。

 

このまま時間が進めば、自分もそんな風に、鈴羽から格好いいと言われる父親になれるのだろうか。甚だ疑問だった。

 

「ボク、ホントにタイムマシンなんて作るん?こうして研究し始めたけど、どうにも作れる気がしないんだよね」

 

「大丈夫。父さんなら絶対に出来るよ。しっかりして」

 

怒っていたかと思えば、自分に対して、このように絶対的な信頼を口にしてくれる。ますます自分に自信がなくなってしまうのだ。

 

「父さんはすごいんだ。あ、でも、タイムマシンを調べちゃダメだからね。あれを精査したら、タイムパラドックスを引き起こしかねないから」

 

食事や運動のこともそうだが、これが最も気を付けて監視しておかなければならない問題なのだ。

 

何度止めても、至はタイムマシンを精査しようとしてしまうのだ。未来の技術で作られたタイムマシンを調べられると、この時代にはない技術を知る事になり、タイムパラドックスが起きかねない。

 

だが、タイムマシンをロックしても無駄なのだ。あのハッチは生体認証で開くようになっている。認証をパスできるのは、鈴羽と至のふたりだけ。だが、この時代の至でもそれは可能なのだ。

 

今から26年後の至と今の至では、別人といってもいいほど見た目に差があるが、未来の技術で作られた生体認証のハッチは、この時代の至でもバッチリ認識してしまう。

 

「それは分かってるお。でもさ、自信無くなるんだよね」

 

いきなりタイムマシンを作れるとは思っていない。だからまずは理論の勉強をしたり、かつて作った電話レンジ(仮)の再現を試みている。岡部から聞いたα世界線では、タイムリープマシンなんて代物も作り上げていたらしい。

 

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