STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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「ちなみに、一応証拠は見せて欲しいのだけれど」

 

「証拠?」

 

「どこかに置いてあるんでしょう?その——タイムマシン。それと、鈴羽さんに一度話を聞きたいわ」

 

「それは、どうだろうな」

 

ダルが後で説明するとは言ってくれたが、鈴羽に無断でタイムマシンのことを話したのだ。きっと怒るだろう。

 

ラジ館屋上での一件があった翌日。俺は鈴羽から手紙をもらった。俺が過去へ行かないせいで、アイツをあそこまで追い詰めてしまったのに、鈴羽は俺に謝ってくれた。

 

そんなところに、真帆に無断で話した件を持っていきたくはない、というのが本音だ。情けないことこの上ないが。

 

「ダル。それについてもお前に頼む——」

 

 

と言いかけたところで、デスクの上にあるインターフォンから音が鳴った。

 

イヤな予感がする。

 

ダルは受話器を取って会話をしながら、監視カメラのモニターを操作する。画面がパチパチと切り替わり、奇妙な男たちの姿が映った。店内店外を合わせて5か所。それぞれ4人ずつくらいの男たちが不自然な様子で立っている。立ち話をするでもなく、無言のままだ。

 

「オーキードーキー。ここは放棄するわ。君もテキトーに逃げるといいお。ほんじゃ」

 

ダルは店番をしていた人と話していたらしい。インターフォンを置くと俺と真帆を見た。

 

「つーわけで逃げるべ」

 

俺と真帆の反応を待たず、ダルはリュックを引っ張り出してきて、ハードディスクやらを詰め込みだした。

 

「そのノートPCもプリーズ」

 

呆けている真帆からノートPCを受け取ると、それもリュックに詰め込んだ。

 

「あいつらは誰だ?」

 

狙いは紅莉栖の遺産か?だが、ダルは首を横に振る。

 

「さぁ?どうかな。ボクも色々やらかしてるからさ。こういうこと、今までにもあったし。ま、だからこその裏バイトなわけで」

 

おいおい、とツッコミながら、ダルの指示に従った。

 

 

 

 

 

ダルはこういうことには慣れているようで、脱出の手際は非常によかった。

 

店の方には戻らず、裏手にあるガラスの引き戸を開けてベランダに出た。そこから隣室との境に設置してあるボートを取り外し、ビルの端の部屋まで移動。そこから非常用のハシゴで2階上へ。カムフラージュ用に借りている部屋に入ってバスルームの窓から隣のビルの空き部屋へと窓越しに飛び移った。

 

まるでスパイ映画さながらの脱出劇だった。

 

こいつは何者なんだ、と俺は心の内でツッコんでいた。真帆は終始驚きっぱなしだった。

 

 

 

隣のビルに移った時点で、コスプレショップにあの男たちが突入してきたという連絡が来て背筋が寒くなった。

 

急いでそのビルの非常口から脱出を図る。

 

だが、甘かった。

 

 

 

ビルの外、狭い路地裏に出たところに、そいつらは待ち構えていた。意表を突かれた俺たちが逃げるより前に、真帆がそのうちの一人に捕まった。そうなると俺たちは抵抗もできず、俺もダルも組み伏せられてしまった。

 

ただ、襲ってきたのはビルを包囲していた連中とは別だった。全員がフルフェイスのヘルメットをかぶり、ライダースーツや革ジャケットを着ている。真帆を取り押さえているヤツは明らかに女だ。そのいでたちはあいつを思い出させた。

 

「……大声を出さないで、言うことを聞いて」

 

こんな格好で襲ってくる女なんて、こいつしかいない。

 

「桐生…萌郁…!」

 

ここでSERNが出てくるとは考えもしなかった。紅莉栖の遺産を狙うのは、論文を独占したいロシアか、『Amadeus』を狙うアメリカの勢力だと思っていたからだ。

 

「さもないと…彼女の命はない」

 

萌郁は左腕で真帆を押さえつけながら、右手で軍用ナイフを取り出し、それを真帆の首筋にあてがった。

 

「……っ!」

 

「よ、よせっ!」

 

俺の脳裏に、身の毛もよだつ忌まわしい記憶がよみがえる。別の世界線とはいえ、大切な幼馴染を奪った無慈悲なあの声が、今、またここにある。

 

 

 

『椎名まゆりは、必要ない』

 

 

 

俺はギシギシと軋むほどに歯を噛みしめ、ライダースーツに身を包んだ女——桐生萌郁を睨みつけた。

 

「欲しいものなら渡してやる。だから、やめろ…っ!」

 

絞り出すように言うと、萌郁は真帆の首筋からナイフを離した。そのまま真帆の拘束を他の男に任せる。そしてヘルメットを脱いだ。

 

「あなたは…!」

 

真帆が萌郁の顔を見て反応した。ATFのとき、真帆を取材していた。あれも今思えば、こうして紅莉栖の遺産を手に入れるためだったのだ。

 

「どこに、あるの?」

 

感情というものが全く存在しないような目。

 

「まず…手を離せ!これじゃ、ちゃんと、話もできない……」

 

捻りあげられた手の痛みをこらえながら、唸るようにそう言った。

 

「…………」

 

萌郁がかすかにうなずくようにして、仲間たちに合図を送ると、拘束が緩くなった。

 

ダルも同じように拘束を解かれていた。だが、真帆は拘束されたままだ。

 

「比屋定博士と……交換」

 

こいつら、どこまでも……っ!

 

「ダル、リュックを貸せ」

 

「あ、うん」

 

ダルが背負っていたリュックを降ろそうとした。

 

「だ、ダメよ!渡しちゃダメ!」

 

「比屋定さん!おとなしくいててくれ!そいつは本当に君を殺す。脅しじゃないんだ!」

 

「でもっ…!」

 

「自分の論文のために君が死んで、それで紅莉栖が喜ぶのか?」

 

「う……」

 

真帆の顔がまるで子供の泣き顔のように歪んだ。

 

俺は萌郁を睨んだまま、ダルのリュックからPCとハードディスクを取り出した。

 

「これだ…」

 

「リュックごと渡して」

 

「……先に比屋定さんを解放しろ」

 

「…………」

 

萌郁は応じようとしない。でも、そうでもしないと彼女は確実に殺される。

 

イチかバチか、ハッタリを仕掛けるしかない。

 

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