STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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2011年1月24日(月)

 

 

俺は真帆を残し、フェイリス邸を後にした。ラボに近づくことはしなかったが、ダルたちと話をするために大学方面で落ち合ったのだ。

 

鈴羽は真帆に勝手に事情を話したことを怒ることもせず、純粋に俺たちの心配をしてくれた。

 

俺は手紙をもらったのに、ろくな返事もせずうやむやにしてしまったことを謝った。

 

鈴羽は笑ってくれた。

 

「本当に頼んでいいのか?」

 

真帆は数日後にはアメリカへと帰ってしまう。ホテルも荒らされたということで、今さら戻れない。

 

真帆は自分で行くと言っていたが、さすがに行かせるわけにもいかず、こちらで片付けることにした、のだが。

 

「比屋定さんは女性なんだ。父さんやおじさんが部屋に入って荷物を取って来るなんて、さすがに許可できないよ」

 

なぜか頑なに鈴羽は自分がホテルに行ってくると言い出したのだ。

 

鈴羽と真帆が親しげに話しているのを見たことはなかっただけに、鈴羽が名乗り出たのは意外だった。

 

「比屋定さんはルミねえさんのところにいて、動けないんだから仕方ないじゃないか」

 

嫌っているわけではないが、ある程度距離を置いて接しているように思っていたのだが、勘違いだったのだろうか。

 

俺たちが全てを打ち明けたということもあってか、分かりやすく鈴羽の真帆への態度が軟化しているように思えた。

 

「オカリンおじさんは、まゆねえさんたちに付いていてあげた方がいい。おじさんたちの顔は割れているはずだし、その関係者もマークされていると考えるべきだよ」

 

「鈴羽がそう言うなら…」

 

真帆とフェイリスには、鈴羽が代わりに行ってくれることを連絡しておいた。

 

俺はまゆりに会いに行くことにした。ラボには近づかないように言っておかなければならない。

 

晩にはフェイリスの家へとまた戻ると伝えて、俺は池袋へと向かった。

 

 

 

 

 

「ありがとう。わざわざホテルまで行ってくれて…」

 

鈴羽とダルがフェイリス邸に行くと、真帆の寝室に迎えられた。

 

「ここがフェイリスたんの家っ!……って何度か来たことあるけど」

 

至はなぜか興奮している。鈴羽は呆れた顔で見ているが、真帆はなぜ至がハイテンションになっているのか、理解が出来ていない様子だった。

 

「鈴羽さん。こうしてしっかりと話すのは初めてよね…。比屋定真帆です。よろしく」

 

「橋田鈴羽です。こちらこそよろしく。比屋定さん」

 

「荷物は全部引き上げてきたお。あ、安心して。ボクは何も触ってないから!ハスハスとかクンカクンカしたりしておりませんので!むふん」

 

こういうことを言わなければいいのに、とツッコむことさえ諦めた鈴羽を尻目に、真帆はドン引きしていた。

 

こんな人が本当に鈴羽の父親なのだろうか。

 

それに真帆は鈴羽の母親——至のお嫁さんになる人が、パーティのときに見た、阿万音由季であることも聞いている。

 

あんなに可愛い人が、この人と結婚するのかと思うと、頭が痛くなった。

 

「身体はどうなの?少しは落ち着いた?」

 

鈴羽が心配そうにそう尋ねる。

 

「え、ええ…。昨日よりはずいぶんとよくなったわ。岡部さんにも思ったことだけれど、橋田さんもすごいわね。同じ目に遭ったっていうのに、ピンピンしているもの」

 

「あー。うん。あーいうバイトしてると、こんなのも慣れっこなんで」

 

さすがに銃を突き付けられたことや目の前で人が死ぬのを見たことはないが、そういう世界に片足を突っ込んでいるだけあって、トラウマのようにはなっていなかった。

 

「さてと、じゃあいきなりだけど、本題に入るお。…鈴羽もそれでいいんだよね?」

 

至がチラリと鈴羽を見る。鈴羽は決意したように力強く頷いた。

 

岡部は鈴羽の、真帆に対する態度が軟化したと考えていたが、それには理由があった。

 

「これから真帆たんも、タイムマシン研究に力を貸してくれるってことでおk?」

 

岡部には決して聞かせられない、秘密の会合を行うためだ。

 

「ええ。私の方こそお願いするわ。紅莉栖を救うために、私も仲間にいれてちょうだい」

 

事情を話してしまったのならば仕方がない。本意ではなかったが、協力を申し出てくれたのだから、鈴羽は監視の意味も込めて、真帆と接触する事にしたのだ。態度が軟化したのはこのためだった。

 

「願ってもないことだお。あの牧瀬氏と同じ脳科学の研究者なんて、ありがたすぐるお」

 

岡部から聞いたα世界線では、紅莉栖の協力によってタイムリープマシンを作っていた。簡単な仕組みも聞いている。記憶をデータ化し、それを過去に送る。人の記憶に関することなら、専門家である真帆に任せるべきだ。

 

「私の研究が役に立つなら喜ばしいわ。橋田さんは凄腕のハッカーで、ハード面にも強いんでしょう?頼りにしているわ」

 

至は昨日、裏バイトの事務所で話した内容に加えて、現時点で分かっていることについて真帆に説明した。

 

因果律やアトラクタフィールド理論など。至は開発研究もしてきたが、どちらかと言えば世界線や因果律といった世界の構造そのものの研究を優先していた。

 

電話レンジ(仮)を過去に作ったが、それは偶然によるところが大きい。

 

それも岡部がIBN5100とともに処分してしまったため、研究材料となる素材がないのだ。タイムマシンを調べさせてもらえれば、とっかかりを掴めるのだが、それは鈴羽が鬼のような形相で睨みを利かせているため不可能。

 

鈴羽がこの時代に来てから半年。マシン開発はほぼ全く進んでいないと言っていい。

 

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