STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
「ゴホン、失礼。待たせたわ」
「もしかして、俺が来た時から隠れてたのか?」
「私のことはどうでもいいでしょう⁉」
「レスキネン教授に送った沖縄の写真は、わざわざねつ造したのか?」
俺も教授も、あの写真を本物だと信じて疑わなかった。が、まんまと騙されていた事になる。あの完成度は、ダルの仕業に違いない。
「君の来日の目的は……沖縄じゃなかったというわけだ」
「ええ、そうよ。あなたが電話レンジ(仮)なんていうセンスのない名前をつけた、そのマシンのために来たの」
「…君にも説明したはずだ。Dメールによって、いったい何が引き起こされたのかを」
その危険性について、俺はくどいほどに忠告した。紅莉栖を助けようなんて思うな、と。まゆりを守るために。
「それをまた繰り返すつもりか?」
「違うわ」
「…何が違う?」
何も違わない。
「Dメールを送れば、それはエシュロンに捕捉され、世界線は今のβから再びαに戻ってしまうんだ。そうしたら、まゆりはまた……死ぬ。何度やっても、助けられない。永遠に、死に続ける———」
そこで、俺はふと、恐ろしい想像をしてしまった。
真帆の顔をまじまじと見つめる。
まさか、いくらなんでもこの人に限って……という思いがこみ上げてくる。
俺は真帆を心の底から信頼していたし、そんな真似をする人間だとも思いたくなかった。
けれど、再び目の前に突き付けられた“忌むべき機械”を前にして、俺は冷静ではいられなくなっていた。
今にもフラッシュバックに襲われそうで。頭の中に、紅莉栖とまゆりの死の瞬間がちらついて。
そのせいで、つい、言ってはならない言葉を口にしてしまった。
「君は……まさか、世界線をαに戻したいのか?」
「え……?」
「紅莉栖が生きていて、まゆりが死んでいる世界を、望むの——」
「この野郎ッ‼」
最後まで、口にする前に、顔面に大きな衝撃が来た。
「っ⁉」
気が付いたら、俺は仰向けにひっくり返っていた。
しばらく、何が起きたか分からなかった。
顔の左半分が、火を噴くように熱い。
殴られた?
ダルに?
それはこいつとのおよそ5年にわたる付き合いの中で、はじめての事だった。
「謝れ!今すぐ、真帆たんに謝れっ!」
「ちょっ、ちょっっとっ!やめなさい、橋田さんっ!」
「オカリンがどれだけ苦しんでいるかなんて、ボクには想像しか出来ないけどさ!だから、安っぽい同情なんてしないし、するつもりもねえよ!」
真帆が必死にダルを押さえようとしている。
「でもなっ、お前っ、結局ただそれに甘えてるだけじゃねえかっ!真帆たんだって、鈴羽だって……まゆ氏だって!みんなが、お前のためにどれだけ……!」
「もういいから!よしなさい!」
「離せ!こいつ、もっとぶん殴ってやらないと分かんないんだよ!」
「もうじゅうぶんよっ!今のでじゅうぶん!だから落ち着いて!」
そして今度は、真帆がダルの肩口をポカっと叩いた。
「あとの説明は私がしておくわ!顔でも洗ってきなさい!ほらっ」
真帆がシャワールームを指さすと、ダルはようやく我に返ったようだった。
「………分かった」
少しバツが悪そうな顔になって、ダルは振り上げたこぶしを降ろした。