STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
「1年前……あたし、オカリンおじさんの態度に本気でムカついてたんだ。チャンスが目の前にあるのに、なんで諦めるんだって。そんなオカリンおじさんのを庇って甘やかしてるまゆねえさんの事も、本当は許せなかったんだよね。でもさ、この1年、ここで暮らしてみて感じたんだ。あの時、間違ってたのはあたしの方だったって。今のあたしなら、あの日のオカリンおじさんと、もっとちゃんと話せるかもしれない」
「あの日……」
「……それで上手く説得出来るかどうか……そこまでは自信ないんだけどね」
太陽が西へ更に傾いていき、タイムマシンと、その傍に立つ鈴羽の影がだんだん長くなっていく。
「あたしに残されたチャンスは、あと一度だけ。それなら、未来のまゆねえさんの言葉に賭けてみようと思う。牧瀬紅莉栖が殺された日じゃなく……まゆねえさんの言った、あの日へ跳んで……。まゆねえさんの望みを、叶えられるかどうか、試してみる」
「まゆしぃの、望み……」
鈴羽は自分よりずっと華奢なまゆりの肩を優しく撫でた。
「それが、シュタインズゲートへ向かう鍵だって、信じてみる。シュタインズゲートを開く事が出来るのは、彦星をやめちゃった普通の星じゃなくて——まゆねえさんの彦星しか、いないような気がするからさ。つまりあたしが新たに考案したミッションは——」
大きく息を吸い込む。
「彦星の復活」
「っ——」
「父さん流に言うなら——『オペレーション・彦星(アルタイル)』とか『オペレーション・織姫(アークライト)』とか。それとも、彦星と織姫を結ぶっていう意味で『オペレーション・鵲(デネブ)』かな。……父さんほどのセンスはあたしにはないみたいだ」
鈴羽の話をずっと聞いていたまゆりが、不意に弱々しく立ち上がった。
「ねえ、スズさん。そのオペレーション。まゆしぃにやらせて」
鈴羽は耳を疑って目の前の少女をまじまじと見た。
「これは危険な賭けだ。あたしの考えが間違ってて、失敗するだけかもしれない。タイムマシンにも限界が来てて、いつ制御不能になるか分からない。そのまま消滅してしまうかもしれない」
「それでも……お願い。まゆしぃだってラボメンなんだよ?オカリンとダルくんに助けてもらってばっかりなのは、もう、イヤだよ……」
まゆりは自分の腕でぐしぐしと目を強くこするようにして、涙を拭った。弱々しかった彼女の身体に、ゆっくりとゆっくりと……生気が戻り始めている。
「まゆしぃね……オカリンのことが、好き。たぶん、紅莉栖さんと同じくらい……ううん、違う。絶対に、紅莉栖さんに負けないくらい、ずっとずっと大好きっ」
「ぐすっ……けど………だけどっ。“私”は、“鳳凰院凶真”が、もっともっと、大好きなの……っ!」
「私がおばあちゃんを亡くして、この世界から消えてなくなっちゃいそうになってた時……そんな私に向かって、“この世界にずっといろ”って言って、救ってくれたの。それが彼なのっ!私の彦星さまなのっ!」
「私……私ね……、もう一度、彼に会いたい…。あの偉そうな高笑いを、また聞きたい……たとえ私が、“織姫さま”になれないって分かってても……。それでも、私にとっての“彦星さま”は……これまでも、これからも、ずっとずっと、彼以外にはいないんだもん……」
「鳳凰院凶真に、会いたいよぅっ……!」
織姫になれない少女が、それでも思いの丈をすべて紡いで、喉が枯れんばかりに叫んだ。
その、瞬間だった。
鈴羽の携帯電話が、これまでに聞いた事の無い、はじめての音を響かせた。
「っ⁉……こ、これは……っ⁉」
それはムービーメールが着信した音。そこに書かれた発信者名と件名を見て、鈴羽は思わず息を呑んでいた。
差出人はバレル・タイター。件名には、オペレーション・アークライト。そして添付されたムービーファイル。
「これ……未来からのムービーメール……」