STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
「…………」
「“紅莉栖”に、何かがあった……」
この文章。間違いなく俺に宛てられたものだ。
「時を司る秘密……」
「タイムマシンじゃね?」
「……!タイムマシンの情報が、誰かに漏れたのか⁉」
「つーか、なんで『Amadeus』がタイムマシンの情報知ってんの?オカリン喋ったん?」
「いえ、私だわ。日本に来る前に、『Amadeus』のデータを更新したのよ。おそらくそれで……」
いや、今はそんな事を考えている暇はない。
「比屋定さん。『Amadeus』にアクセス出来るか?」
「……規則違反になるけど、そんな事言っている場合じゃなさそうね。橋田さん。そのPC借りていい?」
ダルに代わってもらって、真帆をラボのPCから脳科学研究所のコンピューターに接続した。
Salieri、という自分のIDとパスワードを打ち込む。エンターキーを押すが、アクセスできない。
何度か試すが、一向に繋がらない。研究所内の全サーバーにアクセスをしてみたが、結果は同じだった。
「そんな……!こんな馬鹿な事って……」
「ダル、ハッキングしろ!脳科学研究所だけじゃなく、ヴィクトルコンドリア大学にあるデータ全てをこじ開けてくれ。サーバーから個人のPCまで全部だ!」
「オーキードーキー!」
「比屋定さんも協力してくれ。頼む!」
しかし、“紅莉栖”どころか“真帆”の方も大学のどのPCからもサーバーからもいなくなっていた。影も形もない。存在そのものが消えてしまった。
「どこか別の場所に移されたとか?」
「そんなの……管理者権限を持っているのはレスキネン教授だけよ」
「レスキネン教授……」
さっき見た、『栗悟飯とカメハメ波』の書き込みが脳裏をよぎる。
あいつの書いた、父なる神とはいったい誰の事を指すのか。『Amadeus』から見て、父と言える存在。
「まさか……レスキネン教授が?」
「滅多なことを言わないで!」
真帆はレスキネン教授に連絡を取る方法を探しはじめた。
俺はやはり、@ちゃんの書き込みの事が気になっていた。
“紅莉栖”は、サリエリの隣人が、鳳凰院凶真であることを分かっている。不死鳥なんて、鳳凰院凶真しかいない。俺が真帆と繋がっていることも。
そして——。
(そもそも、どうして“紅莉栖”がタイムマシンのことを知っているんだ?)
確かに、記憶データの中に、タイムマシン理論は入っているだろう。それが狙われていることも、分かったのだとする。だが、それが俺と繋がっていることは分かるはずがない。
(秘密の日記がこじ開けられた……それって…)
一つだけ思い当たった可能性。
それは——。
(『Amadeus』の“紅莉栖”が、リーディングシュタイナーを……!)
紅莉栖が生きている状態で、最後にアクティブになったのはα世界線のこと。その時の記憶が蘇ったのかもしれない。
「とにかく、俺はラジ館に行ってくる!“紅莉栖”の警告通りなら、狙われるのはあそこだ!」
「ボクも行く——」
「お前と比屋定さんはここで情報収集だ!まゆりが戻って来るかもしれないから!それと、『Amadeus』を見つけられたら、バックアップのデータごと削除してくれ!あの中には、とんでもない情報が眠っている!」
「分かったお!」
それだけの指示を出すと、俺はラボを飛び出してラジ館に向かった。
“紅莉栖”の書き込みがあったのが17時11分頃。今はもう18時をとっくに過ぎている。間に合うかどうかは怪しいところだ。
それと、ラボに戻って来た時に感じた眩暈。
(あれは本当に立ち眩みだったのか?もしかして、リーディングシュタイナーの感覚……)
応えの出ない疑問を振り切って、俺はラジ館へと急いだ。