STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
そこでギクリとした。
いつのまにか、男たちの中心に、暗色のライダースーツにヘルメットという出で立ちの女がたたずんでいた。
(あ、あいつ……かがりっ!)
この場所をリークしたのは、やはりかがりなのだろうか。
それならば、この連中はかがりの仲間、ということになる。相当な手練れに加え、かがりの戦闘能力が加われば、絶対に勝ち目はない。
(あたしが生き残るのは……諦めざるを得ないな……)
何人道連れにすれば、まゆりに逃げるだけのチャンスを与えらえるのか。まゆりを岡部の元に帰す事だけに考えを絞る。
そんな計算を始めたとき——。
かがりがこちらをじっと見ていることに気付いた。
いや、違う。見ているのはまゆりだ。
まゆりの額から滴り落ちている血だ。
「……ママに、なにをした?」
かがりが予想外の行動に出た。
「お前たちィッ、ママになにをしたアアアァァァァっ!」
絶叫。いや、それはもはや獣の咆哮だった。
それからは殺戮、あるいは虐殺が始まった。
かがりはサブリーダーを捕まえ、原型がなくなるまで銃で撃ち続けた。
次々と標的を捉え躊躇なく殺していく。
かがりもいくらか銃弾を受けているが、そんなものを気にする様子もなく、動き続けている。
「っ………!」
「見るなっ!耳もふさいでろっ!」
その光景に震えているまゆりを、鈴羽は自分の胸にかき抱いた。まゆりはあまりの恐怖に、鈴羽の言葉通り、自分の耳を塞ぐ。
(あんなの……もう人間じゃないっ……!)
鈴羽でさえ、見たことのないような一方的な虐殺。
人間らしい恐怖や痛みを全く感じていないかのような動きで、ただただ相手を葬り去ろうとしている。
人間の肉体にかかっているリミッターなど、これっぽっちも機能していない。
それからも蹂躙を続けるかがり。だが、男たちに囲まれ、逃げ場を失ったかがりが銃弾の雨を受ける。
それを躱しつつ反撃を加えるが、ついに左腕に銃弾が命中した。
手に握っていた軍用ナイフごと、かがりの左腕が吹き飛んだ。
「ぐっ……!」
その衝撃でかがりの身体がグラリとよろめく。
「今だぁ!撃てェェ!」
誰かが喚いた。それに合わせて連射された弾丸が、かがりの身体に何発もめり込んだ。ライダースーツのあちこちが大きく避け、ヘルメットにもヒビが入る。
そこから、これまでかがりが殺した者の血ではなく、あきらかに自身のものとおぼしき鮮血が激しく噴出した。
ついに、殺戮者は死体の山の中に倒れこむ。
「よし!」
ようやく仕留めたと思ったのだろう。生き残った迷彩服の男の1人が、最後のとどめとばかりにかがりに銃口を突き付けつつ、引き金を引こうとした——。
「ぐがああぁぁぁぁァァァ!」
「うわぁぁぁああぁ!」
かがりの咆哮と、男の恐怖の絶叫とが重なって、不協和音を立てた。
かがりは倒れこんだ姿勢から強引に跳ね上がると、右腕に持つナイフの背で、銃事男の腕を激しく叩き折り、払い飛ばした。間髪を入れず、男の喉笛をナイフで切り裂いて絶命させる。
「て、て、撤退だっ!撤退ッ!」
残った数名の男たちは恐怖にかられ、ついに逃亡を始めた。