STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
「橋田さん。掃除機はどこ?」
鈴羽はその気配にハッと我に返った。鈴羽が隠れている開発室の方に由季が近づいてくる。
「えっと、そのカーテンの——って危なっ!」
「この奥?」
「あー、僕が持ってくるお!」
由季を制して至がそそくさと開発室に入って来た。床に置いてある掃除機を取る前に、デスク下に潜んでいる鈴羽と視線を交差させる。
「バレないようにしてよ、父さん」
「オーキードーキー」
「ありましたか、橋田さん?」
「あ、う、うん!」
どうやら由季は気を利かせたのかなんなのか、部屋を掃除するつもりらしい。確かに、今朝の時点で部屋は結構散らかっていた。由季の性格ならそう言いだすのは鈴羽にも容易に想像できた。
至は床に置いてある掃除機らしきものを持ち出すと、開発室を出て行った。
「な、なんですか…それ」
「未来ガジェット5号機!『またつまらぬ物を繋げてしまったby五右衛門』だお。分解すれば普通の掃除機として使えるはず」
「お、お掃除をするための掃除機なのに、分解したらかえって散らかすことになりませんか……?」
「あ、あう…」
「ふふふ。橋田さんって頭がいいのに、時々うっかりなコトしますよね」
「そ、そうかな…」
「でも、そういう人の方が私、好きだなぁ」
「なん……だと?」
また動揺し出した至に、鈴羽はため息を吐いた。
鈴羽としては、もともと至の事が大好きだから(本人には決して言わないが)、そのフィルターを通して見てしまっているが、由季は純粋に至を見ているはずだ。
その上で、由季は至に好意を抱いているように見える。至のこういうところさえなんとかすれば、案外ふたりは簡単にうまくいくのかもしれない。
至がこの時代ではモテるタイプではない、というのは最近理解してきた。まず痩せなければならない。だが、由季は至の体型を受け入れているように思える。オシャレのために痩せるようは言っていたが、意外とああいう体型が好きなのかもしれない。
「ただ、生活は見直した方がいいです。お部屋の掃除は、できれば毎日した方がいいですよ。ここ、特に埃っぽいですし。それだけじゃありません。所くじの事もそうです。今日もカップ麺だったんでしょう?」
「な、なんで知ってるん?」
「お台所に食べ残したまま放置されてます」
「な、なるほど…」
「それに、お菓子もこんなにたくさん。食べ過ぎだっていつも言ってるのに…」
「一応、気を付けてはいるのだぜ?うん」
「一応じゃダメです。あんまりカップ麺やお菓子ばかり食べていると、病気になっちゃいますよ?あと少しは運動する事」
鈴羽と同じことを言われて、至はしょんぼりしている。
「あ、阿万音氏は…太っている男子はお嫌いですか……?」
「え、私ですか?私は体が大きい人って、結構好きですよ。くまさんみたいで可愛いじゃないですか」
「くまさん……はぅ……」
案に自分のことを聞いて、悪くない返事が返って来たから顔を綻ばせている。
「だからって、健康に気を付けないのはダメですよ。今度どこか一緒にお出かけしましょうか?」
と、そこで新たな訪問者の気配を感じた。
「トゥットゥルー♪由季さん、ダルくんとお出かけするの~?」
ドアが開くなり、聞きなれた謎の挨拶が響く。
「ごめんね~由季さん。ちょっと遅れちゃった~」
由季と待ち合わせをしていたまゆりだ。だが、それとは別にもう一人分の気配があった。
「まゆりちゃん、こんにちは。あ、岡部さんも一緒だったんですね」
「お、オカリン。久しぶりじゃん!」
「あ、ああ。久しぶり」
その声を聞いて、鈴羽は軽く歯噛みした。