STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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「オカリンおじさん!」

 

見ると、鈴羽がまゆりを押し込むようにしてタイムマシンへ乗せているところだった。

 

「こうなったら、あたしたちはこのまま過去へジャンプする!」

 

「え……!?」

 

「かがりのこと、頼んだよ!」

 

かがりがとうに絶命している事を知らない鈴羽は、そう言うと自分もコクピットに飛び込んでいく。慌てた俺はタイムマシンのハッチにすがりつき、中を覗き込んだ。

 

「過去って、まさか1年前へ……あの日へ行くのか!?こんな急に!?」

 

「急ってわけじゃないんだ。それに、あの日へは跳ばない」

 

「何……?あの日へは跳ばないってどういう…?」

 

「ちょっと、まゆねえさんを借りるよ」

 

まゆりはすでにシートに収まっていた。1年前、俺が鈴羽とともに跳んだ時のように。

 

「まゆり…お前……?」

 

「オカリン…」

 

遠くで、激しい銃撃戦の音が響いた。悲鳴も聞こえる。どこかの工作員同士の戦闘が始まったらしい。かがりが一掃した、迷彩服の連中とは別の軍隊が迫ってきているのだ。

 

「オカリン、これっ」

 

と、まゆりが手を伸ばし、スマホを手渡してきた。俺は思わず受け取ってしまう。

 

「電波、繋がらないから、これ預けるね!メール、読んで!まゆしぃの気持ちだから!」

 

「ちょっと待て!なんでお前が行くんだ!?お前が行ったって結果は同じだ、何もできない!それに、今跳んだら戻ってこられない!」

 

「違うの。オカリンじゃダメなの!これはね、まゆしぃの役目だから!」

 

「分からない、俺にはさっぱり分からないっ!頼む、降りてくれまゆり。お前まで因果の環から外れたら、俺はなんのためにこの世界線を選んだのか——」

 

「オカリン」

 

まゆりが俺の頬を優しく撫でて。悲しそうに微笑んだ。

 

「…………」

 

まゆりの手が、俺の肩を、軽く押してくる。

 

「………っ!」

 

俺はそれでバランスを崩し、ハッチから手を離してしまった。その間にハッチが閉まっていく。

 

「まゆり!待て——!」

 

手遅れだった。

 

もう一度すがりついた時には、ハッチは完全に閉まってしまった。

 

これは生体認証だ。鈴羽でないと絶対に開けられない。タイムマシンが唸り出す。青白い燐光がマシンの周囲を舞い始める。かつてα世界線でも見た光景。

 

「なんで…まゆり…」

 

 

 

 

 

その時、屋上の鉄扉を蹴破るようにして、武装した一団が殺到してきた。それは完全に訓練を受けた軍隊だった。

 

さらにそれとは別に、空から一機の武装ヘリが近づいてくる。

 

兵士たちがそのヘリに向けて銃撃を始める。戦闘ヘリはその攻撃をまったく意に介している様子はなく、空中でゆらゆらとホバリングしていた。

 

機体の左右に装備された物々しいロケットランチャーが、まっすぐ俺を——いや、タイムマシンを狙っているのに気づいた。

 

 

 

ま、まさか……⁉

 

 

「よせ……やめろ……」

 

しかし、俺の最悪の予感は的中してしまった。

 

ヘリがロケットランチャーを撃ち放った。タイムマシンへとまるで吸い込まれるかのように向かっていく。

 

いまだタイムマシンは光に包まれたままそこにあり——。

 

 

 

「やめろぉぉぉ!」

 

 

 

 

そう叫んだ瞬間には、激しい爆風を全身に受け、俺は吹き飛ばされていた。

 

気付けば、地面に這いつくばっていた。周囲を見回すと、兵士たちの何人かが、すでにそこにあった死体の山に混じって倒れている。なおもヘリに銃撃を加えている兵士もいる。

 

「う……ぐぅ………」

 

俺は必至で立ち上がった。全身が焼けるように痛む。あちこちの皮膚がただれていた。服もボロボロだ。

 

いや、俺の事はどうでもいい。タイムマシンは⁉

 

とっさに顔を上げ、タイムマシンがあった場所を確認した。マシンの時間跳躍が間に合ったのなら、あのロケットランチャーの直撃も避けられたはず。

 

だが——。

 

 

 

「………っ!」

 

そこには、大量の残骸が転がっていた。明らかに、タイムマシンのものだと分かった。

 

……間に合わなかったのか?

 

「鈴羽……?まゆり……?」

 

土煙の中、周囲を見回す。

 

「なあ、まゆり……どこだ?まゆり!鈴羽!返事をしてくれ……!」

 

残骸は大量に転がっているのに。なのに、そこには、まゆりも鈴羽も見当たらなかった。

 

生きているのか死んでいるのかさえ、確かめることが出来ない。死体すら、なかった。存在が消えていた。

 

 

 

 

 

事態は、俺の思いなんて関係なく、大きくなっていった。

 

秋葉原の空と地上で、激しい戦闘が繰り広げられている。

 

俺は戦闘のどさくさに紛れて、命からがらラジ館を脱出した。かがりの遺体は残して来るしかなかった。

 

誰にも見つからないように大きく迂回しながらラボに戻って来た時には、日はすっかり暮れ、暗闇の中で爆発の炎や曳光弾の軌跡などが夜空を照らしていた。秋葉原の街全体が、蜂の巣をつついたような大騒ぎだった。

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