STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
β世界線
世界線変動率1.130205
「リーディング…シュタイナーっ!」
時空の揺らぎは収まり、見知った景色が眼前に広がる。
「ここはラジ館の屋上か…?」
どうやら無事に世界線を移動できたらしい。変動前と変わらない場所。だが明確に違いがあった。
「…レスキネンがいない」
迷彩服の男たちも、空に浮かぶヘリもない。だが、アキバの街には喧騒が広がっているのが分かる。
「状況はそれほど変わっていないようだな」
世界線は変動した。間違いなくここは、鳳凰院凶真が死なないことが確定している世界線。
オペレーション・アークライトが成功した世界線だ。
そういえば俺の服装が変わっている。先ほどまでは着ていなかった白衣を身に纏っている。
「これを着ていることが、鳳凰院凶真の復活の証か…」
だが、悠長に構えているべきではない。
鳳凰院凶真が復活したところで、第三次世界大戦の火種が消えたわけではない。7月7日が運命の日であるのは変わらないはず。今はまだ姿を確認できないが、レスキネンももうすぐ近くまで来ているに違いない。
この世界線の俺はこれまでどう動いていたのだろうか。
あの日、鳳凰院凶真が死ななかったのなら、俺は運命を変えるべく立ち向かったはずだ。この場はそれほど違わないが、見えていないところは大きく変わっているのかもしれない。
「あーあ。まゆりママ、行っちゃったなぁ…」
と、見知らぬ小さな女の子がいた。
「ぬ?お前は誰だ?」
綯の友達か?
「誰って、私のこと忘れちゃったの?オカリンおじさん」
「っ!」
俺の事をそう呼ぶのは、鈴羽と綯くらいのものだ。それ以外となると……。
「お前、まさか……かがりか?」
なぜだかは分からないが、そんな気がした。先ほどまでいた世界線では、かがりは阿万音由季になりすましていたため、俺はかがりの本当の素顔を知らないが。
「うん?そうだよ?なんでそんなこといまさら聞くの?」
「あ、いや……」
というか、どうして俺はここにいるのだろう?かがりが急激に縮んだことも含めて、ダルに訊かねばならない。
とにかくここから脱出だ。ラボへ向かおう。
「おい、かがり、ラボに向かうぞ」
やはり街では騒ぎが起こっていた。
ゲリラのアナウンスも流れていた。俺たちはなんとかラジ館を抜け出し、何度も迂回しながらラボへと戻った。
「鳳凰院凶真が帰還したぞ!」
厨二病全開でポーズを決めながらそう宣言する俺。うむ。鳳凰院凶真の復帰に我が魂も打ち震えている。
「あ、オカリン…」
「おかえりなさいオカリンさん。かがりちゃんも。よかった。二人は無事だったのね」
む?反応が薄くはないか?散々迷惑をかけておいてアレだが、鳳凰院凶真が復活したのだぞ?諸手を挙げて喜びを分かち合うべきではないか?
「待て待て待て待て!この鳳凰院凶真が帰還したのだ!お前たち。もっとほら、あるだろう?」
「うん?いつもと変わらないけれど……」
そうか。こいつらは俺が世界線を移動してきたことを知らないのだ。ならば説明するしかあるまい。
とりあえず、俺が経験してきた世界線について説明した。
「なるほどなー。このタイミングでオカリンがリーディングシュタイナーしてくるっていうのは予想してたんだけど。まさかそこまで世界線が変わってるとは思わなかったお」
俺が7月7日に世界線を移動して来ることが予想できていたとは驚きだ。
「オペレーション・アークライトっていうミッションの指令が未来から届いたんだ。2025年のボクとオカリンからのね」
「それについては俺も知っている。俺はまゆりと鈴羽をそのために過去に送りだしたんだ。そして、鳳凰院凶真の復活宣言をもって、この世界線へと移動してきた。この世界線でも、オペレーション・アークライトなるミッションは遂行されたのか?」
「鈴羽とまゆ氏が、あの日のオカリンを復活させるために過去に跳んだんだお」
「なるほどな……」
「ということは、あのムービーメールを送ったのは、その世界線のオカリンってこと?」
「おそらくそうなる。アークライトのムービーメールもそうだし、7月28日に受信していたムービーメールも、一つ前の世界線の俺が送ったはずだ」