STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

282 / 303
(30)

11月にATFで真帆と出会い、アマデウスのテスターになった。だが、AIに対して紅莉栖に向けていた感情を抱くようになった自分に恐怖し、12月15日にテスターを辞退した。

 

12月24日にはロシアがタイムマシン実験を行ったことで今なおソ連が存在している『ロシア世界線』を一ヶ月もの間さまようことになった。

 

一月末にはダルの秘密のアジトにいたところを萌郁(SERN)に襲撃され、紅莉栖のノートPCを破壊された。HDDはダルがタイムマシンの中に隠してあったが。

 

俺はこの時点で真帆に全てを打ち明けたらしい。ダルと真帆が俺に隠れて研究するのではなく、俺も協力することで研究は一気に進んだらしい。タイムリープマシンについては早い段階で俺とダルで作っていたようだ。

 

そして7月7日。この世界線においてもオペレーション・アークライトは遂行された。

 

鳳凰院凶真が復活することは確定している世界線なのに何故それが必要なのか、という問いは愚問だ。

 

鳳凰院凶真が復活することが確定している世界線であるということは、アークライトも成功することが確定している世界線なのだ。

 

つまり、鳳凰院凶真が復活するためにはアークライトが必要不可欠。その二つは切っても切り離せない事象なのだ。

 

思い出してみてほしい。α世界線において、ラボにIBN5100が戻ってくることが確定している世界線において、俺が最初のDメールをクラッキングして削除するかどうか悩んでいたとき。

 

もうIBNが手に入ることは確定しているのに、鈴羽は1975年へとタイムトラベルしていた。

 

かつて紅莉栖が言っていた、円環に閉じた因果というやつだ。

 

この世界線のまゆりもそれを分かっていたのだろう。一つ前の世界線のまゆりから、電話で俺を激励するように指示を受けたのだ。自分もそれをしなければならないと覚悟していたのだ。

 

一つ意外だったのが、この世界線の俺もまゆりと鈴羽を送り出すために一度タイムリープしていたらしい。

 

『Amadeus』からタイムマシンの事が漏れてしまったのだろう。『Amadeus』はダルに頼んで消去させたらしい。やはり2011年7月7日は運命の日なのだろう。

 

かがりを手中に収められなかったストラトフォーがどうやってタイムマシンの居場所を知ったのかは分からない。裏ではSERNによる工作もあったのかもしれない。

 

 

そういえば、鈴羽とかがりが1975年に立ち寄ったのは、2000年問題を解決するためにIBN5100を入手しようとしたからだったようだ。

 

2000年問題は、俺が1999年の年末、2000年の頭にリーディングシュタイナーを獲得する事に関連して、どの世界線でも必ず起こってしまう事象となっていた。

 

表沙汰にはなっていなかったが、水面下では大きな問題になっていたようだ。

 

α世界線ではSERNが解決していたが、β世界線では未解決のままだったらしい。

 

かがりが洗脳されていた状態では、1998年にかがりがIBN5100を銃で破壊してしまっていた。

 

だが、かがりが洗脳されないことで、IBN5100は無事に使用することが出来た。

 

よって、2000年問題は解決された。これで第三次世界大戦の火種がまたひとつ消えたことになる。

 

 

「なるほどな…だからかがりがこんなにも縮んでしまったわけか」

 

「22歳のアダルトかがりたん、見てみたかったお」

 

全ての説明を聞いた俺は、ソファで真帆と並んで座っているかがりに目を向けた。

 

「どうしたの?オカリンおじさん」

 

「かがり…」

 

世界線を移動して来る前。由季さん……椎名かがりの言葉が思い出される。

 

 

 

『大丈夫……きっと本物も、橋田さんの事、好きになります……。私と、同じように……』

 

 

 

かがりは由季さんになりすましていた。タイムトラベラーである鈴羽の誕生させず、シュタインズゲートへの到達を阻止するためだ。だが、その時に抱いた気持ちは嘘でもなんでもなかったのだ。

 

「なに?」

 

俺の腕の中で死んでいった彼女は、どんな気持ちでいたのだろうか。

 

「…ダルのことは好きか?」

 

聞くべきではなかっただろう。だが、俺は聞かずにはいられなかった。

 

「ダルおじさん?真帆おねえちゃんにあんまり近づいちゃダメって言われてるよ?」

 

そう言われた真帆の方に目をやると、少し決まりが悪そうに頭を掻いていた。

 

「…橋田さんてそこはかとなく危険な匂いがするんだもの。子供の教育にはよろしくないわ」

 

まぁ間違っていはいない。全方向に萌えを見出せるオタクだからな。娘である鈴羽にも欲情できる変態だ。

 

「おうふ…辛辣すぎる幼女の言葉責め……全僕が泣いた……」

 

かがりにはもう、あんな悲しい思いはさせない。させてはならない。

 

「それでオカリンさん。これからどうするのかしら?」

 

「そうだな…」

 

中鉢論文以外の全ての論文——紅莉栖のノートPCとハードディスク、『Amadeus』の三つを全て葬り去った。

 

そしてかがりが洗脳されることも防いだ。鳳凰院凶真も死なないことが確定した。

 

ここまでやってようやく、俺たちはシュタインズゲートの門前に立つことを許されたのだ。

 

「この世界線からならば、シュタインズゲートを観測することが可能になったはずだ。あとは、紅莉栖を救う方法を見つけ出さなければならない」

 

もう、戦争が始まるまで猶予はない。戦乱の中でも、タイムマシンの研究を続けられるように、場所と安全を確保する必要だってある。口で言う程簡単ではないはずだ。

 

「それと、まゆりと鈴羽を迎えに行かなければならないしな」

 

「そうね。そのためにはタイムマシンを完成させることが急務だわ」

 

「そうだダル。これをお前に渡しておく」

 

「うん?」

 

俺の白衣のポケットには、紅莉栖のHDDが入っていた。

 

この世界線に移動して来る前にも、俺はタイムトラベルする直前に鈴羽から渡された。

 

この世界線でも同様に渡されていたのだろう。ダルがタイムマシンの中に隠してあったのだ。

 

「おお!これのこと、すっかり忘れてたお!」

 

「パスワードは未だ解析できていないんだよな?」

 

「うん。タイムリープマシンとかを作るので手が回らなかったんだ。でも、鈴羽たちも無事に送り出せたから、これから解析を始めていくつもり」

 

この中には、紅莉栖が書き上げたタイムマシン論文が入っている。ロシアを除けば、これを手にしているのは俺たちだけ。俺たちは世界に一歩リードしている、ということになる。

 

「具体的なことはこれから決めるとしてさ、オカリン。今は祝杯をあげようぜ」

 

「……ああ。そうだな」

 

「おかえり、鳳凰院凶真」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。