STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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確かに受信した。7月28日。あの日。

 

紅莉栖と初めて会った直後。

 

まゆりに連絡を取ろうとしたそのときに、謎のムービーメールを受信した。

 

送信者は見たことのないアドレス。

 

「だが、なにも映っていなかった。ノイズしか入っていなかった……」

 

「今なら————。“牧瀬紅莉栖の命を救うのに一度失敗した”今なら————見ることができるはずだよ」

 

 

……ウソだろ?

 

そんなこと、有り得るのか?

 

半信半疑のままケータイを操作し、調べてみる。

 

1通だけ保存されている、ムービーメール。2025年と言えば、鈴羽の話によると俺が“殺される”年ということになる。

死の直前の俺が、2010年、今の俺に残した伝言……。

 

 

『シュタインズゲート』と呼ばれる未知の世界線へ到達するための“計画”。

 

 

その答えが、このムービーメールにある……?

 

 

「…………⁉」

 

人が、画面に映った。

 

「この人が、15年後のオカリンなん?」

 

「きっとそうだよ。あのね、なんとなくオカリンに似てる気がするもん」

 

本当に、こいつは俺なのか?

 

 

『メールは受け取ったか?テレビニュースを見るんだ。すでに見たならば、このまま聞いてくれ』

 

 

やはり、さっきのメールはこいつが?

 

 

『初めまして、だな。15年前の俺』

 

 

「…………っ」

 

「わあー。15年後のオカリン、声が渋くなってるよ~」

 

 

『俺は2025年から、こうしてムービーメールを送っている。原理についてはDメールと同じだ。お前はこのβ世界線到達とともに電話レンジ(仮)を破棄した。そうだな?しかし俺は…お前は、1年もしないうちに再びタイムトラベル理論と向き合うことになる。向き合って、もう14年。それが俺というわけだ。その過程で、36バイト以上の容量を送信可能なDメール送信装置も作ることに成功した』

 

 

 

 

 

 

『このムービーメールを聞いているということは、お前は紅莉栖を救うことに失敗したということだな。さぞ辛かっただろう。お前の気持ちはよく分かる。なぜなら俺は15年後のお前なんだからな。そうだ。俺も失敗した。失敗したまま、15年が過ぎたよ。なぜ、お前にあえて“失敗させたか”分かるか?必要なことだった。その失敗後の15年間、俺に“執念”を与えてもらうためにな。お前は紅莉栖を助けようとして、失敗した。お前自身が、紅莉栖を殺した。その悔しさ、その罪悪感が、2025年にこの計画を完成させた俺へと繋がったのだ。その“執念”があったからこそ、俺はこのムービーメールをお前へと届けることができたのだ。知っての通り、世界はアトラクタフィールドにより収束を起こす。普通にタイムトラベルするだけでは、紅莉栖を助けることはできない。だからあえて一度失敗することで、こうして因果を作った。下ごしらえのようなものだ。お前が失敗してくれたおかげで、この15年、俺はひたすら研究に明け暮れた』

 

 

 

 

 

 

『ドクター中鉢が世界にタイムトラベルの論争をもたらし、世界中が戦争への道にひた走る中で、俺は地下に潜って独自にタイムトラベルの研究を続けた。鈴羽が使っているタイムマシンは、俺とダルの研究のたまものだが、その基礎理論はSERNが構築し、お前が“なかったこと”にしてきた世界線において、牧瀬紅莉栖が発展させたものだ。型式は『C204型』。Cとは“Cristina”の頭文字だ。それが意味するところは理解してもらえると思う』

 

 

 

 

 

 

『とにかく因果は成立した。計画の最終段階について話そう。世界線変動率(ダイバージェンス)を変え、未知の世界線–『シュタインズゲート』へ到達する計画だ。ちなみに『シュタインズゲート』と命名したのは俺だ。なぜ『シュタインズゲート』なのかは、お前なら分かるはず。“特に意味はない”。そうだろう?その『シュタインズゲート』に到達するのに必要な条件は、二点ある。1つ。牧瀬紅莉栖の命を救うこと。1つ、ドクター中鉢がロシアに持ち込んだ『中鉢論文』をこの世から葬り去ること。だがその過去を変えようとしても無駄だった。お前は今、そう思ったはずだ。世界は“収束”してしまう。その力が過去改変を許してくれなかった。そうだな?だが方法が間違っているだけだ。お前は、紅莉栖を助けることができる。いいか。よく聞くんだ。あの日、7月28日。“最初のお前”は、なにも知らずにドクター中鉢の発表会に来ていたはずだ。その“最初のお前”自身が見たことを“なかったこと”にしてはならない。それは“確定した過去”であり、世界線が“収束した結果”だからだ。だが、“騙す”ことはできる。どういうことだ、と言いたいのだろう?そう焦るな。これから説明する。“騙す”相手は、お前自身だ。“最初のお前”は、血まみれで倒れている牧瀬紅莉栖を目撃している。それを見ていなければ、これまでのお前、さらにはこれまでの俺のあらゆる行動がタイムパラドックスとなることは分かるか?紅莉栖の死を目撃したお前がDメールを送ったことで、それはエシュロンに捕らえられて、SERNの知るところとなった。α世界線で経験したことを思い出せ。そこで起きたのは、まゆりの死だけではないはずだ。お前は生きている紅莉栖と再会した。彼女を無理やりラボメンに迎え、ともにタイムリープマシンを作った。わずか3週間だったが、お前は“牧瀬紅莉栖という1人の人間とともに過ごしたんだ”。今、そこにいるお前は。今、ここにいる俺は。7月28日に紅莉栖が死んだ、このβ世界線だけで生きてきた岡部倫太郎ではない。お前の記憶には、α世界線へ行き——紅莉栖とともに生き——まゆりを救うために多くの思いを犠牲にして——それでももがき続けた3週間の経験が、存在しているはずだ。血まみれで倒れている紅莉栖の姿を見なければ——お前はダルにDメールを送ることもなかったし、それがエシュロンに捉えられることもなかった。その後、紅莉栖に再会したときお前が妙なことを口走ることもなく——紅莉栖がお前に興味を抱くこともなかった。そして——今、そこに立つお前が、“タイムトラベルしてでも紅莉栖を助けたい”と思うこともなかったんだ。2025年の俺が『シュタインズゲート』に到達するための計画を立てることもなく、2025年の俺がこうしてお前にムービーメールを送ることもなく、ダルとともに2036年までにタイムマシンを完成させることもなく、鈴羽がタイムマシンでお前の元へ現れることもなかった。お前が経験したわずか3週間の“世界線漂流”を、否定してはいけない。“なかったこと”にしてはいけない。いくつもの世界線を旅してきたからこそ、“紅莉栖を助けたい”と強く願うお前が、そこにいる。紅莉栖を助けたいと願い、その後の人生すべてをタイムマシン開発に捧げた2025年の俺がいる。お前が立っているその場所は、俺たちが“紅莉栖を助けたい”と願ったからこそ到達できた瞬間なんだ……!“世界線をどれか1つでも移動しなかった俺”では、その瞬間へは到達できなかったんだ。すべて、意味があったことなんだよ』

 

 

 

 

 

 

『俺の計画の下準備は完了した。あとはお前次第だ。……最終ミッション『未来を司る女神』作戦(オぺレーション・スクルド)の概要を説明する。“確定した過去を変えずに、結果を変えろ”。“血まみれで倒れている牧瀬紅莉栖と、それを目撃した岡部倫太郎”。その過去は確定している。だが逆に言えば、確定しているのは“それだけ”だ。“最初のお前” を騙せ。世界を、騙せ。それが、『シュタインズゲート』に到達するための選択だ。健闘を祈るぞ、狂気のマッドサイエンティストよ。エル・プサイ・コングルゥ』

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