STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
その言葉を最後に、ムービーメールは終わった。
まゆりとダルが唖然としている。というより、よく理解できず戸惑っている。
俺……は。
「フ……フフフ……ククク…ク、クックック………」
『未来を司る女神』作戦(オペレーション・スクルド)だって?
“エル・プサイ・コングルゥ”だって?
「33歳にもなって、なにをバカなことを言ってるんだ、俺は……。最初の俺を騙せとか、世界を騙せとか。厨二病もいいところじゃないか……!」
だが——
そんな考え方は——
嫌いじゃない。
「いいだろう、やってやる……!それが、運命石の扉の選択だと言うのならばな!」
「俺は狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真!世界を騙すなど、造作もない!やはりこの俺が、世界を変えてやらねばならないようだな!」
「フゥーハハハ!」
「うわ、ここ何日かやけに真面目だったのに、またいつものオカリンに戻っちゃったじゃん」
「でもねでもね、まゆしぃはこっちのオカリンの方が好きだよ~」
「ま、そうだけどさ。オカリンが変人じゃなきゃ、ボクも調子出ねえし」
「鳳凰院凶真はね、昔、まゆしぃのことも助けてくれたんだよ。だから今度もね、きっと、牧瀬紅莉栖さんを助けられるよ~」
「でもさ、今のムービーメールって結局どういう意味なん?世界を騙せとか、意味不明だ罠」
「それはねぇ、えっとね、まゆしぃもさっぱりなのです……」
「ククク、お前たち、そんなことも分からないのか?確定した過去は、“血まみれで倒れている牧瀬紅莉栖とそれを目撃した俺”だけ。それ以上でもそれ以下でもない。紅莉栖“が血まみれで倒れていた”のを見ただけ。その紅莉栖が生きていたのか、死んでいたのかについて——俺は“観測”していない」
そういうことだろう?15年後の俺よ。
「???」
「つまりあの時の場面について、こういう可能性だって考えられるわけだ。“紅莉栖は、ぶちまけられた赤いペンキの上にうつぶせに倒れて寝ていた”」
「へえ、そうだったんだ~」
「ちょ、ちょい待ち。でもさ、牧瀬紅莉栖の事件のことはニュースなんかでもけっこう報じられているわけで——」
「今は関係ないよ。あの日、7月28日のオカリンおじさんが何を観測したかが問題なの」
「そ、そうなん?」
そうだ。なぜなら今ここに立っている俺は、7月28日以降から今日までをβ世界線だけで生きてきた俺ではなく、α世界線を旅して戻って来た俺なのだから。その間のβ世界線で起きた結果については、関係ないはずだ。
「だから俺がやれることは、あの日俺が見た光景だけを再現する事。紅莉栖を死なせないようにしてな」
「……それと、中鉢論文をこの世から葬り去らないといけない。できる?」
「誰にものを言っているのだバイト戦士よ」
「……バイト戦士?」
「あえてもう一度言おう。この俺は狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真である!すでに、オペレーション・スクルドは俺の中で見えている」