STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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まゆりとダル、2人の見送りを受けながら、俺と鈴羽はタイムマシンに乗り込んだ。

 

「このミッションには、未来の運命もかかっている。頼むよ。おじさん」

 

「未来のことなど知らん。俺はただ、あいつを………紅莉栖を救うだけだ」

 

「ふふ。そうだね。おじさんにとってはそれが全てだ」

 

不思議な事に、心はとても穏やかだった。焦りも緊張もない。最初に跳んだときのような不安もない。

 

これまでの失敗も、全てに意味があった。

 

(15年後の俺よ……お前はどんな気持ちで、そこに立っている?)

 

俺が見たムービーメール。それはきっと、お前は見れなかったのだろう。だから2度目の救出には出向かず、タイムマシンの研究に明け暮れたはずだ。

 

33歳にもなって厨二病だと笑ったが、それまでの過程を思えば、笑う事は出来なくなる。

 

ずっと拭いされない後悔と自責の念に押しつぶされそうになっていたのだろう。この時点の俺には、想像さえできないほど辛く、苦しい思いをしてきたはずだ。

 

これまでも、たくさんの想いを犠牲にしてきた。まゆりを救うためと自分に言い聞かせて、たくさんの人の想いを踏みにじってきた。

 

そんな想いに報いるためにも、この瞬間に立つことが出来た俺に、誇りと自信を持つ。

 

そして、必ず到達するのだ。

 

未知の世界線、『シュタインズゲート』へ。

 

 

 

 

 

 

「鈴羽。頼む」

 

「うん」

 

さあ始めよう。

 

最後の聖戦を。

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

2010年7月28日 11:50

 

ラジオ会館、屋上

 

 

俺はもう一度だけ、頭の中でシミュレーションをする。時間制限はかなり厳しいが、やるしかない。

 

いや、この俺ならば。鳳凰院凶真ならやれるに決まっている。

 

鈴羽が扉の鍵を壊すのを待ってから、さっきと同じように屋内へ侵入した。

 

 

 

 

 

タイムマシンの音を聞いて8階に上がって来る“最初の俺”を再びニアミスでかわし、7階で立ち止まる。

前回は4階まで一気に下りたが、今回はそうしなかった。

店舗前のカプセルトイに目を向ける。これこそが今回の最初にすべきこと。

 

うーぱ。

 

正式には『雷ネット・アクセスバトラーズ・うーぱコレクション。』

 

俺はポケットから100円玉を取り出し、躊躇なく投入する。勢いよくレバーを回す。

 

取り出し口に落ちてきたカプセルの中身を確認。

 

「やはり……な」

 

目的のものがそこに入っていた。

 

メタルうーぱ。

 

超が付くほどのレアもの。何も知らなかった“最初の俺”が、偶然引き当てた代物。

 

 

 

と、感慨に浸る間もなく、階段から足音が聞こえてきた。まゆりだ。

俺は急いでその場を離れる。

 

「わー、雷ネットだ~」

 

まゆりは俺の存在に気付くこともなく、うーぱに夢中になっている。後から来た“俺”が偉そうに講釈をたれながら、ガチャポンを回した。

 

あのカプセルトイで出てくる景品の順番は、俺というイレギュラーが割って入った事で狂った事になる。となると、次に出てくるのは……。

 

「わー、うーぱだぁ!」

 

「む?これはレアものなのか?」

 

「ううん。レアなのはメタルうーぱだよぉ。これは普通のみどりのやつ。でも、すっごい可愛いでしょ?」

 

 

 

 

 

これで、第一段階はクリアだ。

メタルうーぱでないことを確認して、俺は一気に4階まで駆け下りた。

 

 

 

 

 

 

「っ……」

 

そこで、やはり紅莉栖と遭遇する。

 

「ね、ねぇ、あなたさっき屋上から——」

 

「俺は、お前を——」

 

俺は遮るように言う。

 

「え?」

 

「俺はお前を、助ける」

 

「どういう、こと?」

 

俺は何も答えずにそのまま立ち去った。ここで何かを言えば、紅莉栖がこの後、“最初の俺”に話しかけるきっかけがなくなってしまうからだ。

 

前回は、俺はすごく辛そうな悲しそうな顔をしていたらしい。

 

そんな顔が出来たかどうかは怪しいが、きっと問題ないだろう。

 

「あ、ちょっと——」

 

話を一方的に打ち切って走り去ったのだ。会見の会場でドクター中鉢につっかかる俺をつまみだし、文句を言う気にもなってくれるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

「——本日は、ドクター中鉢によるタイムマシン発明成功記念会見にお集まりいただき、まことにありがとうございます」

 

7階まで再び戻ると、アナウンスが流れた。それを聞いた“最初の俺”は、8階へと上がっていく。けれど、まゆりはその場に立ち止まったまま、ペンを取り出して、うーぱにサインを始めた。

 

ここまでは作戦通りだ。

 

 

ドクター中鉢が8月21日にロシアへ亡命した際に持っていた、まゆりのサイン入り『メタルうーぱ』。それを金属製からプラスチック製にすり替えることで、中鉢の乗っていた飛行機の火災事故に影響を及ぼすはずだ。

 

とはいえ、問題はどうして中鉢がうーぱを持っていたのか、だ。俺が介入する事で、中鉢の手に渡らなくなってしまっては困る。

 

「えへへ~」

 

サインを書き終えたのか、まゆりは満足げに頷いて、小走りで“最初の俺”を追いかけた。うーぱは上着のポケットの中に入れようとして———。

 

「っ!」

 

ちゃんと入らず、そのまま床に転がり落ちた。だが、まゆりはそれに気づかずに階段を駆け上がって行った。

 

うーぱは6階まで落ちた。あれを中鉢が拾うのか?

 

(中鉢があんなものに興味を示すのか……?)

 

 

と、そこで階下から人が上って来る気配を感じ、俺は慌てて7階の反対側の踊り場に身を隠した。特殊な形の階段で助かった。普通の階段なら逃げ場はなかっただろう。

 

(紅莉栖……)

 

階下から上ってきたのは紅莉栖だった。そして、俺には気づかず、落ちてるうーぱを拾い上げた。それを掲げて見て、にっこりと微笑んでいる。あいつも、あれを可愛いと思う感性があったんだな。

 

(紅莉栖が拾っていたのか……)

 

バタフライ効果。こんな何気ない出来事が、3週間後のロシアでの旅行記火災事故、更には第三次世界大戦の勃発という未来の行方を、大きく歪めることになる。

 

うーぱを拾い上げた紅莉栖は周囲を見回した。落とし主を捜しているようだったが、見つけられず困惑しているようだった。

 

結局、紅莉栖は持っていた封筒にそれを入れて、8階へと上がって行った。それを確認してから、俺も急いで反対側の階段から8階の通路へ向かう。

 

 

………いよいよ、ここからが本番だ。

 

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