STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
前と同じ段ボールの陰に身を潜ませた俺は、目を閉じてその時をじっと待っていた。
手が震える。
「っ……!何を恐れる、鳳凰院凶真」
紅莉栖を刺し殺した感覚が蘇る。
「すべては俺の思惑通りにいくに決まっているさ」
俺は拳をキツく握りしめる。
「『未来を司る女神』作戦(オペレーション・スクルド)に不備はない。なにせ、この俺が15年もの時をかけて練り上げた計画なのだから」
“あいつ”の想いを無駄にしてはならない。
「俺は、俺を信じる。この鳳凰院凶真を、信じる」
イベント会場からまばらな拍手が聞こえる。ということは、そろそろ足音が聞こえるはず。
12:26
前回と同じタイミングで紅莉栖が姿を見せた。壁に寄りかかり、論文の中身を確認している。
動くのは中鉢が現れてからだ。
奴がナイフを取り出したところでサイリウム・セーバーをぶちまける。あとは中鉢を追い払い、紅莉栖を気絶させる。どちらも、ダルに用意してもらったスタンガンに活躍してもらう。
それが俺の計画。
血糊の上に横たわる紅莉栖を、“最初の俺”が見れば、死んでいるようにしか見えないだろう。これなら騙すことが出来る。
と、次なる足音が響いた。
やはり中鉢だ。紅莉栖が前回と一言一句違わずに話しかける。だが、中鉢はやはり不機嫌だ。俺が会見でボロクソ言ったのも原因の一つだろう。
中鉢が癇癪を起こすタイミングを待ちながら、サイリウム・セーバーを確認する。
発光はすでにおさまっており、あとは先端部分のキャップを外せば、ドロリとした血糊が溢れ出す。
「っ……!」
ところが、血糊は固まってしまっていた。発光終了後も、30分ほどはドロドロ状態が続くように設計したはずだったのに。
(失敗作か⁉不良品か⁉……どちらにせよ、今になって気付くとは……っ!)
予備はない。このままでは、計画が狂う。
「私は追放されたのではない!」
中鉢が怒鳴り出した。時間は止まってくれない。
ここから、状況を立て直すにはどうすればいい?一度出直すか?
いや、それは出来ない。これが最後のチャンスなのだ。
「ねえ、久しぶりに会ったことだし、いろいろと話したいんだけど、パパは今、青森に住んでるんだっけ?」
「帰れ」
「え?」
「さっさとアメリカに帰れ。二度と顔を見せるな!」
中鉢の癇癪は止まらない。俺は焦りのせいか、額からにじむ汗が止まらない。
悲劇へと真っすぐ進んでいく。時間よ、止まってくれ……。
「っ!」
馬鹿か、俺は。神でもすがるつもりか、鳳凰院凶真!
俺が未来を変える。
俺が世界を騙す。
残酷な神も、世界の意志も、あてにはしない。
紅莉栖は俺の手で、助ける!
「……まさか、パパ。盗むの?」
その一言に、中鉢が激高し、ついに手をあげた。
そこでひとつ、俺は方法を思いついた。
血の上で横たわる紅莉栖。あの状況を再現する方法として、血糊を使う以外にも、もうひとつだけ手はある。
世界の収束を逆手に取った、賭けにも似た方法が。