STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
テレビでニュースをかなりの音量で流している。シャワールームまで俺たちの声が聞こえないように、テレビの音量を上げたのだ。
鈴羽がいることがバレたとき、かなり気まずい空気になった。まゆりが気を利かせてくれて、由季さんとシャワーを浴びにいったのだ。
最初は鈴羽も一緒に、という提案だった。裸の付き合いをさせて、少しでも由季さんとのギクシャクした関係を解消させようとしたのだが、シャワールームが狭すぎて入れなかった。という言い訳のもと、鈴羽は断っていた。
「参ったな……」
「鈴羽のせいじゃないお。オカリンが悪いんだ」
「ダルが事前に教えてくれなかったからだろ」
「教えるタイミングがどこにあったのかと小1時間(ry」
「ずいぶんと古いネタを……」
鈴羽はポカンとしていたが。
「もういいよ、あたしが迂闊だっただけで、誰も悪くない」
そこでかねてからの疑問を口にした。
「そもそも、由季さんから隠れる必要はあるのか?すでにダルの妹で通っているんだから、こそこそする方が怪しまれるだろう」
もともと鈴羽は由季さんとは会いたがらなかったそうだ。父であるダルと接触するだけでもタイムパラドックスを引き起こす可能性があるのだから、母にまで接触するのはまずい、というのがその理由だった。
でも、早い段階で存在がバレてしまって、やむを得ずダルの妹だと言って誤魔化したのだ。由季さんもそれを信じてくれているのだから、それ以上取り繕う必要はないのではないか。
「そうだけどさ…、母さんが思った以上にあたしと仲良くなりたがるんだ。あまり会話しすぎるとボロが出かねない」
「自分とよく似た人が現れたら、嫌悪するか興味を抱くかのどちらかだろうしな…」
こうして間近で見れば、鈴羽と由季さんはよく似てる。くせっ毛はダル由来だろうが、栗毛色の髪は由季さん由来だろう。
「嫌われた方がずっと楽だよ」
「いっそ事実を打ち明け……るわけにもいかないか」
いつかは打ち明ける事になるが、それはまだそのタイミングではない。
「つーか、別にこのまま何も話さなくていいんじゃね?」
「え?」
「阿万音氏はなんつーか、秘密とか無理に聞きたがるような人じゃないと思うんだよね。鈴羽ならよく分かってるんじゃないの?」
「それはそうだけどさ…」
「じゃあ大丈夫だった。いずれ時が来たら、ボクからちゃんと説明しとくよ」
「ほんと?」
「ああ」
「分かった。父さんに任せる」
鈴羽は納得したようだった。
「で、今後は阿万音氏を露骨に避けるのはやめるっつーことで」
「……うまくやれるかどうか、自信ない」
「大丈夫だって」
「………」
「オカリン、その目は何?」
「いや……」
由季さんを前に緊張しまくっていたのはどこの誰だったか。鈴羽も俺の表情に思うところがあったのか、ダルのことを冷たい目で見ている。
「ぼ、ボクはちょっとハッカー仲間との連絡があるから、そっちに戻るお!」
そう言ってダルは逃げるようにPCの方に向かった。
俺と鈴羽は、特に話すこともなく、テレビのニュースを見ていた。
気まずさがあって、お互いに話そうとはしない。
『新型脳炎は、感染力は弱いのですが、潜伏期間が長く、突然発症します。症状としては、幻覚や記憶障害が主ですね。たとえば、会社で仕事をしていたはずなのに、気が付くと家にいたりですとか、会ったこともない人に会った記憶がある、というような症例が報告されています。あとは、実際には発生していない事件が起こった覚えがあるなどといった、記憶の混乱も現れているようです。夢と現実の区別が出来なくなったり、時間感覚を失ったり、周りの人と記憶が一致しなくなるので錯乱状態に陥ったり。いわゆる、寝ぼけているような状態、既視感(デジャヴ)のようなものと言えますが、もっと症状がハッキリしています』
ぼーっと聞いていたニュースだったが、その内容はあまりにも衝撃的だった。
「オカリンおじさん……」
「あ、ああ。これって……」
新型脳炎だと?いや、違う。夢と現実の区別ができなくなる。時間感覚を失う。周りの人と記憶が一致しなくなる。
それは。それはまさしく——。
「リーディングシュタイナー……」