STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
ミネラルウォーターを一気に飲み干してから、俺は一息ついた。レスキネン教授たちとの約束の時間までは、まだ少しある。ここで風に当たってなんとか回復しておきたかった。
陸橋から、下の景色をぼんやり眺める。クリスマスムード一色。浮かれた雰囲気。まるで今の俺とは対照的だ。
深呼吸を繰り返した。まだ吐き気は消えない。頭痛も少ししてきたような気がする。
この調子でレスキネン教授に会いに行ったら、絶対に心配されてしまいそうだ。
「……?」
そのとき、階段を上って来た女性2人組がこっちを見ていることに気づいた。薄暗くなりつつある中で目を凝らし、相手の顔を確かめてみる。
と、2人組のうちのひとり、ショートカットの少女が軽く手を振ってきた。
「やっぱりオカリンさんだ」
「こんにちは」
「あ、あぁ。まゆりの友達の……」
まゆりの友達であり、コスプレ仲間。コスプレネームは確か……カエデとフブキ、だったはず。本名は知らなかった。どっちがカエデで、どっちがフブキだっただろう?
「大丈夫ですか?具合悪そうですけど…」
とロングヘアの少女が訪ねてきた。…たぶんカエデ、だったはず。
「……大丈夫」
ここで心配されて、まゆりに連絡でもされたらそれはそれで後のフォローが大変だ。まゆりには無駄な気遣いをさせたくない。そもそも秋葉原にもどってくるんじゃなかった。
街を歩くだけで知り合いに会ってしまう。さっきだって神社から神田の方へ行くべきだった。
「オカリンさんって、いつも、なんだか辛そうに見えます」
おそらくフブキの方だ。
「……そう、か?」
「そうだよっ!」
「フブキちゃん……」
「そんなオカリンさんを見てるマユシィも辛そうで……。私も、オカリンさんとマユシィのこと見てると泣きそうになって……って、私なに言ってんだろ…」
このフブキっていう子は、まゆりのことをとても大切に思ってくれているんだな。
それが分かって優しい気持ちになれた。
「あのっ…」
これまた聞きづらそうにフブキが口を開く。
「オカリンさんの好きな人って、誰ですか?」
「……!?」
好きな、人?
一瞬だけ、あいつが脳裏をかすめる。
追いかけるべきではないと思ったばかりの幻影。そしてそれと同時に、あいつの命を奪ったあの瞬間の感触が、この手に蘇ってくる。
「……っ」
まずい。落ち着け——。
「オカリンさん?……ご、ごめんなさい!失礼なこと聞いちゃって!あの、私……」
瞬間、世界が歪んだ。
「こ、これは……」
世界線変動率
1.129848 → 1.064750