STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
教授たちとの話を終えると、俺はラボへと向かった。電話でまゆりの無事は確認できたが、それでも実際に会ってこの目ではっきりまゆりの姿を確かめたかった。
外から見ると、ラボの電気はついていた。
「まゆり、いるか——」
ドアを開けた途端、小さな衝撃が胸にぶつかった。
「きゃっ…!」
女の子のような声。
「あ、悪い!」
怪我をさせてはいけないと、すかさず手を伸ばして支える。
「……ルカ子?」
そこには、俺の腕の中で恥ずかしそうにするルカ子がいた。
「い、いえ、僕の方こそごめんなさい」
可憐だ。なんだこいつは。どこの誰よりも女の子らしいじゃないか。……だが、男だ。
「大丈夫か、ルカ子」
「あ、はい……支えてくださったおかげでなんとも…」
今まさに出て行こうとする瞬間だったのだろう。なぜかルカ子は少し頬を赤らめている。すぐに手を離すと、ルカ子はもじもじし始めた。
部屋の方を見る。部屋にいたのはルカ子とダルだけだった。これまた珍しい組み合わせだ。
まゆりの姿も鈴羽の姿も見当たらない。
「よかった。もう少し早く帰っていたら、岡部さんと入れ違いになっているところでした…」
「ん?もしかして俺を待っていたのか?」
「はい……と言っても、別に大した用があったわけじゃないんです。差し入れを持ってきただけで…」
「おまんじゅう、もらったお」
すでにダルが箱詰めされたそれを半分ぐらい平らげてしまっている。
「頂きものですから、皆さんでどうぞ」
「そんな気を遣わなくても大丈夫だぞ?ありがたく頂くが…」
「つーかるか氏、時間大丈夫なん?」
「あ…実はこの後、お家にお客さんが来ることになってるんです」
「客?ルカ子のか?」
「いえ、お父さんのお客さんです。でもなぜか、僕にも同席してほしいと言われまして…」
「なら急いで帰った方がいい。わざわざここまで足を運んでもらって悪かったな」
「い、いえ。こうして男の子3人で話せてよかったです」
そう言われてみると、このラボは女性率が高い。
男は俺とダルと、そして一応ルカ子の3人だけ。ルカ子はまぁ、女と数えても問題ないが。
「えっと、それじゃあ僕はこれで……また来ますね」
「ああ。いつでも来てくれ」
深く頭を下げると、ルカ子は帰って行った。
「るか氏とオカリンの薔薇の園……」
「おい、何を言ってるんだ」
「いーや。美しき師弟関係かな、と思っただけだお」
そういえば、そんな設定もあったな。ルカ子は本気にしていたようだが。今でもたまに、五月雨の素振りをした報告が来るくらいだし。
「お前、ルカ子とふたりの時に、変な事言ってないだろうな?」
「さすがにあんな純粋な子に何も吹きこまんって。将来マルチ商法とかに引っかからないか心配だお」
「同感だな……」
注意しておかねばならん。
「ところで、まゆりは?」
「メイクイーンじゃね?今日はまだ来てないお」
それじゃあ少し待つか?それとも迎えに行くか?
「そういえばオカリン、さっきの電話だけどさ、あれ、何だったん?」
教授たちに会いに行く前の電話のことだろう。
どうしようか。世界線が変動したことをダルにも話すべきか?
ここに来るまでの間、それについてずっと考えていた。
やはり、あれは俺の勘違いなどではなく、間違いなくリーディングシュタイナーだ。世界線は変動した。
それについてはもう疑いようがない。
だが、まゆりが死ぬこともなく、前後で俺の行動もほとんど変わっていない。
「あれは……気にしないでくれ。たぶん、俺の勘違いだ」
「そうなん?だったらいいけどさ……」
ダルには何も言わないことにした。とりあえず今はそれでいい。