STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
「まゆしぃのようじょがどうしたの~?」
突然、それも近距離から聞こえた声に、全員が飛び上がった。
「トゥットゥルー♪オカリン、本当に待っててくれたんだね」
全員で顔を見合わせる。今の話、聞かれていなかっただろうか。
「うん?どうしたの?」
だが、それ以上に俺は、まゆりの姿を見て、心の底から安心することができた。
「よかった……まゆり…」
その小さな手を取ると、しっかりとした温もりが伝わって来た。
生きている。
「お、オカリン?」
「あ……すまない」
「ううん。大丈夫だよ。えへへ~、まゆしぃの手、あったかいでしょ~」
無邪気に笑うまゆりを見て、泣きそうになった。これ以上、変に心配させるわけにもいかないため、俺はぐっと堪えた。
「ま、まゆねえさん、いつからいたの?」
俺があふれ出る感情と戦っているのをよそに、鈴羽はそう尋ねた。そう、先ほどの話をまゆりに聞かれるわけにはいかないのだ。
「ん?今来たばっかりだよ?」
「そ、そっか……それならいいんだ」
「うーん?どうしたの?スズさんもお手て、握ってあげようか?」
「え、あ……うん。お願いするよ。あたしも手が冷たくてさ」
誤魔化すように鈴羽もまゆりの手を握る。まゆりは嬉しそうに鈴羽の手を握り返していた。鈴羽も鈴羽で少し嬉しそうだ。
「ねえねえ、まゆしぃのようじょがなんとかって聞こえたけど、なんの話をしてたのかな?」
「えっと、それは……その……」
「ダルが幼い頃の鈴羽の写真を見たいと言い出してな、それでまゆりの幼い頃の話になったんだ」
「スズさんが幼い頃?わ~、まゆしぃも見たいなぁ」
「…8年後になったら見れるよ」
「あ、そっかぁ。スズさんが生まれてくるのってまだ未来のことなんだもんね~。えへへ。可愛いんだろうなぁ」
「ま、まゆねえさんの方が可愛いよ。あたしもまゆねえさんの幼い頃の写真、見てみたいな」
「そう?じゃあ今度見せてあげるね?まゆしぃのお家に来る?」
何とか誤魔化せたようだ。
「そうだ、オカリン。クリスマスに食べたいものってある?」
「クリスマス?ああ、パーティのことか。食べられるものならなんでもいいぞ……」
「クリスマスパーティ、か」
「うん。スズさんは初めて?」
「あたしたちの時代は、パーティなんてする余裕はなかったからね。でも一度だけ、父さんがどこからかチキンを調達してくれたことがあったっけ…。それをまゆねえさんが調理するって言って、父さんが止めて……」
鈴羽は未来を懐かしむように、表情を緩めてまゆりを見つめた。かがりの話をして、未来の事を思い出しているんだろう。由季さんが戦争で命を落としてしまうことを以前聞いた。それからは、まゆりが母親代わりをしていたのだろうか。
「えっへへ~。じゃあ今度のパーティはすっごく豪華にしようね!スズさんも楽しみにしておいてほしいのです!」
鈴羽も嬉しそうに頷いた。
「ダルくんは、何か欲しいものある?」
「ボクは可愛いおにゃのこがサンタコスしてくれれば、それだけでお腹いっぱいだお!」
鈴羽の表情が一転した。
「そういうのは母さんだけにしないとダメだって言ってるだろ!」
鈴羽はお説教モードに入った。未来でもきっと、こんな光景が繰り広げられていたのだろう。
「オカリンは、誰か呼びたい人いる?」
「俺?俺は別に……」
言いかけて、ふと1人の姿が頭に浮かんだ。真帆。クリスマスは家族と過ごすものだと言っていたけど……。
「オカリン?」
「あ、いや…特には」
彼女はどんなクリスマスを過ごすのだろうか。