STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
2010年12月16日(木)
「どう、父さん。何か手掛かりはあった?」
「いや、残念ながらこっちは何にも…」
「そう…」
未来のまゆりの養女、椎名かがりの捜索は、思った通り難航していた。
鈴羽は警察にも行ってみたようだが、捜索願は出していない。届け出る側の身分証明も必要になるし、家族や恋人など親しい間柄の人にしか出せない仕組みになっているらしい。
「ボクの方でも昨日、警察のデータベースにハッキングをかけてみたんだけど、それっぽい情報は出て来んかった」
「やはりな…」
「つーことは、オカリンの方でも見てみたん?」
「お前のように内部情報を探れたわけではないが…」
警察のHPは見てみたが、かがりについて詳しい情報を持っていない俺たちには判別できなかった。それと、俺は昨晩、“紅莉栖”にも詳しい事情は伏せて相談してみた。結局のところ、警察や興信所を頼るように言われたぐらいで、これといった収穫はなかった。
「でもさ、一見平和に思えるこの世界でも、身元不明者や行方不明者ってたくさんいるんだね」
それは俺も思ったことだ。身元不明の遺体の数は、東京だけでも年間に100以上もあるらしい。その規模を日本全国に拡大し、更に過去12年間ともなると、かなりの数になる。さらに行方不明者となると、それどころではなく、年間10万人近くになるという。
その中には、生死不明の状態の人も多い。椎名かがりが生きていることを願うばかりだが、事故や事件に巻き込まれた可能性も否定できない。
昨晩、俺はまゆりを送り届けたあと、“紅莉栖”に相談した。椎名かがりの名前は出さなかったが、行方不明者を捜すにはどうすればいいか、と。
具体的な話をしなかったせいもあって、警察や興信所に頼るべき、というくらいしか答えは返ってこなかった。
俺はソファから立ち上がる。
「ん?オカリンどっか行くん?」
「もう少し、調べてみようと思ってな」
最初は乗り気ではなかったが、なんとか見つけてやりたいと思うようになってきた。
それに——。
「オカリンおじさん、ありがとう…」
「別に、たいしたことじゃないさ」
「ううん。そうだとしても、ありがとう」
こう言っては嫌な響きだが、かがりを捜している間は、鈴羽に未来の事について言われることもないだろう。そんな打算もある。俺は外に出て、思いつく限り手掛かりを探した。
とはいえ、そう簡単に見つかるはずもなく。
俺は無意識のうちに、再び“紅莉栖”に相談していた。
『どうかした?』
「あ……」
『なに?』
「いや……」
『ねえ、昨日よりさらに疲れてるみたいだけど、大丈夫?』
「そう見えるか?」
『声のトーンがいつもより低い。結膜に多少の充血も見られる。もしかして、昨日言ってた件を調べてたの?』
「まぁな」
俺はダルから聞いた話や、調べ回って得た情報を説明した。かがりの名前も。
『馬鹿ね、そんなことなら、私に言ってくれれば簡単にことは済んだのに』
「どういうことだ?」
『私なら、ネットワークに接続して、オンライン上の情報をリサーチすることができるでしょ?』
「ああ……そうか」
忘れていた。こいつはコンピュータの中に存在する人工知能。ならばそういう芸当はお手の物のはずだ。
『なんなら、少しやってみましょうか?』
「すぐにできるのか?」
『それほど時間はかからない』
「…それじゃあ頼む」
『分かった。それじゃあ少しだけ待ってて』
それから数十秒。“紅莉栖”は考え込むように沈黙した。
『ふむん』
「もう出来たのか?」
『ネットワーク上で検索してみたけど、1998年以降、椎名かがりという名の女性がなんらかの事件や事故に巻き込まれたという情報は得られなかった。同姓同名の人物は3名ほど検出。ただ、年齢を考慮すると、その人物があんたの捜している人である可能性は限りなく低い。ご要望なら、その人物のデータを後でメールで送るけど?』
「……いや、いい」
『それじゃあ私に出来る事は以上かな。あとはあんたたちにしか出来ないやり方で捜すしかないわね』
「俺たちにしか出来ないやり方?」
『足を使うってことよ。その人物がいなくなった場所の近辺で、地道に情報を集めるの。究極的にアナログな方法だけどね』
「やっぱりそうなるか…」
それは既に鈴羽がやっているはず。これ以上真新しい情報が得られるとも思い難い。けれど、結局出来る事がそれしかないのだから、それをするしかないということだ。