STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
「あの、よかったら、お茶でも飲んでいってください」
俺はルカ子の荷物の量を見かねて、神社まで一緒に運んできた。
別れを言って、再び荷物を持ち上げようとしたルカ子は、あまりの多さにふらついていた。その隣で同じく荷物を持ち上げようとするフェイリスも、その重さに振り回されていたのだ。
フェイリスはまだ、なんとか持ち上げていたが、ルカ子は今にも倒れてしまいそうだった。そして驚くことに、そもそも小柄で線の細いフェイリスだが、隣に並ぶルカ子はそれ以上に細かった。少しつつけば、身体がポキリと折れてしまいそうな細さだ。
「いや、遠慮しておくよ。お客さんだっているんだろ?」
「それはそうですけど……」
荷物を運びながら、ルカ子にもうちょっと食べるように言うと、食べても食べても太れないと言っていた。まぁ俺もそんな感じだから分かると言えば分かる。だが、フェイリスはそれが許せなかったらしく、珍しく怒っていた。
フェイリスにしたって痩せすぎだと思うんだがな。まゆりくらい豪快に食べている方が、見ていて安心できる。あいつなら、どんな環境でもたくましく生きられるだろうからな。
「それにしても、この荷物、いくらなんでもひとりで運ぶには無理があるだろ」
途中で、フェイリスや俺に会わなかったら、どうしていたんだろうか。フェイリスも、途中でメイクイーンの方に帰って行ったし。
「ぼ、僕だって、最近少しは力がついてきたんですよ?凶真——岡部さんに言われた素振りだって………き、筋トレしてるんです」
「…清心斬魔流、か」
鈴羽も、未来のルカ子は最強だと言っていたし、俺のくだらない厨二病の妄想も、役に立っているのかもしれないな。
「るか、帰ったのかい?」
社務所の奥にある住居から、ルカ子の父親の声が聞こえてきた。
「はい、今行きます!」
「それじゃあ、俺はこれで」
「は、はい。ありがとうございました。岡部さん」
深々と頭を下げるルカ子の姿を背に、俺は柳林神社を後にした。
帰り道すがら、俺はふたりの言葉を思い出していた。
「でも水くさいニャ。なにか困った事があるなら、フェイリスたちにも話してくれればいいのニャ」
「そ、そうです。僕じゃお役に立てないかもしれないですけど……でも、お話くらいなら……」
言われてはじめて気づいた。俺は誰よりも先に、“紅莉栖”に相談していた。無意識のうちにアプリを立ち上げ、あいつと話をしていた。あいつは——本物の紅莉栖じゃない。
けれど、あの声が、仕草が、言葉が——。
「っ……!」
全てが紅莉栖を思い出させる。
全てが、かつて俺が必死になって殺した想いを呼び覚まそうとする。
スマホが鳴る。
“紅莉栖”からの着信だ。きっと、さっき何も言わずに切ったことで文句があるんだろう。
あいつらしい行動だ。
「……………」
けれど、俺はその着信を取らなかった。
以降、その日何度かかかってきた電話にも結局出ることはなかった。