STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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2010年12月17日(金)

 

 

大学の授業を終え、俺は校舎の中を歩いていた。と、そこで、見覚えのある後ろ姿が目に入った。

 

「レスキネン教授?」

 

ささっと歩いて行ってしまい、姿は見えなくなった。階段の方へと行ったようだ。

 

教授は今、日本にいる。俺が師事する井崎はATFの懇親会で、レスキネン教授とのコネを作りたがっていた。まぁ、レスキネン教授に限った事ではなく、著名な研究者なら誰でも、といった節操のない感じだが。

 

だから俺は、レスキネン教授や真帆と関わりがあることを井崎には言っていない。面倒な事になりそうだからだ。

 

井崎はあれから、かなり積極的にアプローチをかけているようだ。レスキネン教授がこの大学にいても、なんらおかしいことではない。

 

(今度、レスキネン教授に確かめてみるか……)

 

俺は秋葉原の方へ向かうことにした。

 

 

 

電気街口改札から出ると、すぐ目の前にはラジ館がいつものようにそびえ立っている。

 

あの屋上には、鈴羽が乗って来たタイムマシンが鎮座しているんだろう。考えてみれば、いかに人が近寄らない場所とはいえ、結構な間、見つかっていないというのもすごい事だ。これもまぁ、フェイリスのおかげだが。

 

もっとも、俺はここにタイムマシンを見に来たわけじゃない。昨夜、ラボから帰った後に、フェイリスとルカ子から連絡があったのだ。ルカ子は父親に、フェイリスは執事の黒木さんにそれぞれ訊いてくれたらしい。

 

だが、やはりそんな話は聞いたことがないということだった。ただ、フェイリスがひとつ、面白い話をしていた。

 

 

『でも、おさげの幽霊が現れるって話を聞いたニャ』

 

『おさげの幽霊?』

 

『そうニャ。なんでもその幽霊は、何年かに一度現れて、小さな女の子を見なかったかと捜しまわってるそうなのニャ。何年たってもその姿が変わらないから、最近になっておさげの幽霊だって言われてるニャ』

 

 

……どう考えても鈴羽のことだった。

 

あいつ、自分が幽霊だと思われていると知ったら、どんな顔をするだろうか。

 

 

改めて俺はラジ館に向き直る。

 

目的はもちろん、かがりの情報を得るためだ。かがりが鈴羽の前から姿を消したのは、このラジ館だ。ということは、手掛かりが存在する可能性が一番高いのも、ここだ。

 

だが、ラジ館内の店一軒一軒に話を訊いたものの、何の情報も得られなかった。

 

 

すぐに情報を得られるとは思っていない。ラジ館以外にも、パーツショップ、商業施設、そして路地裏に至るまで。秋葉原のあちこちでかがりについて訊いて回った。

 

だがそれでも、やはり何の手掛かりも見つけられなかった。

 

誘拐や事故ではなく、失踪だ。目撃証言なんかがあるはずもない。

 

警察に頼る事もできないため、やはり、こういうのは裏の世界の住人に頼んでみるべきなのかもしれない。

 

と、考えて、その考えをすぐに振り払った。

 

馬鹿馬鹿しい。なんて厨二病な考え方だろう。俺はそういうのはもう、やめたんだ。

 

 

 

ラボに戻ると、疲れ切った顔をしたダルと、渋い表情の鈴羽がいた。

 

「これまでだって、鈴羽がそれなりに捜してたわけで、そうほいほいと新しい情報が見つかるはずないんだよなぁ」

 

誰も口にしなかったことをダルが言った。

 

「手伝ってくれてありがとう。これ以上無理はしなくていい。捜索はあたしだけで続行するよ」

 

漂う諦めムードの中、鈴羽がそう言った。

 

「いや、ちょっと待って鈴羽、ボクが言いたいのはそうじゃないんだ」

 

「父さんたちに無理させるわけにもいかないし。それにこれはあたしの責任だから…」

 

「馬鹿言うなって。子どもの責任は親の責任だろ、常考」

 

「父さん……」

 

「ね、今のどう?かなりパパっぽかったと思うんだけど。なんなら『パパ大ちゅきっ』って言って抱き着いてくれてもいいのだぜ?」

 

「はぁ……」

 

このふたりを見ていると、なんだか不思議な気持ちになってくる。出会ってすぐはまったくの他人だった。それが今や、親子だ。しかも年齢は、父と娘でまったく同じときている。

 

鈴羽は親に甘えるのを遠慮しているようにも思えるが、ダルのほうはどうなんだろうか。父親としての自覚、のようなものが出てきているようにも見える。

 

「とにかく、ボクが言いたいのは、ただ無暗やたらに捜したってダメだろってこと」

 

「じゃあ、どうしろというんだ?」

 

「餅は餅屋って言うでしょ。こういうのは、やっぱり専門家に頼むのが一番だと思うんだよね。こういうのはある程度、裏の世界の情報にも精通している人に頼むのが一番だろ常考」

 

思考が俺とまったく一緒で、頭が痛くなりそうだった。

 

「裏の世界に精通してるって、父さん、そんな知り合いいるの?」

 

「ちっちっち、父さんを甘く見ないでほしいな。ボクはオタだけど、顔は広いのだぜ」

 

「横幅も広いけどな」

「横幅も広いけどね」

 

俺と鈴羽がハモった。

 

「ふたりして茶化すなっつーの!」

 

「というか、本気で言ってるのか?本気で、裏の世界の人間とやらに繋がりがあると?」

 

「ちょっと連絡取ってみる」

 

そう言うと、ダルはスマホを取り出して何やら打ち込み始めた。よく分からないが、スマホでやり取りするのか?スパイ映画とか、そういうイメージしかないが、もっとすごい機材を使ってやりとりするんじゃないのだろうか。

 

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