STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
どうして自分と岡部をそうまでしてくっつけたがるのか。レスキネンにせよ“紅莉栖”にせよ。真帆には理解できなかった。
(この時代、ああいうのってセクハラなんじゃないのかしら?)
だいいち、真帆が岡部のところを訪ねようとしているのは、会いたいからというわけではない。やはり、もう一度会って紅莉栖のノートPCのパスワードのヒントをもらうためだ。岡部は知らないと言っていたが、真帆がひとりで考えるよりはきっと多くを知っているに違いない。
それは『Amadeus』のログを見て思った事だ。女の勘、と言ってもいい。岡部と紅莉栖。きっと、友達以上の何かがあった。レスキネンたちが茶化すような色恋ではなく、何か。
(単純に、紅莉栖のプライバシーを覗き見るべきではない、という理由ではないはず)
岡部がPCの中を覗くべきではないという理由には、それ以外の何かがあるはずだ。
(あなたは何を知っているの?)
そんなことを考えながら電車を乗り継ぎ、秋葉原駅の改札を出た時だ。
「…………?」
誰かに見られているような気配がして、真帆は振り返った。平日だというのに、駅は大層混雑している。しかし、その中に、真帆が感じたような視線を放つ者はいなかった。
「……気のせい、よね?」
誰に言うともなしに呟いて、再び歩き出す。未来ガジェット研究所の場所は、“紅莉栖”から聞いている。岡部はラボを“紅莉栖”に見せてくれはしなかったが、だいたいの場所は教えてくれていたのだ。それを又聞きした。おおざっぱに歩いていれば、いつかは辿り着くだろうという算段だ。
アポを取っているわけでもない。岡部がいなかった場合にどうするかはまだ考えていなかった。まぁ、別に今すぐにパスワードを知りたいわけではない。気分転換のために、というのも嘘ではなかった。
様々なショップの店頭で売られているジャンク品に目移りしながら、しばらく進んだところで——。
「…………」
やはり、何者かの眼差しを感じた。しかし、振り返ってもやはり、それらしい人間は見当たらない。
再び歩き出し、角を曲がって路地へ入る。そこで真帆の疑惑は確信に変わった。
足音——。
それが真帆の背後から聞こえてくる。勘違いではない。真帆の歩調に合わせて早くなったり緩まったりしている。
「っ!」
実際にこういう場面に出くわすと、振り返る事さえできない。もどかしい手つきでポケットからスマホを取り出す。
警察に電話する、という選択肢は頭に浮かばなかった。頭の中に思い浮かんだのは、今から会おうと思っていた人物のみ。震える手で発信ボタンをタップする。
(お願い……出て!)
呼び出し音に足音が重なる。
(岡部さん……助けてっ!)
足音はすぐそこまで近づいていた。
たまらず駆けだそうとしたその時。
『もしもし?』
「もしもし岡部さん!私、比屋定です!」
『どうしたんだ比屋定さ——』
「今、あなたのラボのすぐ近くまで——」
しかし、それ以上のことを真帆は言葉に出すことが出来なかった。何者かに羽交い絞めにされたと分かった時には、真帆は手の中のスマートフォンを取り落としてしまっていた。