STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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2010年12月23日(木)

 

 

あれから3日。萌郁からの報告に進展はなかった。萌郁も担当雑誌の校了などがあり、時間が取れないのだとか。本来の業務を差し置いてまでこちらを優先してもらうわけにもいかないから仕方ない。

 

俺はずっと、かがりを捜している連中のことについて考えていた。

 

とりあえず、かがりが生きているということについては間違いなさそうだ。12年前ではなく、最近になってかがりを捜し始めた連中がいるということは、かがりが生きているという証拠だ。そして、この12年間、かがりはどこかで保護、もしくは軟禁のような状態にあったのではないか、と考えている。

 

だが、保護というのは希望的な考えだ。連中の中に外国人も混ざっているという事から、何かしらの犯罪に巻き込まれている可能性が高い。かがりを捕まえ軟禁していたが、最近になってかがりが逃げ出し、その足跡を追っている、とも考えられる。

 

(仮にそうだとして、連中はなぜかがりを狙う?)

 

当時10歳の少女。そういう趣味のある連中だとすれば、なくはないが、身寄りのない幼女を攫うことに意味はないだろう。つまり、連中はかがりが未来人であることを知っている可能性が高い。ふとした拍子に、かがりが未来から来た人間だと知られれば、かがりを狙う者が現れるのも当然だと言える。どこから漏れたのか。

 

(かがりが自分からタイムマシンを飛び出した、というのも気になる…)

 

鈴羽の目をかいくぐって、かがりを誘拐するというのは難しいだろう。どこかで手引きをしていた?だが、1998年時点から、俺たちに目を付けることができる存在がいるとは思えない。

 

SERNではなさそうだ。萌郁が知らされていないだけ、ということもあるが、どうにも違うような気がする。他にどんな連中がかがりを狙うのか、と言われれば予想もつかないが。

 

 

「はふぅ~。まゆしぃはとっても残念なのです」

 

俺はラボで、まゆりと話していた。

 

「ん?もしかして、クリスマスパーティのことか?」

 

「うん。カエデさんとフブキちゃん。用ができちゃったって。フェリスちゃんはお仕事で~、綯ちゃんも店長さんと過ごすことになってて~。ダルくんは由季さんと遊びに行くんだって~」

 

「結構なことじゃないか」

 

ダルについては鈴羽が随分とお膳立てしたようだ。俺も何度か相談されていた。このままじゃ2人がうまくいくビジョンが見えない、と。鈴羽にしてみれば、自分の存在がかかっているわけだしな。まぁそれ以上に、この平和な世界で、父と母が仲良くするところを見たいのだろう。

 

「まゆりもクリスマスは家で過ごした方がいいんじゃないのか?この前、おじさんがケーキを予約してたぞ」

 

「お父さんに会ったの~?」

 

「家の近くでバッタリな。まゆりをビックリさせるために、おっきいのを予約するんだって張り切ってた」

 

「そっかぁ……ん~、じゃあその方がいいね」

 

「あ、言っとくが、今のは聞かなかったことにしてくれ。せっかくのおじさんのサプライズだからな」

 

「うん。わかったよ。でも、オカリンはどうするの?クリスマス」

 

「特に予定はないかな。うちは元々そういうことする家でもないし」

 

大学の連中は、男だらけのクリスマス飲み会を開くと言っていたが、俺は誘われなかった。大学に入学したての頃はよく、まゆりが大学まで俺を迎えに来ていた。それに最近もよく来る。それを見て、まゆりのことを俺の彼女だと思っているらしい。理系の大学だし、男が多い。女と連れ立って歩いていれば、そう勘違いされるのも仕方のないことかもしれないが。

 

誘ってもらえないだけならともかく、かなり本気のトーンで文句を言われた。ボッチよりは男だけで飲みに行く方がリア充だと思うんだがな。別に彼女がいることだけがリア充ではないんだ。

 

最近は大学にも居場所らしきものができるようにはなったが、リアルが充実していると言えるほど陽キャにはなれない。

 

「確か、サンタさんにプレゼントが欲しいって言ったら、朝、枕元にお野菜が置いてあったんだよね?」

 

「どう見ても前の日の売れ残りのな。クレームつけたら、うちはキリスト教じゃねえ、って逆切れされた」

 

おふくろはまだしも、親父は昔ながらの頑固おやじだからな。野菜と果物以外のことは何も知らないんだ。おふくろに言われて慌てて野菜を用意したらしいし。

 

「クリスマスが終わったら、コミマがあって、そしたらもうお正月。一年、あっという間だね~」

 

「そうだな……」

 

あっという間、でもなかったけどな。

 

あの夏の日、俺は何度も何度もあの時間をやり直したんだから。むしろ気の遠くなるほど長い一年だった。

 

「ねえ、オカリン。クリスマスパーティはできないけど、お正月パーティをするのはどうかな?みんなで初詣に行って~、おせち料理を食べて~、今年もよろしくって言って~」

 

「いいんじゃないか?」

 

「だよねだよね~。じゃあ後でみんなに訊いてみるね~」

 

まゆりはそう言うと、おもむろに立ち上がった。

 

「さてと、まゆしぃはこれからお買い物に行ってきます」

 

「買い物?」

 

「うん。コスの材料を買い足さなきゃいけなくなったんだ~」

 

「そうか…」

 

「あ、そうだ。オカリンさえよかったら、家で一緒にクリスマスパーティしない?みんなでは出来ないけど、オカリンのお家と一緒にならできるのです」

 

「え?あ、ああ……そうだな」

 

どうせ家ではパーティなんてしないんだ。それもいいかもしれない。

 

「おじさんとおばさんが迷惑でなければ……」

 

「絶対大丈夫だよ~。オカリンなら大歓迎だよ」

 

「そ、そうか?だったらお呼ばれしようかな」

 

これまでにも何度かクリスマスに呼ばれたことがある。そのたびにおじさんは、『なんだ、岡部の野郎は息子のためにパーティもしてやらねえのか』なんて怒ってくれていたっけ。こんなスーパーがひしめき合う時代に、青果店なんてやってる古臭いおっさんだからな。

 

「一応、おじさんとおばさんには聞いておいてくれよ?」

 

「うん。わかった。あ、そうそう。忘れてたんだけど、るかくんがね、オカリンに何か相談があるみたいだよ」

「あっ……」

 

すっかり忘れてた。萌郁が来てバタバタしていたからな。ルカ子のことだ、律義に俺からの連絡を待っているのかもしれない。

 

「分かった。こっちから連絡を取ってみるよ」

 

「うん。お願いね~。じゃあ行ってきまーす!」

 

まゆりはコートを着ると、手を振って部屋から出て行った。

 

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