STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
まゆりを見送って、俺はルカ子に電話を掛ける。
が、出ない。
「忙しいのか?」
年末だし、いろいろっと立て込んでいるのかもしれない。神社は年末年始が最も忙しいだろうしな。
そこで俺はラインに切り替えた。
『すまない。先日の電話の件、すっかり忘れていた。』
それからしばらく返信を待ってみたが、既読すらつかない。やはり忙しいのだろうか。
忙しくしているなら、直接訪ねるわけにもいかない。そのうちに返事が返って来るだろう。そんな風に思っていると、ラボの外階段を上がって来る足音が聞こえてきた。
ダルではない。ダルならもっとどすどすと重たい音が響く。
「どうぞ」
ドアを開ける。
「こんにちは……」
申し訳なさそうにルカ子が立っていた。
「良かったぁ。岡部さん。ここにいてくれて」
まさに、ついさっき連絡を取ろうとしていたルカ子だった。
「すまない。この前の件、すっかり忘れてたんだ。それで、さっき電話したんだが」
「あ、ごめんなさい。僕の方こそ気づかなくて」
泣き出しそうな顔をするなよ…。
「そんなに申し訳なさそうにするなよ。俺の方こそ悪かった。それより寒いだろ?入ってくれ」
「あ、はい……」
そう答えたはいいが、ルカ子は後ろを気にしてなにやら躊躇している。
「どうした?」
「あの、岡部さん……その、相談の件なんですけど……実は、その前に会ってもらいたい人がいて、連れてきたんですけど、いいですか?」
「会ってもらいたい人?」
「えっと、……」
ルカ子が僅かに身を避ける。と、その背後から、ひとりの女性が現れた。
「あの……はじめまして……」
「——!」
え?嘘だろ……?そこにいたのは……。
「紅莉栖……」
「よろしくお願い……します」
「ど、どうぞ…」
「ありがとうございます」
コップに注いだペットボトルのお茶を差し出すと、その女性は消え入りそうな声で言った。俺はというと、コップを持つ手が震えないようにするのが精いっぱいだった。ソファの向かいに腰をかけて、彼女の顔をもう一度よく見る。
(……似てる)
ルカ子にではない。目の前の女性はあいつ——牧瀬紅莉栖にそっくりだった。
「…………」
茶色が買った髪も、やや吊り上がった目も、澄ましたような顔つきも。今は気の強そうなところさえないが、それを除けば、そっくりと言ってよかった。実際、最初目にした時には、驚きのあまり心臓が止まるかと思った。
ただ、よく見れば違うところもある。例えば……胸の大きさとか。
年齢は俺たちと同じくらいだろうか。ルカ子よりは年上に見える。確か、ルカ子には姉がいたはずだが、もしかしてこの人が?
おとなしそうな雰囲気はルカ子に似ている気がするが……。
「岡部さん?」
「あ、いや……それで、ルカ子」
「ルカ……子……?」
「あ、失礼。俺はそう呼んでるんです。その……女の子みたいだから」
考えてみれば失礼な呼び方だ。ルカ子が嫌がっているのなら、今すぐにでも止めるが。
「そうなんですね。」
ほんの少しだけ、女性の表所が緩んだ。やっぱり似ている。俺は小さく息を吐いて、心を落ち着かせた。
「で、ルカ子……この人は…?」
「その、前に話したことがありましたよね?お父さんのお客さんが泊っているって」
「ああ、聞いたけど、それじゃあもしかして彼女が?」
「はい」
驚いた。
「ルカ子の父親の知り合いと言うから、てっきりもっと年配の人かと思っていた」
「あ、違うんです。正確に言うと、お父さんの知人が連れて来られた方で……」
じゃあ、この人が晴海がどうとかそういう話をしている人じゃないのか。少しだけ安心した。