STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
2011年1月1日(土)
「これで全員揃ったか?」
「えーと、じゃあ今から点呼とるお。阿万音氏」
「はい」
「真帆たん」
「だからその呼び方はやめてって言ってるでしょ」
「カエデ氏」
「はぁい」
「フブキ氏」
「はいはーい!」
「で、あとは……」
「はーい!私でーす!」
「な、綯様……」
ダルの声が詰まった。その原因は、綯の隣に控える大柄な男。冬だというのに、半袖のシャツに『ブラウン管萌え』とプリントされたエプロンを身につけている筋肉もりもりのハゲおやじ。天王寺の存在だ。
「なぁ、オカリン。なんでブラウン氏まで行く事になってんの?」
「俺だって知らない。まゆりが綯を誘ったらついて来た、ってとこだろう」
「おいっ!なにヒソヒソ話してやがる?」
「ヒィッ!な、なんでもないであります!」
乱暴な言葉にダルが震えあがる。
「お父さん。私ね、まゆりおねえちゃんの巫女さん姿、すごく楽しみなんだぁ」
殺人鬼のような気迫にも笑顔を崩さず、綯は嬉しそうにしている。
「そうだな。すまないな。本当ならお父さんが連れてってやりたかったんだが…」
ん?
「その………天王寺さんは来られないのですか?」
「当り前だ。何を好き好んで俺がおめえらと初詣せにゃならん」
それもそうだ。俺たちだってこんなオッサンと初詣なんてしたくない。
「俺はちょっと急用で出かけなきゃいけなくなっちまったから、おめえらに綯を預ける。ちゃんと面倒見ないと家賃上げっからな」
それを聞いて俺もダルも、本人を前にしながら思いっきり安堵の息を吐いた。
特に俺の場合は、ここのところ極力、天王寺とは顔を合わせないようにしていたところもある。
彼はSERNのラウンダーだ。それを知っていて、積極的に関わろうと思えるほど俺の心は強くない。ただ、それが分かっていながらラボを出なかったのは、まゆりやダルの反対があったから、というのが一つ。そして、ここにいれば何か異変があったとき、ラウンダーの動向もある程度掴めるかもしれない、という思惑があっての事だ。
「だめだよ。お父さん。そんな言い方しちゃ」
「ん?おう、そうだったな。さすが、綯はいい子だな」
「オカリンおじさん。お願いします」
礼儀正しく綯が頭を下げた。
「あ、ああ…」
以前のように、小動物扱いしなくなったせいか、綯もあまり俺を怖がらなくなった。おじさんと呼ばれるのには納得していないが。
「そんじゃあ、夜になったら迎えに来るから、よろしくな」
「分かりました…」
「…………」
「な、なにか?」
「いや……やっぱりおめぇ、ずいぶんと変わっちまったよな。前は鳳凰だとかなんとか、妙な事ばっか言ってたのによ。どうにも調子が狂っちまうぜ」
「……おかげさまで、大人になったんです」
「大人に、ねぇ。ま、とにかく綯を頼んだぜ」
天王寺がいなくなったことで、部屋の圧迫感が無くなったのか、綯を除く全員が大きく息を吐いた。
急な用事、というのがどうにも気になる。こんな正月からブラウン管工房関係の仕事が入るとも思えない。
(やはりSERNの方で何か動きがあった……のか?)
偶然ではあったが、ダルが萌郁にかがり捜索の依頼を出してしまった。かがりという存在は、SERNに伝わっていると考えるべきだ。だが、まだ椎名かがりが何者かまでは分かっていないはず。おそらく、かがりの捜している別の連中について、調べている最中といったところだろう。
「とにかく、これで全員だな」
フブキ、カエデ、由季さん、真帆、綯という一風変わった顔ぶれによってラボは占領されていた。
目的は当然、柳林神社への初詣だ。
「……ほんとに良かったの?私なんかが来てしまって」
「気にしなくていい。こっちこそ、なんだかよく分からない集まりになってしまったけど、大丈夫かな?」
「馴染んだ、っていうと嘘になるわね。でも、日本の初詣にも少し興味があったし。それに同年代の知り合いが増えるのも嬉しいわ」
「そう言ってもらえるとありがたいよ」
さすがに真帆の存在だけ少し浮いていたが、それも時間が解決してくれるだろう。
「ふふふ。マユシィのコスプレ、超楽しみ~」
「もう、フブキちゃんったら。コスプレじゃなくて、今日はあくまでも『正装』だよ」
「鈴羽さんの巫女装束も楽しみですね、橋田さん」
「まぁね。妹属性の巫女さんっつーのも悪くない。つーか、どうせならそこにナース属性も追加してくれれば萌えの数え役満なのだが」
むふー、と息を荒くするダル。真帆は完全に引いているが、他のみんなは笑っている。
「あはは!橋田さんって相変わらずヘンタイさんですね!」
フブキにいたっては爆笑だ。
「むふふ。紳士だけどね、キリッ!」
結局、神社の手伝いはまゆりとかがりだけでなく、鈴羽にフェイリスまで駆り出されてしまった。
鈴羽もバイト代が出ると聞いて参加を決めたのだ。ダルが小遣いをあげているらしいのだが、鈴羽はあまり使いたがらないようだ。ダルは父親とはいえ、鈴羽と同い年。鈴羽も娘として甘えることには抵抗があるようだ。気を遣っているというほどでもないが、自立しようとしているといった感じだ。
まぁ、鈴羽の巫女姿を見たいダルの説得もあったようだが。
「そうそう。大事なことを忘れてました」
と、由季さんが切り出す。
「大事な事?」
「新年、あけましておめでとうございます」
「あ、そっか。昨日までコミマだったから、まだ年明けたって気がしないんだよね」
「それじゃあ私たちも改めて——」
「おめでとうございまーす‼」
真帆だけが小さな声で、『A happy new year!』と言っていたが。
「それじゃあ、挨拶も済ませたところで、そろそろ向かおうか」
「いざ行かん!ミコミコ天国(パラダイス)へ!」
由季さんの前でもブレないダルだった。