STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
「気を遣わせてしまったわね」
もうすぐ神社に着く、というところで、真帆が突然切り出した。
「うん?」
「あの2人。わざわざ私に話しに来てくれたもの」
「…君が少しでも馴染めるように、と思ってな」
「ありがとう。この間、あなたのことを冷たいと言ったのは謝るわ」
「…気にしなくていいさ。俺も悪かった」
紅莉栖のノートパソコンのことは諦めきれていない様子だが、真帆もここでは口に出さなかった。
「ところで、ずっと気になっていたのだけれど…」
「どうした?」
「あなたって、ずいぶん女の子のお友達が多いのね」
「…………はい?」
「いえ。綯ちゃんはともかくとして、他の人はだいたい高校生か大学生でしょう?それもきれいな人ばっかり。あの中に、彼女がいたりするのかしら?」
「ぶっ!……な、何を⁉」
「紅莉栖ってね、なかなか友達ができない子だったのよ。それも異性ともなると、かなり壁を作っている感じだったわ。それなのに、交換留学中の短い期間にあなたは紅莉栖と仲良くなった。不器用そうに見えるけれど、あなたって実は女たらしだったりするのかなって…」
「そ、そそそ……そんなわけないだろ!」
紅莉栖は恋愛脳のスイーツ(笑)だったが、その先輩である真帆も同じなのだろうか。
「別に、俺は誰とも付き合っているわけじゃない。ここにいるみんなだって、まゆりのコスプレ仲間なんだ」
「まゆりさん……というと、あなたの幼馴染だったかしら?神社で巫女の格好をしているんだったわね」
「あ、ああ」
「幼馴染…か」
少し遠い目をする。その真帆の表情から、何を考えているのかは読み取れなかった。
正月の柳林神社は、さすがに神田明神ほどではないにせよ、予想よりもずっと賑わいを見せていた。
「あ、オカリンたちだニャ!おーい、オッカリーン!こっち。こっちだニャ!」
「あけましておめでとうございます、皆さん」
ルカ子の巫女姿が似合っているのは最早言うまでもない。一方のフェイリスはと言えば、ネコミミこそ装備しているものの、いつものメイド服とは違ってずいぶんシンプルに見える。だが、それもまた新鮮味があり、ファンの連中ならたまらないだろう。
「おめでとうなのニャ!」
ふたりの言葉を皮切りに、ダルや由季さんなど、一緒に来た連中も口々に新年の挨拶を交わす。
「ふぉぉ、フェイリスたん!フェイリスたんがミッコミコにしてくれるなんて、生きててヨカッター!」
「ありがとうニャン♪」
その少し後ろには、鈴羽が恥ずかしそうに佇んでいた。
「由季さんも来てくれたんだ」
「おめでとうございます。鈴羽さん」
「あ、ああ……あけましておめでとうございます」
鈴羽と言えば、ラフで身軽な服装ばかり着ているイメージだが、こういう姿も似合っている。ダルの遺伝子が入っているとは思えないな。由季さんと並ぶと、姉妹そのものだ。本当は母娘だが。
「妹属性の巫女さんキタコレ!それで『お注射の時間だよ、お兄ちゃん』っと言っておくれよマイシスター!」
興奮しているな…。それでもマイドーターと言わないあたり、妹という設定も忘れていないようだ。
「もう、そんなことばっかり言ってるから、母さんに誤解されるんだ!」
…鈴羽の方は忘れてしまっているらしい。
「まゆねえさんから聞いたんだよ。母さん、自分が父さんからあまり好かれてないと思い込んでる」
「なんでそうなるん?ボクは阿万音氏もフェイリスたんもるか氏も、おにゃのこはみんな平等に好きなのだぜ。鈴羽はさらに特別だお」
「だからそういうのがダメなんだよっ!母さんだけは特別でなきゃいけないだろ!るかにいさんは男だし。それに娘に向かって何言ってるのさ!」
「お、おい鈴羽っ!」
ヒートアップしてきて、声がだんだん大きくなっている。
「あの、ふたりともさっきから何を……?」
ほらみろ。由季さんに聞こえただろう。
俺としては、由季さんには早い段階で打ち明けてもいいと思っているのだが、鈴羽が反対するからこうして黙っているんだ。それなのにこの親子ときたら…。
「あ、ううん。なんでもないよ、かあ……由季さん。御神酒とおみくじもあるからどうかな?」
とはいえ、鈴羽の言うのももっともだ。このままでは鈴羽が生まれて来なくなる可能性が出てきそうだ。
「それにしても、るかくんは相変わらず美人さんね」
「いえ、そんな……」
「ほんとほんと。これで男の子だなんて、信じらんないよね」
「ええっ⁉嘘……あなた、男の子なの?」
「あ、はい…」
「嘘でしょ……日本って、やっぱり進んでるのね……」
真帆が信じられないものを見た、という顔で驚いている。まぁ無理もないが。