STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

77 / 303
(19)

「そんなことないよ」

 

天王寺の声を遮るように入って来たのは鈴羽と——。

 

「すみません…」

 

かがり…。

 

「鈴羽、話を聞いてたのか?」

 

鈴羽は頷いた。

 

「たとえば、あたしとかがりをバイトとしてここに置いてもらえれば、目を離さなくてもよくなる」

 

確かにそれならば、ラボからも近い上に、ラボにいるよりも安全かもしれない。綯を守るついで、と考えてもらえばいいわけで。

 

「おめえらがこのビルから出てく方が手っ取り早いな。そしたら俺や綯が巻き込まれることもなくなる」

 

鈴羽が来て、精神的に余裕が出来た。

 

今の天王寺の言葉は、このβ世界線において、SERNが俺たちに目を付けていないという証拠だ。厄介ごとに巻き込まれたくないという心の表れだろう。

 

「あなたたち親子は、昨日襲って来た連中の顔を見ている。それが何を意味するか、分からないわけじゃないはず」

 

「………」

 

鈴羽は鋭く低い声でそう返した。

 

「あたしは戦闘の経験もある。銃も扱える。昨日、あなたも見てたはず。だから、それなりに役に立てる」

 

「………」

 

天王寺は頭をペチペチと叩きながら、しばらく考えていたが——。

 

「お父さん」

 

ずっとテレビを見ていた綯が、不意に声をかけてきた。

 

「私、よくわかんないけど、昨日みたいなことは、怖いから、もう、ヤダな」

 

「綯…」

 

「お父さんが守ってくれて、すごく嬉しかったけど、お父さんが私を守るために無茶してケガするかもって想像したら、もっと怖くなった。鈴羽おねーちゃんはすごく強いし、昨日も私のことかばってくれてたよ」

 

綯のやつ、今の俺たちの話を理解してたのか?

 

「私は、おねえちゃんたちと一緒がいいな」

 

綯の縋るような瞳を向けられた天王寺は、困ったように頭を摩ると、ぶっきらぼうに言った。

 

「言っとくが、バイト代はふたりでひとり分だからな」

 

「…渋いね」

 

「文句があるならいいんだぜ?」

 

「い、いえ。ありがとうございます。店長さん」

 

「お父さん!」

 

綯が父親に抱き着いた。

 

良かった。天王寺がついているなら、少しはかがりの身の安全も確保できるだろう。

 

「ありがとうございます」

 

「別に、お前のためじゃねえ。綯のためだ」

 

さっそく、鈴羽とかがりに嬉しそうに絡みついている綯。

 

「まぁ、こっちはそういうことにしてやっからよ。岡部、おめえは連中が何者なのか突き止めろ。じゃねえと、対策も打ちようがねえぞ。分かったな」

 

「分かりました」

 

とは答えたものの、正直なところ、手掛かりは何もないと言っていい。

 

「そうだ。そういやあの連中、妙な番号を口走ってやがったな」

 

「妙な番号?」

 

「確か……そう、K6205とかなんとか」

 

「ケー・シックス・ツー・ゼロ・ファイフ?」

 

最後の5が、ファイブではなくファイフと言った。

 

「何かの暗号ですか?」

 

「ファイブじゃなくファイフ。これはフォネティックコードつって、軍隊用語だ」

 

「軍隊…」

 

「それも、西側のな」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。