STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
「そんなことないよ」
天王寺の声を遮るように入って来たのは鈴羽と——。
「すみません…」
かがり…。
「鈴羽、話を聞いてたのか?」
鈴羽は頷いた。
「たとえば、あたしとかがりをバイトとしてここに置いてもらえれば、目を離さなくてもよくなる」
確かにそれならば、ラボからも近い上に、ラボにいるよりも安全かもしれない。綯を守るついで、と考えてもらえばいいわけで。
「おめえらがこのビルから出てく方が手っ取り早いな。そしたら俺や綯が巻き込まれることもなくなる」
鈴羽が来て、精神的に余裕が出来た。
今の天王寺の言葉は、このβ世界線において、SERNが俺たちに目を付けていないという証拠だ。厄介ごとに巻き込まれたくないという心の表れだろう。
「あなたたち親子は、昨日襲って来た連中の顔を見ている。それが何を意味するか、分からないわけじゃないはず」
「………」
鈴羽は鋭く低い声でそう返した。
「あたしは戦闘の経験もある。銃も扱える。昨日、あなたも見てたはず。だから、それなりに役に立てる」
「………」
天王寺は頭をペチペチと叩きながら、しばらく考えていたが——。
「お父さん」
ずっとテレビを見ていた綯が、不意に声をかけてきた。
「私、よくわかんないけど、昨日みたいなことは、怖いから、もう、ヤダな」
「綯…」
「お父さんが守ってくれて、すごく嬉しかったけど、お父さんが私を守るために無茶してケガするかもって想像したら、もっと怖くなった。鈴羽おねーちゃんはすごく強いし、昨日も私のことかばってくれてたよ」
綯のやつ、今の俺たちの話を理解してたのか?
「私は、おねえちゃんたちと一緒がいいな」
綯の縋るような瞳を向けられた天王寺は、困ったように頭を摩ると、ぶっきらぼうに言った。
「言っとくが、バイト代はふたりでひとり分だからな」
「…渋いね」
「文句があるならいいんだぜ?」
「い、いえ。ありがとうございます。店長さん」
「お父さん!」
綯が父親に抱き着いた。
良かった。天王寺がついているなら、少しはかがりの身の安全も確保できるだろう。
「ありがとうございます」
「別に、お前のためじゃねえ。綯のためだ」
さっそく、鈴羽とかがりに嬉しそうに絡みついている綯。
「まぁ、こっちはそういうことにしてやっからよ。岡部、おめえは連中が何者なのか突き止めろ。じゃねえと、対策も打ちようがねえぞ。分かったな」
「分かりました」
とは答えたものの、正直なところ、手掛かりは何もないと言っていい。
「そうだ。そういやあの連中、妙な番号を口走ってやがったな」
「妙な番号?」
「確か……そう、K6205とかなんとか」
「ケー・シックス・ツー・ゼロ・ファイフ?」
最後の5が、ファイブではなくファイフと言った。
「何かの暗号ですか?」
「ファイブじゃなくファイフ。これはフォネティックコードつって、軍隊用語だ」
「軍隊…」
「それも、西側のな」