STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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「あ、やっと来たニャン、オカリン」

 

ブラウン管工房からラボに戻ると、昨日の主だった面々が集まっていた。鈴羽とかがりは柳林神社へと戻った。バイトは明日から、ということになったのだ。

 

真帆はこの場にはいない。真帆だけは『Amadeus』が不調らしく、手が離せないと連絡があった。昨日、突然アプリが落ちた事に関係しているのだろう。

 

「みんな、あんなことがあったばかりなのに、よく集まってくれたな」

 

「その、あんなことが起きた理由を聞きに来たんですよ」

 

「それに、場所を移すより、同じ場所の方が安全だって橋田さんが…」

 

フブキとカエデがそう答えた。

 

「昨日の今日で警戒してるところに来るバカはいないっしょ。それもこんな真昼間から」

 

「バラバラでいるより、みんなでいる方が安全です」

 

ルカ子は手に妖刀・五月雨を持っていた。護身用……だろうか?

 

「とにかく皆さん、無事でよかったです」

 

「由季さん、ありがとう。わざわざ来てくれて」

 

「ううん、まゆりちゃん。私も昨日の夜、話を聞いて心配だったから」

 

フブキとカエデは買い出し中であの場には居合わせなかった。そして由季さんはバイトでそもそもパーティには参加しなかった。

 

「でも、信じられないです。この日本でそんな恐ろしいことがあるなんて……」

 

「日本じゃなくても、あんな経験はなかなかできないお……」

 

それはそうだ。普通に生きている人間が遭遇する事はまずない。それが普通なんだ。

 

「あの、岡部さんが来て早々で悪いんですが、私この後バイトがあって…」

 

「ああ、気にしないでくれ」

 

わざわざ顔を見るためだけに来てくれたのだろう。

 

「皆さんの顔が見れて安心しました。でも、まだ油断は禁物なので、気を付けてくださ——きゃっ!」

 

「危なっ!」

 

すれ違いざま、転びそうになった由季さんの腕を慌てて掴んだ。

 

「痛っ……」

 

「あ、悪い…」

 

「あ、いえ。ちょうどここ、昨日駅で転んで怪我しちゃって……」

 

由季さんは俺が掴んだ腕を摩りながら、恥ずかしそうに言った。

 

「その時も、何もないところで転んじゃったんですよ。ほんと、ドジで嫌になっちゃいます」

 

「気を付けてね、由季さん」

 

「うん、ありがとう。それじゃあ皆さんもお気をつけて」

 

軽快な足音で去って行く。

 

俺はその背中をじっと見つめていた。

 

左腕……。

 

俺が掴んだのは左腕だった。そして昨日、鈴羽が蹴ったのも左腕。

 

「どしたん、オカリン?」

 

「いや……」

 

まさか、な。

 

「それじゃあさっそくだけど、オカリンさん。昨日のあの出来事について説明してもらってもいいですか?」

 

フブキはまだ、まゆりやルカ子に比べると、表情に余裕が見られる。

 

「そうだな。じゃあまず……」

 

昨日ダルと話し合った通りに俺は説明した。

 

この場でタイムマシンのことを知っているのは俺、ダル、フェイリス、そしてまゆりだけ。それについては話すべきではない。というか話したところで信じてはもらえないだろう。この場にはいないが、真帆にも決して話せない。

 

ダルとの話し合いの中で、彼女についてが最も懸案事項だったのだ。彼女は紅莉栖がタイムマシンの理論を完成させていたことを知れば、間違いなく興味を持つ。だからそれについては隠した上で、ストーリーを作りあげた。

 

「つまり、かがりさんは記憶を失っている間に、何らかの犯罪に巻き込まれたかもしれないってこと?」

 

「おそらくな…」

 

「だったら、どうして警察に言わないんですか…?」

 

これが最も苦しい言い訳になる。

 

「彼女が怯えるんだ。警察の事を…な。もしかすると、警察もその犯罪に関係しているのかもしれない」

 

警察が犯罪を、というのはない話ではない。そういう事例も訊いた事があるにはある。だが。

 

「うー、なんかすっきりしないなぁ」

 

それもそうだろう。要するに、何も分かっていないと言っているのと同じだからだ。

 

「昨日の一件でわかるのは、襲って来た人たちの狙いは、かがりさんだけで、僕たちに手を出すことはないだろうということですよね…」

 

ルカ子には何も話していないが、なかなかいい助け舟を出してくれた。

 

「どうしてそう思うの?」

 

カエデが質問する。

 

「あの状況なら、僕らのうつ誰かを人質に取ることだって出来たはずなんです。それをしなかったということは、あの人たちはあまり事を大きくしたくなかったんだと思います」

 

ルカ子の話し方は、何かを決意したようなように勇ましく思えた。昨日の一件から、何かあったのだろうか。

 

すかさず俺も追随する。

 

「それについては、俺とダルも同じ結論になった。だから、俺たちさえ大人しくしていれば、きっと安全なはずだ」

 

それは嘘だ。全員が口封じのために狙われる可能性だってある。ただ、皆を安心させてこの場をおさめるためには、そう言うしかなかった。

 

「だから、中瀬さんや来嶋さんは、しばらくここに来ない方がいい」

 

「でも、かがりさんはどうするんですか……?」

 

「それはもう手を打ってある。頼れるボディガードをつけた」

 

「ボディガード?」

 

「昨日、あの連中を撃退した心強いふたりをな」

 

「スズさんと店長さんだね」

 

「ああ、あのムキムキおじさんだね!」

 

「でも……それだとまたいつ襲われるかもしれないって、怯え続けることになりませんか?」

 

カエデがすごく心配してくれているのが分かる。自分が怯えているというより、かがりやまゆりの事を心配してくれているのだろう。

 

「こっちはこっちで、探偵辺りを雇って、かがりが誰に狙われているのか調べるつもりだ。ある程度情報が揃えば、そのタイミングで警察にも話すつもりだ」

 

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