STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
2011年1月3日(月)
俺は保険をかける意味を込めて、ブラウン管工房を訪れた。
「いいか?おめえの頼みを聞いてやるわけじゃねぇ。それだけは忘れるんじゃねえぞ」
「感謝します」
かがりに何かあったときは、守ってくれるよう協力を仰いだのだ。そのためには再び天王寺がラウンダーである事を本人に向かって突き付ける必要があった。かがりが何か大きな事件に巻き込まれていて、何者かに狙われている、ということもだ。しかし、この話自体も二度目のため、比較的スムーズに事を運ぶことができた。
タイムマシンのことについては何も話さなかった。話してしまえば、再びα世界線に飛ばされてしまうからな。
「おい、岡部。おめえらいったい、何に関わってやがる?」
「それは——」
言葉に詰まる。
「話せねぇってか。頼み事するだけして、随分と虫のいい話だな」
「すみません」
「だが、それでいい。情報ってのは最後の切り札だ。そこでぺらぺら喋っちまうようなら、俺は降りてたぜ」
「…………」
「ま、せいぜい気を付けるんだな」
「ありがとうございます」
「わかったわかった。そうやって畏まんな!どうにもやりにくてしょうがねえ」
俺は深く頭を下げて、ブラウン管工房を後にした。
こことは別に、萌郁にも連絡をしておいたのだ。この世界線でも、かがりの捜索以来を萌郁に出していたことは聞いていた。だから引き続き頼む、と連絡しただけだ。かがりのこれまでの動向を調べてくれればそれでいい。
これで、万が一何かが起きたときのために、俺が出来る対策は全て取った。
α世界線で紅莉栖に言われたように、シュタインズゲートを目指すなんて、俺には到底口に出来ない。到達できるとも思っていない。
だが——。
「せめて、かがりのことくらいは、俺がなんとかしたい」
そう思えるようになっただけでも、少しは前進できたのかもしれない。
ラボに戻ると、ルカ子が来ていた。今日も可憐だ。他の誰よりも女の子らしい。
だが、その表情は深刻そうで、俺に話があるとのことだった。
「…実は、かがりさんの記憶のことで、気になる事があって」
「かがりの?」
「あ……とは言っても、これが記憶を取り戻すことに繋がるかどうかは、分からないんですけど…」
どうにもルカ子は自信がなさそうだ。常に申し訳なさそうにしているし、怯えているような感じだ。まゆりとふたりのときは、もっと気楽に話しているんだが。俺が気を遣わせてしまっているんだろう。
「昨夜、テレビで記憶の研究についての特集をやっていて……アメリカの大学で行われているものだったんですけど……」
まさかヴィクトルコンドリア大学…なわけないか。
「それを見ていたかがりさんが、まるでその学校を知っているような口ぶりだったんです」
「記憶の研究、か。ちなみにどこの大学だったんだ?」
「えっと…難しい名前の大学で……たしか、ビクトル・コンドル……?」
そのまさかだった。
「ヴィクトルコンドリア大学か⁉」
「あ、そうです!それです!」
かがりがヴィクトルコンドリア大学を知ってる?
もしかして、かがりがそこに通っていた?だが、日本で行方不明になった子供が、そんな一流の大学に通うなど考えられない。俺としては、かがりはどこかで軟禁されていたのではないかと疑っているわけだし。
「どう、でしょう?何か手掛かりになりそうでしょうか…?」
「さすがに、それだけじゃなんとも言えないが…」
「そう、ですか……」
ああクソっ!そんなにガックリと肩を落とすな。罪悪感がすごい。
「だ、だが、手掛かりにならないというわけじゃないぞ!」
「ほ、本当ですかっ⁉」
途端に目をキラキラ輝かせる。子犬のような奴だ。
「あ、ああ…確かめてみる必要はあるな…」