STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
「なあ、比屋定さん。『Amadeus』は凍結されたと言っていたが、アップロードされた“紅莉栖”の記憶データって、まだ存在するのか?」
「え?ええ。たぶん。破棄はされていないはずだけど」
「それって、どれだけの人間がアクセスできるんだ?」
「ごく限られた人間だけよ。どこにも公表はしていなかったから。私やレスキネン教授、それと助手が何人か。それと……紅莉栖」
「ちなみに…その記憶データを、人間の脳に移植することって、可能だったりするよな?」
「…はぁ?」
前の世界線で、真帆かレスキネン教授が、セミナーでそんなようなことを言っていた気がする。
それと、俺は自分の体験としてもそれを知っている。人の記憶をデータ化し、時間を跳び越えさせた上で、同じ人間の脳に移植し、思い出させるというマシンの存在を。
——記憶の書き戻し。
この世界線ではその会話はなかったことになっているかもしれないが、俺はセミナー後の懇親会で、真帆ともその話をしている。パルスを流すことで、トップダウン記憶検索信号を走らせ、思い出させる。
紅莉栖がまとめた理論だ。
「いったい、何を……」
俺の想像は、確信に変わっていた。
「マイスプーンを持ち歩いていたのは、紅莉栖なんだ…」
「え…?」
「大学で比屋定さんのことを先輩と呼んでいたのも紅莉栖だけ。『栗悟飯とカメハメ波』は紅莉栖が@ちゃんねるで使っていたコテハンだ。知っているのは本人以外だと、俺くらいのはずだ。紅莉栖なら、ヴィクトルコンドリア大学の研究室のことも知っている。マウス実験のことも知っている。11のタイムマシン理論についても知ってる」
「岡部……さん?どういう、こと?」
かがりが不安そうに尋ねる。
「…何が、言いたいの?」
真帆は怪訝そうな目で。
「俺が思いついた、仮説……だ」
俺はもう一度、全員をぐるりと見回してから、かがりの顔を見つめた。
「かがり……もしかしたら、君の頭の中には、牧瀬紅莉栖の記憶が移植されているかもしれない」
「かがりの頭の中に、牧瀬紅莉栖の記憶が入ってる?」
その晩、ラボで俺は鈴羽にも同じ話をした。俺の話を聞いた鈴羽は意外にも冷静だった。
あの後も、かがりにはいろいろと聞いてみた。反応はまちまちで、知っていることもあれば、知らないこともあった。ただ、知っていることの中には、真帆と紅莉栖にしか知り得ない情報が含まれていた。結果、俺の考えは覆されることなく、逆に補強されることとなった。
かがりはやはり疲労が出て、天王寺の了承を得て、ルカ子と共に帰らせた。真帆は俺の仮説を全く受け入れようとはしなかったが、『Amadeus』の記憶データを移植できるかどうかについては検証してみると言って帰っていった。