STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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「あ、まゆりちゃん。時間」

 

「あ……ほんとだ。ねえオカリン。この後、かがりちゃんのこと、任せていいかな?これから、学校で進路についての説明会があるんだ~。まゆしぃたち、どうしても出なくちゃいけなくて」

 

「すみません……」

 

「謝るなって。心配しなくていいぞ。かがりはちゃんと、家まで送っていくから」

 

「ありがとうございます」

 

「それじゃあ、かがりちゃん。また明日ね」

 

「うん。ママ。また明日」

 

まゆりとルカ子を見送ると、部屋の中には俺とかがりのふたりになった。

 

ここ数日は、ブラウン管工房のバイトも少し見合わせてもらっている。とはいえ、何かあってはならないからと、昼間はなるべくここに来てもらうようにしていた。階下に天王寺と鈴羽がいる。それだけで心強くもある。

 

「んー」

 

不意かがりの視線を感じた。

 

「どうした?」

 

「んとね。改めて考えると、こうしてオカリンさんと話してるって考えると、不思議だなぁって」

 

「不思議?どうしてだ?」

 

「だって、私にとってのオカリンさんは、お話の中の人だったんだもん」

 

「お話の中……」

 

「うん。ダルおじさんやママから聞くお話の中の人」

 

そうか。鈴羽の話じゃ、俺は2025年に死ぬらしい。つまり、かがりがいた時代には俺はもう存在していないことになる。

 

「ママはね、いっつもオカリンさんの話をしてたよ。オカリンが、ママを助けてくれた。オカリンが、ママの彦星様なんだよって」

 

「あいつ……未来になってもそんなことを言っているのか」

 

まゆりに代わって今度は俺が恥ずかしがる番だった。

 

「それと、鈴羽おねーちゃんも、ずっとずっとオカリンさんを格好いいヒーローなんだって言ってたよ」

 

「す、鈴羽まで?」

 

2025年だと、俺は鈴羽に会っているはず。あいつが生まれるのは2017年のことだし。

 

「鳳凰院凶真って、オカリンさんのことでしょ?おねーちゃん。将来は鳳凰院凶真になるんだーって」

 

おそらくダルとまゆりの差し金だろう。鈴羽にタイムトラベルをさせるために、俺をヒーローか救世主として持ち上げ続けたのだ。

 

「だからね、私もずーっと気になってたんだ。ママやおねーちゃんがそんなに大切に思ってるオカリンさんって、どんな人なんだろ、って。みんなが話題にする、岡部倫太郎っていう人が、どんな人なんだろうって。もしかしたら、ちょっと憧れてたかも?」

 

「…からかうのはよしてくれ」

 

「あはは。オカリンさんったら、照れちゃってる」

 

すっかりかがりのペースだ。

 

「あ、んとね。でもそういう意味では、牧瀬紅莉栖って人もそうかな」

 

「紅莉栖が?」

 

「うん。牧瀬紅莉栖って人の名前も、ママやダルおじさんの口によく上ってたから。ずっと昔に亡くなっちゃたのに、そんなに影響のある人ってどんな人だろうって」

 

「その……まゆりは、紅莉栖の事をなんて?」

 

「……オカリンさんの、大切な人だって」

 

「…………」

 

大切な人。俺にとっては今さら否定しようのない事実だ。

 

けれど、ラボメンの皆にとっては違う。この世界線で、まゆりは紅莉栖とは会っていない。俺自身も、今までなるべく紅莉栖のことには触れないようにしていたつもりだった。

 

だというのに、そんな未来になってまでも、俺はまゆりにそんな思いを抱かせているのか。

 

「そうだ。今から買い物に行くんだが、よかったら一緒に来ないか?」

 

「買い物?」

 

「ああ、まだこの辺りの事、よく知らないだろ?」

 

「……いいの?」

 

「もちろんだ」

 

必要以上に出かけるのは控えるべきだろうが、今のかがりには少し気分転換をさせたほうがいいかもしれない。まだ昼間だし、人通りの多いところを選んで歩けば大丈夫だろう。

 

「やった。実はね、いろいろ欲しいものもあったんだ」

 

「…欲しいもの?」

 

「うん。日用品とか、いろいろね」

 

「ルカ子が用意してくれてるんじゃないのか?」

 

「そうだけど、でもほら。るかくんだって男の子でしょ?下着とか、そういうの。頼んじゃうのも悪いなぁって」

 

「た、確かにな…」

 

あいつなら、女性用の下着売り場にいても問題ないだろうが、ルカ子の精神が持たない。極度の恥ずかしがり屋だからな。

 

「……それじゃあ、行くか」

 

「うんっ」

 

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