STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
「やっぱりすごいよね!」
街へ出ると、かがりはキラキラと目を輝かせて周りを見回していた。
「人も多いし、お店もたくさんあるし、ここがあの秋葉原と同じ街だとは思えないな」
「未来の秋葉原はどんなところなんだ?」
「ひと言でいうと、んとね……そうだなぁ…瓦礫の山、かな。まぁ、秋葉原に限った事じゃないんだけどね」
近い将来、第三次世界大戦が起こると鈴羽が言っていた。
それもつまるところ、俺のせい、ということなんだろう。俺が鈴羽の頼みを聞き入れ、もう一度、去年の7月28日に戻れば、それで戦争が起こらない世界線になるんだろうか?
——紅莉栖にも言われたことだ。
シュタインズゲートを目指せ。
収束に、抗うことなどできない。その想いは今でも変わっていない。
「あ、オカリンさん。もしかして自分のせいだ、なんて思っちゃってる?」
内心を言い当てられてドキリとした。
「その反応は図星だね。でも、その考えはダメ。バッテンなのだ。私の知る限り、ママもダルおじさんも、誰もオカリンさんを責めてなんていなかったよ。だって、ママたちはみんな信じてたから。オカリンさんならいつかやってくれるって」
俺なら——。
「んとね…その、シュタインズゲート、だっけ?そこに導いてくれるって」
俺にそんなことが出来るのだろうか。
悩み続けて逃げ続けている俺に、それでも期待を寄せてくれるみんな。その期待に応えられない自分が嫌になる。
「あーごめんね。別に追い込むつもりとかじゃなかったんだけど…」
「え、いや…」
「そんな顔しないで。今日はそういうのナシ。せっかく外に出たんだから、もっと楽しい話しよ、ね?」
「あ、ああ…」
今のかがりの頭の中にあるのは、辛い戦争の記憶だけのはずだ。少なくとも、椎名かがりとしての記憶はそれだけ。なのに、こうして俺の事まで気遣ってくれている。血は繋がっていなくても、かがりはやはり、まゆりの子なんだ。
でも、楽しい話と言われても、何を話せばいいのか…。
そんなにホイホイと話題を振って話を盛り上げる事ができるのなら、俺はあの地獄の合コンでも苦労しなかったはずだ。最初こそ、気を遣って呼んでくれていたが、最近は数合わせだとしても呼ばれなくなった。
ああいう陽キャの雰囲気、というものが俺には無理だった。
「ねえオカリンさん。ママの若い頃の話を聞きたいな」
困っていたところで、かがりが話題を振ってくれた。
「まゆりの?」
「あ、若いって言っても、今も若いんだけど……でも、今よりも前の……例えば、人質の話、とか」
「ま、まゆりはそんなことまで君に話しているのか⁉」
「うん。私ね、オカリンさんの話をする時のママの顔がだーいすきなの。とっても大切な宝箱をそーっと開けるみたいな、そんな顔っていうのかな。その顔と、その時の声と……それを思い出すだけで、すっごくあったかい気持ちになれるんだ」
きっと、かがりにとってのまゆりは、暗く澱んだ世界の中における、星のようなものだったのだろう。夜空に一番明るく輝く…。
「別に、たいした話じゃないさ。大好きなお婆さんが亡くなって、ずっと悲しんでたあいつが、今にも消えてしまいそうで……。それで口から出た痛々しい台詞だ」
「お前は俺の人質だ——って?」
第三者の口から聞かされると、恥ずかしさで隠れたくなる。
「若かったんだ。若さゆえの過ち、というやつさ」
「それでも、その言葉はママを救ってくれたんだよね?」
「どうだろうな……」
そうなのだとしたら、鳳凰院凶真が生まれた意味もあるというものだ。だが、もしもその言葉のせいで、俺がずっと——未来になってもずっと、まゆりを束縛しているのだとしたら……。
「オカリンさん…?」
かがりの顔は、やはり紅莉栖に似ている。
まゆりが彼女を娘として迎え入れたのは、幼いかがりに紅莉栖の面影を見たから、だったりするのだろうか。俺の言葉がまゆりを縛り付け、俺が引きずり続けた紅莉栖への想いを、まゆりにまで背負わせてしまったのかもしれない。
「そんなことより腹が減らないか?何か食べにでも行こう」
「え、あ……うん」
誤魔化し紛れに歩き出すと、かがりも戸惑いながらついてきた。
「なにか食べたいものはあるか?」
「んとね……私はなんでもいいかなぁ」
「そういうのが一番困るんだ」
「だって、この時代の食べ物って何でも美味しいんだもん。ビックリするくらい」
「未来じゃ何を食べていたんだ?」
「うーん。お芋とか、そういうのばっかりだったかな。あ、でも、ママが毎日違う味付けをしてくれてたから」
「……まゆりが?」
「うん!」
「まゆりの料理は……その、美味しかったのか?」
「うんっ!」
人間とは成長する生き物らしい。
まゆりは最近、由季さんにいろいろ教えてもらってるからな。その教えが生きたのかもしれない。
「だから私はなんでもいいよ」