STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~ 作:明治アル蜜柑
それからいろいろと店を回ってみたが、どこも昼時でいっぱいだった。結局、ラボで食べる事になり、俺はコンビニで大量にカップ麺を買い込んだ。
かがりたっての希望だったのだ。未来ではカップ麺はなかなか手に入らず、ダルが食べたいと連呼していたようだ。それでかがりも食べてみたいとのことだった。陸橋のところで、少し休憩がてら買って来たものをかがりに見せていた。
「この中の、どれを食べてもいいの?」
袋を覗き込んで、嬉しそうに尋ねるかがり。
「ああ、もちろん。どれでも好きなだけ食べていいぞ?」
「ほんとー⁉うーん。じゃあこの塩味のにしよっかなぁ」
ころころと表情を変えるかがりはまるで子供のようだった。
身体は大人になってしまっているが、記憶は10歳の頃で途切れてしまっているのだ。精神が身体に追い付いていないのも頷ける。スキンシップもかなり頻繁にあるし、ルカ子は緊張しっぱなしかもしれないな。そうに言っている俺も、恋愛経験などないから、偉そうなことは言えないが。
「そういえば、さっき他にも何か買ってたみたいだったけど……?」
「ああ。これだよ」
コンビニ袋の中から、プラスチック製のフォークを取り出した。
「これって…」
「フォークだよ。まゆりとルカ子から、箸を使うのがあまり得意じゃないと聞いていたからな。自分専用のものにして、ラボに置いておけばいい」
柄の先端にうさぎの顔が引っ付いている、少し——というかかなり子供っぽいものだが。
「……いいの?もらっちゃって」
「そんな大したものじゃないさ」
「やった!ありがとう!あ、これ先っぽにうさぎさんがついてる!かわい~!」
うさぎも気に入ってもらえたようだ。
「えっへへ~。私専用のフォーク。私の物、これでふたつ目だ~」
もうひとつは、きっとまゆりがくれたうーぱのキーホルダーだろう。
「でも、なんでかな?私、これ、ずっと欲しかったような気がする」
「…うん?」
フォーク。そういえば——。
「もしかして、これも紅莉栖さんの記憶なのかな?」
確かに紅莉栖は、マイフォークを欲しがっていた。すっかり忘れていたが、もしかすると紅莉栖の記憶を刺激してしまったのかもしれない。
「さぁ…どうだろうな」
紅莉栖の記憶を思い出すのは、かがりに大きな負担がかかる。あまり得策ではない。
「ねえオカリンさん。オカリンさんは、紅莉栖さんのこと、好きだったんでしょ?」
「な——げほっ、げほっ!」
予想外の方向から飛んできた発現に、思いっきり咽てしまった。
「だ、大丈夫?」
「い、いきなりなんでそうなる…」
「だって、大切な人っていうのは、そういうことでしょ?」
「…………」
「で、どうだったの?好きだったの?」
まさに興味津々、といった様子だ。こういうところは年相応だな。
「ま、まぁ…あいつとの出会いが俺の人生を大きく変えたのは確かだな」
「あー誤魔化した~。ずるーい!」
俺の誤魔化しに気づいて、かがりは怒った顔を見せる。かと思えば、またすぐに表情が変わった。
「でも、人生を変えるほどの大切な人…かぁ。なんか憧れるかも」
文字通り、未来も過去も、全てが大きく変わってしまったわけだが。
「ね、オカリンさんから見て、牧瀬紅莉栖さんってどんな人だったの?」
「……気になるか?」
「自分の頭の中にある記憶の持ち主のこと、もっと知りたいよ。知識じゃなくて、人としての部分」
「…………」
知りたい、と思うのは当然だ。顔も名前も知らない人ではなく、俺がよく知っている人物なのだから。
「あいつは…とにかく好奇心の強いやつだったよ」
「ふむふむ」
「そのうえ頑固で、自分が正しいと思ったことは誰に何を言われても決して曲げる事は無かった」
「そうなんだ」
「不遜で強がりで、そのくせ寂しがり屋で——」
頭の中で、紅莉栖と交わした会話や出来事が次々と蘇ってくる。そういえば、ここでこうして話していたこともあった。それも今では全て、無かったことだが。
「それに怒ると怖かった」
「怖い?どんなふうに?」
「開頭して海馬に電極ぶっ刺す!……なんて物騒な事を言われたりしたよ」
「ふぇ~」
感嘆の声を上げると、かがりは何を思ったのか、小走りに数歩先まで進み、くるりと振り返った。
そして——。
「そんなこと言ってると、開頭して海馬に電極ぶっ刺すわよ!」
「っ!」
紅莉栖——。
「なーんて、こんな感じ?」
「…………」