STEINS; GATE ~抗い続けた者たちの執念のエピグラフ~   作:明治アル蜜柑

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「ルカ子。悪いが、かがりのことを頼む」

 

「はい!」

 

あの後、かがりはしばらく混乱していたものの、それでも次第に落ち着きを取り戻していった。やがて、もう大丈夫だという頃合いを見計らい、こうして柳林神社まで送って来た。

 

だが、やはり、このまま俺たちだけでかがりの面倒を見るのは無理があるんじゃないだろうか。病院に連れて行くべきなんじゃないだろうか。そうしないのは、俺のエゴなのではないか。

 

ここまで歩いてくる途中、ずっとグルグルと考えていた。

 

「今日は、まゆしぃも一緒に泊まることにするね」

 

「あ、ああ。そうしてもらえると助かる」

 

まゆりが傍にいてくれるのが、かがりにとっても最善だろう。こういうときは母親の偉大さが身に沁みる。

 

「なるべく、普段と同じように接してやってくれ」

 

「うん、わかった……」

 

何かあったらすぐに連絡を寄越すように告げ、俺はふたたびラボに戻った。

 

 

 

*****

 

 

 

「ごめんね。迷惑かけちゃって…」

 

るかの部屋で3人でゆっくりとしていると、かがりがぽつりと呟いた。

 

「そんな、迷惑なんかじゃないですよ!」

 

「そうだよ~、かがりちゃん。そんなこと言ったら、めっ、なのです!」

 

かがりは取り乱してしまったことを後悔していた。きっかけは岡部が買ってくれたフォークを目にしたことと、紅莉栖の真似をしたことだった。

 

「夕飯まではまだまだ時間がありますし、何かしましょうか?」

 

「わー、るかくんもゲームとかするんだね。ロボットのゲームだぁ」

 

部屋を見回したまゆりが、ロボットゲームが置いてあるのを見つけた。

 

「あ、それは岡部さんに教えてもらったもので……」

 

「オカリンさんに?」

 

かがりとしては意外だった。岡部がロボットに興味があるとは。

 

「オカリンって昔からロボットアニメとか好きだったんだ~。ダルくんみたいに、萌えの方には全く興味持ってくれないのが残念なのです」

 

まゆりと至は趣味が合う。まゆりは作ったコスプレ衣装の出来を見てもらいたいのだが、岡部に見せても適当な返事しか返ってこないのだ。その点、至は的確にアドバイスをくれるので、まゆりとしては助かっている。

 

あの夏から、岡部とるかの師弟関係はうやむやになってしまっているようだが、こうしてゲームの話をしているところを見て、まゆりは安心していた。

 

「ゲームかぁ。私もやってみたいなぁ」

 

2036年でも、ゲームをしたことは何度かある。研究の合間に至がかがり用にと作ってくれたのだ。とはいえ、プロの手で作られたものではないため、完成度はいまいち——というよりも、10歳の少女がやってよいものではなかった。鈴羽に顔の形が変わるほど殴られていたくらいだった。

 

「はい。じゃあ用意しま——」

 

と、そこでぐぅぅぅぅ、という地響きのような音が鳴った。

 

「うわぁ。すごい音だね~」

 

鳴ったのは、かがりのお腹だった。

 

「あ、あはは……結局お昼、食べれられなかったから……」

 

楽しみにしていたカップ麺。寝てしまったせいで食べられなかったのだ。

 

「まだ夕飯までは3時間くらいありますし、軽く何か食べますか?」

 

「カップ麺……」

 

「かがりちゃん、今カップ麺なんて食べて、晩御飯、食べられる?」

 

「うぅ……でも食べたいな。カップ麺…」

 

神社まで帰って来る際、岡部が買い込んだカップ麺を一緒に持ってきてくれていたのだ。大きな袋にはカップ麺が10個ほど入っている。ずいぶんと奮発してくれたものだ。

 

「それに、オカリンさんが、フォークも買ってくれたんだ…」

 

かがりは袋を漁ると、うさぎの顔がついたフォークを取り出した。

 

「わ~可愛いねぇ」

 

「えへへ~。でしょう?」

 

まゆりの反応にかがりもご満悦だ。

 

「まゆりちゃん。じゃあ僕はお湯を用意してくるね」

 

「うん。るかくん、お願いね」

 

るかは小走りで部屋から出て行った。

 

「かがりちゃん、よかったね」

 

「うん!オカリンさんにはまたお礼言っておかなきゃ」

 

フォークを宝物のように胸に抱えて喜ぶかがり。

 

その笑みが、少しイタズラっぽいものに変わり、まゆりをジロリと見た。

 

「かがりちゃん、どうしたの?」

 

「えへへ。今日はオカリンさんからママのこと、いろいろ聞いちゃったんだ」

 

「ふぇ?まゆしぃのこと?」

 

「人質の話とかいろいろ……えへへ」

 

途端、まゆりの顔が赤くなる。

 

「未来でもママはそのお話してくれてたけど、オカリンさん本人から聞くと、また違う感じがするね。ママ、オカリンさんに守られてるんだね~」

 

「ち、違うのです!まゆしぃはオカリンの人質なので……」

 

それから、るかがケトルを持って戻ってくるまでの間。ふたりはわーきゃーと騒ぎ続けた。

 

まゆりとしては当時の話を掘り返されると恥ずかしかったが、かがりが元気になってくれたことを喜んでいた。

 

 

 

 

 

「……ほんとうに2つも食べるんですか?」

 

るかが並んだ2つのカップ麺を見て、顔を青くしている。

 

塩と豚骨。それもかなり大きめのカップ麺だ。

 

「え?だっていっぱい食べても怒られないんでしょ?」

 

「い、いくつ食べてもいいんですけど……」

 

これまでの生活の中で、かがりがかなりの大食いであることは知っていた。この細い体のどこに入るのか、と不思議だったくらいだ。未来での話も聞いていて、今とは違ってあまり食べるものがなかったから、たくさん食べたいという気持ちも理解はできるのだが…。

 

「僕、カップ麺を1つ食べたらお腹いっぱいで…」

 

今2つも食べてしまったら、絶対に夕飯を食べられなくなってしまう。

 

「え~、るかくん男の子なんだから、いっぱい食べなきゃだめだよ」

 

まゆりも味方になってくれるかと思ったが、逆にたしなめられてしまった。

 

「まゆりちゃんも、食べるの?」

 

まゆりの前にも1つ、カップ麺が置かれている。まゆりはしょうゆ味だ。

 

「えへへ~。かがりちゃんのを見てると食べたくなったの。るかくんは食べないの?」

 

母娘なんだなぁと実感する。そういえばまゆりも、いつも何かを食べている。バナナとからあげを口いっぱいに頬張る姿が容易に目に浮かんだ。

 

「晩御飯、食べられなくなっちゃうから……」

 

顔を引きつらせながら、ふたりが食べるのを見守っていた。

 

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