セリさんのご好意で新たな戦力・クズモーが手持ちに加わった。シングルバトルで手持ちに入れられるのは3体までなので、これでようやく「パーティ」と呼べるようになった。3匹揃ってもいないのにジムリーダーに挑むという事がそもそも型破りなのだが、結果としてニドリーノとナゾノクサのポテンシャルを裏付ける事になったので良しとしよう。
それはさておき、そのクズモーだ。前評判通りの暴れん坊で、ジムバトル後にシャワーを浴びたというのに、もう一度着替えさせられる事になった。この意気を全力でバトルにぶつけてくれればいいのだが、それをしてもらうには僕がトレーナーとしてもう少し精進しなければならない。
「さて…と。君達はもう次のジムに向かうのかな?」
「えぇ、そのつもりです。ここからだと、次のジムは…」
「タモシティ、だね。5番道路を上って、十字路を西側に進むとタモの沼道がある。そこを超えると、2つ目のジム、タモジムがあるよ。」
「なるほど…ありがとうございます。」
「うん!タモの沼道、気を付けてね。ウワサによると、めっちゃ凶暴なポケモンが出るとか、出ないとか…?」
「…ありがとうございます。一応ゴールドスプレー用意しておきます。」
「はは、まぁあくまでもウワサだからね。実際にあそこで何かに襲われた!みたいな話は聞いた事ないし…。ちなみに私のウパーはあそこで捕まえたんだよねー。」
昔の僕なら迷いなく突っ込んでいた。沼道なんて、どくタイプポケモンの宝庫だと思うから。しかし、同時にどくタイプの天敵、じめんタイプの巣窟でもある。ここは大人しくセリの助言に従う事にした。賢くなったものだ。
時刻は夕方。セリは僕にクズモーを譲った後、ジムバトル午後の部を行う為にジムに戻り、僕とレンジアは勉強の為にセリの試合を観戦する事にした。
「…やっぱ凄いね、セリさん。上から見てると全然違うでしょ?」
「…そうだね。…後続のポケモン。スタジアムの性質。全部を武器にして戦ってるって感じがする。…ジムリーダーってやっぱ凄いな。」
「ふふっ…そんなセリさんに1発で勝っちゃうハイドも凄かったよ!」
「…はは、ありがとう。…ん、もうそろそろ、決着がつきそうだよ。」
結局この日セリに勝てたトレーナーは僕1人だった。見習いとは言ってはいたが、やはりジムリーダー。そんじょそこらのちょっと強いトレーナーなんてレベルの話ではない。センスと努力、そしてポケモン愛がないと、ここまでのトレーナーにはなれないと思う。
「ねぇ、ハイド。この後はもうタモシティに向かうの?」
「いや、今日はここに泊まってこの子達を休ませるよ。」
「そっか…じゃあ私はタモに向かうことにしようかな。…正直、今回の勝負は私の負け!先に勝ったのは私とはいえ、あのセリさんに一発勝利したハイドの方が凄かったです…!」
「はは…そっか、ありがと。…で、次は負けない為に先に行ってタモジム一発勝利を狙うってこと?」
「その通り!さすが幼馴染にしてライバル、話が早いね!…と、言うわけで私は一足お先にタモシティに行ってきます!」
「あぁ、行ってらっしゃい。最後にもう一回、セリさんに挨拶しときなよ。…あぁ、あとタモの沼道には凶暴なポケモンがいるって話だから、気を付け…」
「はいはい!分かってまーす!!」
絶対にちゃんと話を聞いていない。レンジアがもし僕の家に生まれていたら、絶対草むらに入ってはいけない令レベルの話じゃ済まないと時々思う。
…そういえば、レンジアの口から敗北宣言を聞いたのは初めてだっただろうか。僕は彼女のライバルとして、呆れと優越感、そして喜び。色んな感情が混じりあったまま、彼女の遠ざかっていく背中を眺めていた。
…さて、レンジアを見送り、次の目標が決まった。僕が今ここでやることは1つ。愛読誌『週刊イデアル地方のすすめ!』(2冊目)の購読である。フレンドリィショップで『イデすす』を購入した僕は、意気揚々とトレーナーズホテルに駆け込んだ。
風呂に水を張り、クズモーを放す。ニドリーノとナゾノクサとコミュニケーションを取らせている間に、僕はタモシティのジムリーダーの情報が書かれたページを捲った。
タモシティのジムリーダーであろう女性が一面を飾っている。こんなこと僕が言うことでは無いが、雑誌に載せる用の出で立ちでは無いと思った。長く茶色い髪がボサボサと乱れていて、ヨレたワンピースを着ている。卑屈全開の表情を浮かべた、絵に描いた様な「陰気な女性」と言った風貌だ。
※インタビュアー:タヒチによる注釈
今回のインタビューは聴き取りづらい部分がいくつかあり、内容の全てを記載する事が出来なかった箇所、意訳が多数ございます。読者の皆様にはご迷惑をおかけしますが、ご了承下さい。
『本日は宜しくお願いいたします。本日、インタビューを担当させて頂く、タヒチと申します。』
『…た…タモシティジムリーダー…ドっ…ドドナ…。』
『…はい、よろしくお願いいたします。』
『…ゎ…悪かったわね、こんな女がジムリーダーやってて。…ど…どうせ、ゴ…ゴーストタイプがお似合いだとでも思ってるんでしょう…?』
『い、いえそんなこと。』
『…わ、分かってるわよ…ゎ…私だって…みたいになれたらどれだけ楽か…』
『…では、質問に入らせて頂きます。ドドナ様のジムバトルにかける想いは…』
『…な…無いわよ、そんなもん…。…出来るからやってるだけ。』
『そ、そうですか。では、ドドナさんがジムバトルにおいて専門としている分野についてですが…』
『…じめんタイプよ…。…こ…こんな沼地に囲まれたジメジメした所にあるジムだもの…。…それ以外考えられる?』
『いえ、そうですか……。』
『…ゎ…悪かったわよ…。』
『いえ、そんな…。』
『…も……もういいかしら…。』
『あぁ、では…今期ご自身が期待しているポケモンと、チャレンジャーの皆様に一言お願いしてもよろしいでしょうか。』
『…カラナクシとマッギョ。…別に特段期待してるとかは無いけど…。…ぁ…あと…特に一言なんて用意してないわよ…相手になるなら皆引き摺り込んでやるってだけ…。』
『…なるほど、ありがとうございました。…それでは、また次回のインタビューでお会い致しましょう。インタビューは私、タヒチが担当致しました。』
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【週刊イデアル地方のすすめ!】
『タモシティ ジムリーダー・ドドナ』
「全てを引き摺り込む 沼の主」
専門タイプ:じめんタイプ
今期の戦法:新規登用のカラナクシ、マッギョに期待
チャレンジャーに一言:「引き摺り込む」
一口メモ:プラスルとかマイナンとかピチューとかに懐かれなくて悲しい。