『○月 △日』
青い空、白い雲、広い海、吹き抜ける潮風、羽ばたくキャモメ達の群れ…
あぁ、今日はなんて絶好の航海日和なんだろう!
先日ジムリーダーとして2連敗をしてしまった私…。
落ち込んでいても仕方が無いので、海に出ることにした。
水色髪のレンジアちゃんに、紫髪のハイドくん。
この2人は、アルカタウン出身の幼馴染だったらしい。
田舎ってイメージが強かったけど、あんな逸材がいたなんて…。アルカタウンも捨てたものじゃありません。
別に田舎者だって見くびってたわけじゃないけど!
レンジアちゃんのパーティは、オオタチ、マリル、ニドリーナ。パーティに入れてなかったけど、ヒノヤコマも連れていた。
オタチ、ルリリ、ヤヤコマ…この子達を育ててたことを考えると、もしかしたら元々はノーマルタイプ使いだった可能性があるかも?
それでもニドリーナを連れているってことは、きっと大事な思い出があるんだろうなぁ。
なんて言ったって…対するハイドくんのパーティはどくタイプ統一。そして、彼の相棒はニドリーノ…。
あぁ、そんなの考えられる事なんて1つじゃん!
良いねぇ、青春だねぇ…応援してるぜ、少年少女…。
そういえば、ハイドくんがまさかあのクズモーを手懐けるとは思ってなかった。
リバタリの海域で大量発生したことが問題になっていたクズモー。リバタリジムのジムリーダーとして、環境維持のために数匹捕獲して育成することにしたのだけど…どうも彼女だけは私に懐いてくれなかった。
それどころか、同じプールにいた子達を襲って傷付けてしまうから別のプールに1匹だけ隔離していたレベルで手がつけられなかった。
とはいえ、広い海からあの子達を連れ出したのは私だ。
「仲良く出来ないならバイバイ」なんてジムリーダーとして、いや。トレーナーとして、いや。一人の人間として絶対にしたくなかった。
そんな彼女を初対面で手懐けたハイドくん。どくタイプのプロフェッショナルになりたいと言っていた彼だけど…私は、ハイドくんならなれる気がしている。
世の中にはごく稀に、当人にも理解が出来ないが、特定のポケモンに好かれる素質を持つトレーナーが存在する。
きっと彼は、どくタイプに愛される素質を持っている。
こんなこと言っちゃいけないかもだけど、正直少し嫉妬した。羨ましいって思っちゃった。
それでも、あのクズモーに広い世界を、イデアルの頂点の景色を見せてあげられるトレーナーが現れた。
それが、本当に本当に、心の底から嬉しかったなぁ。
実はあの瞬間、目に涙が浮かんでたんだけど…彼女のみずでっぽうで顔も体もびしょびしょだったからバレなかった。
…くぅ……。
「…ハイドくーーん!!レンジアちゃーーん!!色々と応援してるよぉーーーー!!頑張れぇーーーー!!!!!」
私の叫びに呼応するかのように、キャモメの群れが鳴く。
「…!セリさん!あれを!!」
船乗りの一員が水平線を指さす。
海の彼方で、ホエルオーがその巨体を持ち上げ、ダイナミックなブリーチングをした。
遠目でも分かる程に水しぶきが立てられ、虹が架かった。
…あぁ、やっぱり今日は絶好の航海日和だった!
「よぅし…!みんな!あの虹に向かって、ヨーソロー!」