「…!?ナゾノクサ…!?」
「…ふん、バトル中に進化、ね。でも…もう瀕死寸前じゃない。大人しく倒れてた方がその子の為だったんじゃないの?」
「…はは、そんな事ないですよ。だってほら…『戦わせてくれ』って言ってる。…ナゾノクサ…じゃないね。クサイハナ。もう1回『ギガドレイン』!」
消耗してるはずの体力と気の抜けた表情とは裏腹に、彼の素早さは健在だった。流石に2発目のギガドレインをまともに食らったカラナクシは立っていることが出来ず、戦闘不能になった。
「…結構消耗してたはずだけど。まだ動けるみたいね。」
ドドナは瀕死のカラナクシを手持ちに戻し、次のポケモンを繰り出そうとしている。セリのように切り札を公開していないとなると、『イデすす』で公言していたマッギョが2匹目のポケモンになる。対してクサイハナは、カラナクシに放ったギガドレインの効果で体力は少し回復している。でんき・じめんタイプの技範囲なら、恐らくもう一撃くらいは受けられるだろう。もう少しくらいは場を掻き乱してくれるはずだ。ここはクサイハナを信じよう。
「…でも、まぁ…。この程度じゃまだ追い詰められた気にもならないわ。行って、マッギョ。」
想定通り、ドドナから繰り出された2匹目のポケモンはマッギョだ。
「…クサイハナ、ここはなるべくこっちが動きやすいように場を整えよう。『どくのこな』!」
カラナクシの放ったすなあらしにどくのこなが乗せられ、フィールド全体にばら撒かれる。これで相手の動きをある程度制限できるし、こっちの後続の環境も作れる。
「…ふん、それならフィールドにいなければいいだけ。…マッギョ、『あなをほる』。」
ドドナの指示で地中に潜るマッギョ。正直、このポケモンはそこまで素早さが高いわけじゃない。クサイハナのスピードなら足元を警戒していれば避けることだって可能だし、最悪、効果抜群じゃないじめんタイプの技を一撃食らっても…と思っていた自分が甘かった。
「…そのまま『とびはねる』。」
マッギョは地中からひこうタイプの『とびはねる』を繰り出してきた。不意の一撃にクサイハナは対応出来ず、効果バツグンの技をモロに食らってしまった。
「…っ…!クサイハナ……!!」
先程のカラナクシ戦での消耗もあり、流石のクサイハナもここで力尽きてしまった。致死ダメージを根性で耐え凌いでカラナクシを戦闘不能にし、『どくのこな』で後続の環境作りをしてくれた。そして何よりも、華々しい進化まで見せてくれた。タモの沼道での経験値が溜まっていたのだろう。本当によくやってくれた。
「…お疲れ様、クサイハナ。ゆっくり休んでくれ。」
「…確かにその子は良くやったわ。でも…数字で見たらお互い1匹ずつ倒れただけ。まだイーブンよ。」
「…えぇ。だからこそ、次で差をつけます。…さぁ、暴れてきて、ニドリーノ!!」
満を持してのニドリーノの登壇である。クサイハナが作ってくれたこのチャンス、是が非でも活かしたい。
「…なぁに、あんた。どくタイプ使い?…ゎ…私がじめんタイプ使いって分かっててソレ?」
「えぇ、もちろん分かってます。…だから、ドドナさんは僕にとって脅威でしかない。」
「…はぁ…だからさっきクサイハナに『どくのこな』を撒かせたわけね。まさかどくタイプで私に挑んでくるだなんて思ってなかったから気付かなかったわ。…全く…舐められてるのか、怖がられてんだか。」
「舐めても怖がってもないですよ。何が何でも、僕はドドナさんという大きな壁を乗り越えなきゃいけない。」
「…昨日私に挑んできた子もだけど…ホント眩しい目をするわね。…いいわ、泥水啜らせてあげる。」
お互いの2番手、ニドリーノとマッギョが睨み合う。恐らくマッギョは、順当にじめん技で仕掛けてくるはずだ。対して、ニドリーノからマッギョへの有効打としては「あなをほる」が最善手だろう。とはいえ、地中は流石に向こうのテリトリーだ。であれば、なるべく高威力で素早く決めるしかない。
「ニドリーノ、相手の動きに注意して『きあいだめ』。」
『あなをほる』を急所に当てる。恐らくこれが最適解だ。
「…マッギョ、『マッドショット』。」
「…今だ、ニドリーノ。『あなをほる』!」
マッギョの繰り出した技はじめんタイプの特殊技『マッドショット』。互いの距離を無視する飛び道具で仕掛けてきた。警戒していたニドリーノの対応は速かった。すぐに地中へ潜り、強力なカウンターをお見舞いできるはずだ。
「…ふん、じめんタイプに地中で勝負を挑むどくタイプがいるだなんて。…いいわ、勇気と無謀は違うってこと、教えてあげる。マッギョ、『あなをほる』。」
互いのポケモンが地中に潜る。トレーナーの我々からは、地中でどのような攻防が繰り広げられているのか分からない。音も遮られているから、指示も通りそうに無い。…待て、じゃあさっきドドナが出した『とびはねる』の指示はどうやって…?
「…マッギョ、上がって来なさい。」
ドドナの指示で、マッギョが地上に顔を出す。指示が聞こえなくてもお互いの心が通じあってるとでも言うのだろうか。…それにしても、弱っているのかどうかが分からない。表情が読みにくいポケモンである。次いでニドリーノも地上に上がってくる。見た感じ、消耗はしているが立っていられないという訳では無さそうだ。
「…なかなかやるわね、その子。どくタイプなのにじめんタイプのマッギョと地中でやりあって、沈んで無いなんて。」
「…はは、ありがとうございます。自慢のパートナーなんで。」
…とは言え、次の『あなをほる』で戦闘不能になってもおかしくは無い。ここは……
「…だから、ニドリーノ。少し休んでてくれ。」
一度ニドリーノを手持ちに戻す。
「そして…出てこい、クズモー!」
ここで殿を任せていたクズモーを投入した。少し消耗した(?)マッギョに効果抜群技を叩き込む。そしてあわよくば、最後の1匹も彼女に削って貰う。初のトレーナー戦だが…
「行けるね?クズモー。」
こちらが心配する隙も見せないほど、その瞳は闘志に満ち溢れている。さぁ、あのセリさんをも困らせたリバタリ魂、特と見せて頂こう。