紫陽花が夢を掴むまで   作:通俗的な丑の時参り

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【第1話 卒業は始まりの一歩】

トレーナーズスクールに通い続けて早6年。無事僕は卒業試験を合格することができ、晴れて1人前のポケモントレーナーとして認められた。6年間も相棒のニドリーノ1匹だけで授業を受けてて、良くもまぁ卒業出来たもんだとは自分でも思っている。

手持ちにニドリーノ1匹しかいないのには色々な理由がある。

1つ。昔母親から「勝手に草むらに入ってはいけない令」を出されて以来、僕は草むらに入って新しいポケモンを捕まえる事が出来なかった。プライベートだけならまだしも、学校の先生にわざわざ問い合わせまでして実践授業でも草むらに入れて貰えなかったのは如何なものかとも思う。しかしそれも、元々草むらを入るなという親の言いつけを2度も破った自分に落ち度がある。親を責めることは出来ない。

2つ。ある人との出会いがあった。トレーナーズスクールの講師でもあり、どくタイプのエキスパートであるヒドノという男との出会いだ。ヒドノ先生は、初めて僕が学校にニドラン♂を連れて行った際、「君達は…絶対にいいパートナーになれるよ。それどころか…ハイドくん。君はきっと、どくタイプのエキスパートにすらなれる。」と、目を輝かせていた。続けて彼は「僕は今までいろんなトレーナー、いろんなどくポケモンを見てきたが、君達のようなペアは初めてだ。僕の見立てでは…そうだな。捕まえて1週間そこらで、もうお互いの意思感情を理解する程度の仲にはなっているんだろう?」と。正直に言うと、そうだった。ニドラン♂は僕にとって初めてのパートナーだった。出会いこそ最悪だったが、数日家で過ごすだけでお互いの喜怒哀楽、簡単な意思の疎通くらいは出来るようになっていた。トレーナーはパートナーを持つと皆これくらいのコミュニケーションなんて造作もないものだと思っていたが、どうやらそうでも無いらしい。

「…どうだい、ハイドくん。君もこのイデアル地方で…果ては世界で通用する程のどくタイプのエキスパートになってみる気は無いかい?君なら絶対なれるはずだ。このヒドノが保証する。」

ヒドノ先生は普段は基本的に無気力な人間だ。しかし、ことどくタイプの話となると、その饒舌さは別人なんじゃないかと錯覚するほどのものになる。そしてそのヒドノ先生が、僕がどくタイプのエキスパートになれると言っている。どうせ上を目指すなら、より難しい事にチャレンジしてやろうじゃないか。

「…ヒドノ先生。僕、どくタイプのエキスパートになります。どくタイプでポケモンリーグを制覇して、どくタイプで貴方にも勝つ。」

「…アハハっ…!そう来なくっちゃ!いやぁ、やっぱり僕が見込んだ通りだ。君はイカれてる!」

おい、どういう事だそれは。話を持ち出したのはそっちじゃないか。

「僕より優秀なポケモントレーナーはゴマンといる。僕なんて世界はおろか、このイデアル地方でさえ大したことないトレーナーだ。でもそれは、パーティのタイプバランスを考えているトレーナーと戦ったらの話だ。自分で言うのもなんだけど、どくタイプに限ったら僕って結構凄いトレーナーなんだぜ?その僕にどくタイプだけで勝つ、か…いいね、楽しみにしてるよ。いつか見せてくれよ、君が出したどくタイプの答え。」

 

ということがあったりして、最終的に僕はトレーナーズスクールをニドリーノと2人(1人と1匹)で卒業することが出来た。そして僕が卒業試験に合格した日、もう1人合格した奴がいた。幼馴染であり、このニドリーノの捕獲の親。レンジアだ。

「おーい、ハイド!私達卒業だって!やった!やったよ!」

「…あぁ、おめでとう。今回は僕の勝ちだと思ってたけど、流石レンジアだね。引き分けかぁ…まぁ負けじゃないだけいっか。」

「ふふん…ライバルだからね、私たち。そう簡単に勝ちは譲らないよ。」

「…卒業、したね。僕達。…約束通り、これからどっちが早くポケモンリーグ制覇出来るかの勝負だよ。」

「もちろん。覚えてるよ。…約束してから6年。あれから私達も強くなった。ジムバッジだって、四天王だって、チャンピオンだって。1回もハイドに追い抜かれることなく完勝してあげる!だって…私は君のライバルなんだから!」

「…僕だって、簡単に負ける気は無いよ。それに、僕はヒドノ先生とも約束した。僕はどくタイプのエキスパートにもなって、ヒドノ先生にも勝つ。君達には絶対に負けない。」

「ふふっ、言うねぇ〜…。それじゃあ、私達の勝負、スタートだね。よーい………ドンっ!!」

 

かくして、戦いの火蓋は切って落とされた。レンジアとのポケモンリーグ制覇の勝負。ヒドノ先生とのどくタイプエキスパートの勝負。僕はどっちにも勝つ。

母親に卒業証書を渡し、草むらで入ってはいけない令も解かれた。これで僕は、旅するポケモントレーナーの一員だ。

 

6年振りの草むらに、始まりの一歩を踏み出した。

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