トレーナーズスクールを卒業し、ポケモンリーグ制覇を目指す上で先ずやること。それは、ジムバッジのゲットだ。このイデアル地方において1番最初に取得出来そうなのは、イデアル地方の西南に位置する「リバタリシティ」のリバタリジム。僕はリバタリジムを第1の目標として足を動かしていたのだが、これがかなりきつい。
まず、僕らの故郷・アルカタウンから1番道路を抜けてトレーナーズスクールのあるトーブタウンへ。トーブタウンから2番道路を道なりに西側に進み、イデアルの大都会・エルドラシティへ。エルドラシティから更に西側に歩いて3番道路を抜け、イデアル最大の霊園があるマグメルタウンへ。そしてマグメルタウンから4番道路に出て南に曲がり、5番道路を通ると、ここでようやくリバタリシティに辿り着く。
自宅から3つの街を経由して、ようやく辿り着く1つめのジム。この道中だけで、努力賞のバッジ1つくらい貰えないものだろうか。
そうは言いつつも、なんだかんだ6年振りの草むら。弱気な心とは裏腹に、体は意気揚々と草を掻き分け進んでいく。
1番道路も2番道路も、凶暴なポケモンはあまりいない。それが理由でここにトレーナーズスクールを建てたり、安全を求めた人が集まってエルドラシティのような都会へと発展したのだろう。
しかし、僕にとってそれには大きな弊害でもあった。1番道路も2番道路も、どくタイプのポケモンがなかなか存在しないのだ。出てくるのは大体オタチやコラッタを筆頭とした臆病なノーマルタイプのポケモンか、キャタピーのような毒を持たないむしタイプのポケモン。そういったことを考えると、やはりこのニドリーノは特殊な個体だったのだろう。
どくタイプのエキスパートを目指すなら、せめてもう1匹くらいはどくタイプのポケモンを捕まえておきたい所ではあるのだが…そんなことを考えつつ、2番道路を進んでいく。
エルドラシティに着く頃には、もう日が暮れていた。今日はここで安いトレーナーズホテルにでも泊まろうかと、街中をふらつく。イデアルのトレーナーズホテルは、トレーナーズスクールの卒業証を見せればある程度割引が効く。賞金しか稼ぎの無いひよっこトレーナー御用達であろう。
いやしかし、流石都会だ。アルカタウンと違って、少し歩くだけでポケモンセンターやフレンドリィショップに辿り着ける。サイコソーダでも買おうかとフレンドリィショップに入ると、雑誌棚に興味深い本があった。そのタイトルは、『週刊イデアル地方のすすめ!』。各担当記者がイデアル地方の観光名所や話題のグルメなどについて書き連ねている週刊誌なのだが、これにはどうやらポケモンジムの最新情報についても書かれているらしい。先月のジム制覇を達成したトレーナーや、今期のジムリーダーのパーティ、最近の戦法や特訓の内容についてのジムリーダーへのインタビューなどなど…。これからジムバッジを集めようという時に、こんな打って付けな雑誌と出会えるなんて僕は運がいい。僕は雑誌をウキウキでカゴに入れた。その後はサイコソーダとポケモンフーズ、モンスターボールとキズぐすりも10個ほどカゴに入れ、レジを通る時には予定よりもかなり財布が軽くなっていた。
トレーナーズホテルに到着して、シャワーを浴びる。この時も、早く『イデすす』を読みたいという欲で頭がいっぱいだった。やがてシャワーを浴びて、髪の毛が乾ききる前に僕は『イデすす』を開いていた。開いたページはもちろん、リバタリジムについてだ。
リバタリシティは、イデアルの水の都と呼ばれている街で、街の中心には噴水があり、港もイデアル最大級のものだ。そんなリバタリシティのジムは、やはりみずタイプ。僕はワクワクしながら、リバタリシティのジムリーダーのページを捲った。そこには、僕と歳のそう変わらない、青髪で褐色の少女が写っていた。記者インタビュー欄には、こう書かれていた。
『本日は宜しくお願いいたします。本日、インタビューを担当させて頂く、タヒチと申します。』
『はい!よろしくお願いいたします!リバタリシティのジムリーダーやってるセリって言います!』
『では、早速質問を。セリさんはジムリーダーに任命されてから間もなく、このようなインタビューを受けるのも初めてという事ですが、今のご心境はいかがでしょうか?』
『いや、もうほんと…緊張してます…!ちょっと前までトレーナーズスクールで学生だったのに、ジムリーダー任されちゃうなんて…!』
『いやいや、それはセリさんの実力があってこその任命ですから。』
『はい、ありがとうございます…!私普段、船乗り見習いもやってたんですけど…船乗りとジムリーダー、どっちも見習いになりましたので、どっちも頑張っていきます!』
『ははは、いい意気込みですね。バトルの方はどうですか?』
『そうですね…今のところ、チャレンジャーの人達には勝ったり、負けたり…半々くらいかもです!でも、勉強させて貰うこともいっぱいあるので、これからも頑張っていきたいです!!』
『なるほど。ちなみに、セリさんが今バトルで拘っている事とか、挑戦してみたいことってお聞きしてもよろしいでしょうか?』
『うーん…やっぱりウチはみずタイプのジムですし、くさタイプとでんきタイプの対策はしっかりしないとなって思ってます。でんきタイプにはじめんタイプのウパーを出してたんですけど、やっぱりくさタイプがキツくて…。でもこの前海に出た時、ひこうタイプのキャモメを捕まえたんです!この子を活躍させてあげたいなぁ…!』
『ふむふむ、なるほど…。貴重なご意見、ありがとうございました。これからのセリさんと、セリさんに挑戦されるトレーナーの方々のご健闘をお祈りしています。それではセリさん、これを読んでいるチャレンジャーの方に一言どうぞ!』
『はい!え、えっと…見習いジムリーダーだからって、簡単にバッジは渡しません!顔洗って出直してきなさい!』
『はは、それは勝った時に言う言葉ですよ。それとも勝利宣言ということでしょうか。それでは、また次回のインタビューでお会い致しましょう。インタビューは私、タヒチが担当致しました。』
……なるほど、これは面白い。それに、とても有益だった。少なくとも、セリの手持ちにはウパー、キャモメがいることが分かった。じめんタイプの技を打ってくるであろうウパーがいるパーティーに対して、ニドリーノ1匹で挑むのは愚策だろう。明日辺り、良さそうなどくポケモンを3番道路で探してみよう。
本を閉じて、電気を消す。忘れていた今までの疲労が一気に押し寄せ、気付いたら翌朝を迎えていた。