紫陽花が夢を掴むまで   作:通俗的な丑の時参り

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【第6話 ヨーソロー! リバタリジム】

ホテルのモーニングコールで目が覚める。カーテンを開け、陽の光で煌めく海を眺める。いよいよ今日がジム戦デビューだ。心が昂って部屋でじっとしていられそうにも無いので、僕達はリバタリ港まで軽く散歩することにした。

 

キャモメの群れ。頬を撫でる潮風。写真や映像では見た事はあったが、実際にそこに立ってみるとやはり全然違う。上手く言い表せないが、爽やかな気分になるというか、心が晴れやかになるというか、そんな感じだ。昨日の5番道路で見たノスタルジックな景色とはまた全然違う。港で働く人達も、活気に溢れている。

ふと、堤防に目をやる。青髪褐色の船乗りのような姿をした少女が、肩にキャモメを乗せ、海を眺めて立っていた。『イデすす』を読み込んだ僕は彼女の正体がすぐに分かった。彼女こそ、リバタリジム・ジムリーダーのセリだ。数時間後には一戦を交える相手。いても立ってもいられず、声をかけてしまった。

「…あの…リバタリのジムリーダーのセリさんですか?」

「…ん!はい、そうです!えっと…あなたは?」

「えと、今日リバタリジムに挑戦する予定のハイドって言います。」

「おぉ、チャレンジャーさん!それはそれは…!私のこと知ってるって事は…?」

「『イデすす』、読みました。僕にとって初めてのジムバトルなので、めっちゃイメトレして…」

「なんと…!いやぁ、私も見習いジムリーダーだからなぁ…気合い入れて挑んでくれるのは、私も嬉しいですよ!」

「あと、昨日僕の…ライバルがバッジを取ったそうなので。僕も頑張らないとなんです。」

「あ!昨日ジムバッジ取ったってことは、レンジアちゃんの!?いやぁ、レンジアちゃん強かったなぁ〜…」

耳がぴくりと動いてしまった。そんなこと言われてしまったら、余計に負けられない。

「…僕も負けてられません。今日はよろしくお願いします。」

「ふふっ…こちらこそ、よろしくお願いします!初のジムバッジ、取れるといいですね!…私も負ける気は無いです。チャレンジャーさんの防波堤になるのが私のお仕事なので!」

彼女は屈託のない、それでいて自信に満ちた明るい笑顔で僕に握手を差し出す。僕も(強ばっていたかもしれないが)笑顔でそれに応じて解散した。

 

時刻は午前9:45。ジムバトルにエントリーし、挑戦者用として用意されている待合室のベンチに腰をかける。15分後には、僕はセリと戦ってる。深呼吸して、床を見つめる。

「やぁ、ハイド!応援しに来たよ!大丈夫?緊張してない?」

「…レンジア。うん、緊張してないって言ったら嘘になる。でも、だからって負ける気は無いよ。」

「ふふっ…それでこそハイド!でも、セリさんは手強いよ。対策、ちゃんとしてきた?」

「一応ね。…昨日もずっと『イデすす』読んでてイメトレしてたから、正直寝不足。」

「うぇ、それは良くないね…バトル終わったらしっかり寝なね?」

分かってるよ、と彼女の言葉に返事をしながら、ニドリーノとナゾノクサの頭を撫でる。この子達は緊張どころか、むしろ張り切っている。頼もしい限りである。

『チャレンジャーのお呼び出しを申し上げます。ハイドさん。チャレンジャーのハイドさん。ジムバトルのお時間となりました。受付をされましたカウンターまでお越し下さい。』

館内アナウンスが放送された。いよいよジムリーダー・セリとの戦いの時である。

「…頑張ってね、ハイド。」

「うん、ありがと。…それじゃ、行ってきます。」

カウンターに向かい、担当スタッフに案内されてスタジアムに向かう。

「…ヨーソロー!リバタリジム・ジムリーダーのセリです!今朝ぶりだね、ハイドくん!」

コートに立つセリは、海を眺めていた時の穏やかな表情ではなく、目の前の相手を飲み込んでやろうという目をしている感じがした。

「さっきも言ったけど、見習いジムリーダーだからって甘く見ないでね!私はあなたを食い止める防波堤であり、あなたを飲み込む荒波でもある。私に勝てないようじゃ、この先のジムバトルはちょっと厳しいよ!」

「ふふっ…もちろん、侮ってはいません。それでも…負けるつもりもありません!」

「あはは!良い顔、良い意気込み!じゃあ、君がどう私を乗り越えるのか、早く見せてよ!」

「…それでは、両者、1匹目のポケモンを用意して下さい。」

 

審判の合図で、モンスターボールを手に握る。

僕の人生で初めての真剣勝負が、今から始まる。

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