ブルアカRTA風味 実績『予定外のハッピーエンド』獲得まで 作:Katarina T
雲一つない青い大空。
私がキヴォトスに来て、もう一週間近くが経つが、今日ほど天気がいいことを呪った日はない。
雲に遮られることなく地上を照りつける太陽が、私の体力を着実に蝕んでいく。
まだまだ若いつもりではいるが、ここ最近の運動不足を自覚させるには十分すぎるほどの暑さだ。
忙しくても、少しは運動しよう!
……なんて、そんなどうでもいいことを考えながら、私は思い出したかのように口を開いた。
「いや~~本当に助かったよ!ありがとう、トウハ!」
私は大きめのバイクを押しながら、隣を歩いている生徒に向かってお礼を言う。
白いパーカーに青色の短いデニムという、動きやすそうな格好。
髪色と同じ薄紫色の、少し大きめなリュックを背負っている彼女の名前は、明道トウハ。
私がこのキヴォトスに着任した日に偶然出会った生徒であり、今まさに絶賛迷子になりかけていた私を救ってくれたメシアである。
「あははっ、いいですよーー先生。お礼な~んて。私もたまたま来ていただけなんですから。」
トウハは本当に気にした様子もなく、軽口交じりにそう言ってくれた。
それにしても、あのバイクは結構重量がありそうだけど………疲れないのかな?
「それにしても、先生はどうしてアビドスに来たんですか?はっきり言って、ここはあんまり観光向けとは言えませんよ。」
「うん、観光?………ああ、違うよ。私は観光で来たんじゃない。先生として、生徒の助けになるために来たんだよ。」
「……??どういうことです?」
私は疑問に思っているトウハに、アビドスから届いた支援要請について説明した。
正直、他校の事情を簡単に教えてしまって大丈夫かな、と一瞬頭をよぎったけど、すぐにトウハなら大丈夫かなと、自分の中で結論を出した。
まだ、たった二回しか会っていないし、話をした回数も少ない。
それでも、その短い時間の中で、彼女がとてもいい子で、信頼できる生徒であることは、その態度や行動から十分に伝わってきた。
今もこうして、迷子になった私を嫌な顔一つせず道案内してくれている。
そんな彼女が、今のアビドスの事情を面白半分に言いふらしたりなどしないだろう。
なにより、私は先生だ。
私が生徒のことを信じないでどうする。
そんな風に自分の中で結論付け、説明を終えると、トウハは納得したような表情を浮かべながら頷いていた。
「なるほど……。そんな事情があったんですね。それなら私は責任を持って、先生をアビドス校に送らないといけませんね!大丈夫!アビドス校までの道はちゃーんと頭に入ってますので、安心して任せてください、先生!!」
「うん、よろしく頼むよ。トウハ。」
「ふふっ、ラジャーです!先生!アリシアちゃんも頑張ろうね!」
「…………。」(シーン)
「ええっと…………。アリシアちゃーーん?もしもーし、聴いてる?」
「……うん、聴いてる。その人を送ればいいんでしょ。」
「そうだよ!私は頑張って道を思い出しながら進むから!アリシアちゃんは、もし私が道を間違えてたらすぐに教えてね!」
「………分かった。………早速だけど、さっきの交差点、道が反対側だった。」
「ええ!?本当に!?それなら、もっと早くに言ってよ、アリシアちゃん~~~。」
「あはは……。アリシア、ありがとうね。」
「別にいい…………。」(ぷいっ)
そう言って、アリシアと呼ばれた生徒は、私から視線を逸らすようにそっぽを向いてしまった。
うーーん。
やっぱり私は、彼女から避けられているみたいだ。
私は歩きながら、もう一度バイクの上に乗っている少女に視線を向ける。
体格は少し小柄で、トウハと同じくフードの付いた白いパーカーを着ている。その上には厚手のジャケットを羽織り、下は長いジーンズ。
トウハとは反対に、かなり厚着をしている。
しかし、それ以上に気になるのが、彼女の周囲に浮かんでいる四つの球体だ。
その球体は、ふよふよと風船のように浮かんでいるように見えるが、アリシアから一定の距離を保ち続けている。
私が不思議そうに見ていたことに気付いたトウハが、あれはビット型のドローンで、アリシアの意思で動かすことができる銃のようなものだと説明してくれた。
キヴォトスには、普通の銃以外にも、そんな特殊な武器まであるのかと内心驚きながら、アリシアの方を見ていると、
「…………なに。さっきからこっちをジッと見て、用事があるの。」
「ああ、いや、用事があるわけじゃないんだ。ただ珍しいなって思っただけだよ。ジロジロ見てごめんね。」
「……別に気にしてない。」
「それなら良かったよ。……それはそうと、もうヘルメットは外してもいいんじゃ………。」
「いや。」(ぷいっ)
そう言って、またそっぽを向かれてしまった。
くっ、取り付く島もない!
このように、アリシアは出会った時からヘルメットを被りっぱなしで、私に顔を見せようとしない。
というより、私に関わらないようにしているとさえ思える。
おかしいな。
彼女とは今日初めて会ったばかりのはずなのに。
私が気付いていないだけで、彼女に嫌われるようなことをしてしまったのだろうか?
困った私はトウハの方に視線を向けるが、トウハも理由が分からないらしく、肩を竦めるだけだった。
先生としては、何とか彼女とも仲良くなりたいところだけど、今の様子を見るに先は長そうだ。
私がそんな風に考えていると、アリシアはバイクの上で手のひらを扇のように振り、暑そうにしていた。
「アリシアちゃん大丈夫?なんだか暑そうだけど。」
「うん。大丈夫。このくらいの問題ない。」
「そうは言っても、やっぱり暑そうだよ。こういう気候の時って、知らず知らずのうちに体温が上がっていたりするから気を付けないと!何とか日差しを避けた方がいいと思うけど、でも日傘とかはないし………。そうだ!」
トウハはそう言うと、背負っていたリュックをアリシアの方に預けた。
そして、背中から大きな白い羽を広げた。
今までリュックによって隠れていたのか、人一人分くらいの大きさがある羽が、ゆっくりと広がっていく。
そのまま、アリシアの乗っているバイクの上に屋根のように被せた。
「こうすれば、日陰になって涼しいでしょ!僕ってあったまいい!」
「……確かに日光は遮られた。けど、アケミチトウハは変わらない。むしろもっと暑くなるんじゃ。」
「大丈夫!大丈夫!私、暑いのとか慣れてますので!それよりアリシアちゃんの体調の方が心配だからね!」
「…………。なら、バイクは私が押す。アケミチトウハ、代わって。」
そう言ってアリシアはバイクから降りると、奪い取るようにトウハからハンドルを受け取り、そのまま押し始めた。
「おっと、別にいいのに。」
「私がやりたくてやってるだけ。アケミチトウハは気にしなくていい。」
「………そっか。それじゃあ、お言葉に甘えて。あっ、先生もこっちに来て日陰に入りません?」
「ううん。私も暑いのは平気だから大丈夫だよ。ありがとね。」
彼女たちのやり取りに、なんだか胸が暖かくなるのを感じながら、私はトウハの申し出を断った。
はっきり言うと、申し出自体はとても嬉しい。
だけど、流石に大人として、生徒に負担をかけてまで自分が涼むわけにはいかない。
なにより、今あの場にお邪魔したら、アリシアとの関係が更に悪化すると、私の第六感が告げているような気がするしね。
そんな風に私たち三人が会話をしながら(会話の相手はほぼトウハだったけど)、道を進んで一時間ちょっとした頃。
「あ!?見えてきましたよ、先生!!」
トウハの指さした方向に視線を向ける。
視線の先には、市街地を抜けた場所に設置された校門があった。
その奥にある建物の壁面には、三角形の中心に太陽のようなイラストが浮かんでいる、アビドスを示す校章が存在感を放つように描かれている。
どうやら、あそこが――。
「あそこがアビドス高校です!!」