※コミック版を参考にしているので、話の流れはコミックと同じです。
※展開及び原作キャラにオリジナル設定や捏造が入っています。
※原作キャラの登場には偏りがあります。
以上の注意を踏まえて閲覧して下さい。
†
「御機嫌よう。皆さん、お元気ですか?」
さて……、と言って、お馴染みの本を取り出す。
「前回は、新たな仲間が加わった所まで……でしたね?」
“ナーレ”は、話しながらページを捲っていく。
そして、とあるページで手を止めた。
「今回はここから始めましょう。ふふふ……、今日は一体どんな物語なのかしら。楽しみですわ」
†
とある朝。
エルフィはアンジュに呼び出されて、ホールに居た。
「……入隊、試験……?」
「そうよ。今までに、いくつか依頼をやってもらったけど、今のエルフィ君は正式なメンバーじゃないの」
もうちょっと早く言ってほしかった、とエルフィは思った。
本来ならば直接口に出すべきだが、言ったら言ったでメンドくさそうなので、敢えてそこはスルーする事にした。
「と、いう訳で。エルフィ君は、これからこの間新しく入ったエースさんと一緒に入隊試験を受けてもらうね。同行者はカノンノよ。それじゃあ、頑張ってね♪」
アンジュはそう言うと、にこりと微笑んだ。
―ルバーブ連山・登頂口―
予定通り、三人はルバーブ連山でバンエルティア号を降り、登頂口にて、エースに入隊試験について説明――偶々、その時外出していたらしい――を行っていた。
「ふーん、入隊試験ねぇ~。で、何したら良いの?」
「えーっと、ルバーブ峠にいるガルーダの討伐……だそうです」
“ガルーダ”
皆さん御存じの、あの褪せたピンク色をした鷲のような魔物である。
エースは、「あ~、アレね」と言って納得した表情をつくる。
「力量を確かめるには打って付けのレベルって訳だ」
「……強いんですか?」
「ん~、あたし的には弱い方だと思うけど……。ま、直接見てみた方が良いかな」
エースはそう言うと愛用の武器を肩に担ぎ、目的の場所へ歩き始める。
「ほら、二人とも行くよー」
「あ、はい!」
エルフィとカノンノは急いでエースの後を追った。
―ルバーブ連山・ルバーブ峠―
目的地に着いた一行は、上空に例のガルーダが居る事を確認すると、皆思い思いに武器を構える。
ガルーダも、一行に気がついたようで、戦闘態勢に入っていた。
その数、四匹。
「それじゃ、行きますか」
「……意外に、多い……です」
「これも、試練ってヤツでしょ?ほら、来るよ!」
それが合図と言ったかのように、ガルーダ達が回転しつつ急降下をして襲い掛かってきた。
エルフィとエースは、銃口をガルーダに合わせ、発砲する。
ガルーダ達は銃弾を避けると、再びこちらに向かって攻撃してくる。
それを三人は、防御や回避する。
「エルフィとカノンノは、一匹ずつ相手して!私が他の二匹を仕留める」
エースは、二人に的確な指示を出し、二匹のガルーダの元へ走り出す。
一方、エルフィとカノンノもエースの指示に従って、他のガルーダと対峙する。
「……チャージバレット、アサルトバレット」
「やぁっ、たあっ!空蓮華!獅子戦吼!」
『ギャアァッ!?』
「……止め。スライディングバレット」
「これで最後!バーンストライク!!」
エルフィの連続攻撃とカノンノの放った火炎弾により、二匹のガルーダは倒れた。
そして、エースはと言うと……
「魔神剣!剛・魔神剣!烈空刃!」
『ギャアァァ……』
あっと言う間に、最後の一匹を倒し、少々不満そうな顔をしながら剣を収めた。
「全く、手応えないねぇ……」
声色こそ同じだが、いつもの明るい口調が嘘のように消え失せ、氷のように冷たい印象に変わっていた。
あまりの変わりように、しばらく声を掛けられずに呆然としていた。
「……ん?どうしたのさ、二人とも。そんな驚いたような顔して~。無事、ガルーダ倒せたんだから笑って笑って~!」
二人に気付いたのか、エースは振り向き様にニッと歯を剥いて、親指を立てて笑った。
その時は、いつものエースに戻っていた。
それを見たカノンノは微笑み、エルフィは相変わらず無表情だったが、どことなく安堵の表情が見えた気がした。
「……これで、終わり?」
「うん。エルフィとエースさんは、今日から正式なアドリビトムのメンバーだよ!おめでとう!」
「ありがと♪……ほら、エルフィ君もお礼言いな」
エースはそう言うと、エルフィの背中をポン、と叩いた。
エルフィは少し考え込んで、
「……ありがとう。カノンノ」
と言った。
カノンノは、ほんのり頬を赤に染めてにっこりと笑顔を作った。
「それじゃあ、戻ろっか。早く帰って、ロックスのおやつ食べに行こ!」
「……うん」
そう言って二人は足早に峠を降りて行った。
だが、エースだけはその場に留まっていた。
そして、自分の背後に広がる景色の方へ振り返る。
穏やかな風が、菫色の髪をなびかせた。
「……彩都(さいと)。あたしは、本当に―――“病気”かもしれないね」
そう一言呟くと、踵を返して、先に行った二人の後を追いかけて行った。
一行が船へ戻ってみると新しい仲間――ナナリー・フレッチとハロルド・ベルセリオスが加わっていた。
何でも依頼の謝礼を兼ねて加入したらしい。
それと、ハロルドとエースが知り合いだった事には驚いたが、それよりももっと驚いたのは……。
……入隊試験なしで加入していた事という、ちょっと損した気分になる出来事だったのでした。
それから二週間後のある日……
「クレアからの依頼よ。ヴェイグ君、シング君、ミントと一緒にヘーゼル村へ物資を届けてほしいの」
場所はコンフェイト大森林よ、とアンジュは付け足す。
そろそろ風邪が流行る時期らしく、薬とその他の物資をその村へ届ける――正しくは近くの場所で落ち合う事――というのが、今回の依頼内容。
「それじゃあ、気を付けて行ってらっしゃい」
アンジュは笑顔でエルフィ達を送った。
―コンフェイト大森林―
「よーし!ガンドコ行こう!」
拳を前に突き出して恒例(?)のガンドコ宣言をしているのは、気合十分の茶髪の少年――シング・メテオライト。
「ガンドコ、ですか?」
その言葉の意味をシングに訊いているのは、白衣を着た女性――ミント・アドネード。
「うん!『ガンガンどこまでも』で『ガンドコ』さ!」
「ガンドコ……、良い言葉だと……思います」
「ああ、オレもそう思う」
そう言うのは、列の最前列と最後尾にいる青年――ヴェイグ・リュングベルとエルフリアこと、エルフィ。
「……ヴェイグ、ヘーゼル村って……どんな所、ですか?」
不意にエルフィが尋ねる。
「小さな村だが、とても温かな村だ」
ヴェイグは、そう短く答える。
だが、と彼は付け加える。
「今のヘーゼル村はウリズン帝国により、星晶(ホスチア)の採取と採掘を強いられている」
「オレの村と同じだ……ウリズン帝国の奴らめ!」
シングが拳をギュッと握り締め、歯を食いしばった。
訊いたところによると、シングの村もヘーゼル村と同じく、ウリズン帝国に労働を強いられているという。
以前話した通り、今この世界『ルミナシア』は、星晶(ホスチア)を巡って各国で戦争が勃発している。力のない小さな町や村は、大量消費国に植民地化されたり、労働を強いられたりされているのだ。
そんな苦しんでいる人達を少しでも助けたいと立ち上がったのがアンジュ達だ。アドリビトムは、その様な危機的状況から救うべく作られたギルドなのである。
もし、この世界に星晶(ホスチア)がなかったら……世界はどうなっていただろう。
その存在が、誰にも知られていなかったらどうなるだろう。
戦争はなくなるか?
否、戦争はなくならないだろう。
この世界に、“ヒトの歪んだ欲”がある限り……。
「……その帝国の人、どんな感じ……なんですか?」
「えっと、紫色の髪の……変なしゃべり方をする奴だったよ」
「!! そいつは、“サレ”か」
「……“サレ”?」
「ウリズン帝国の“サレ”という騎士の悪行は有名です。彼は嵐を起こす力を持っていて、命令に逆らう町や村を次々に潰していったそうです」
その“サレ”という人物は、今ヘーゼル村に居るらしい。
願わくば、出会わないことを祈りたい。
「……!」
急に、ヴェイグが足を止めた。
「え……ヴェイグ?」
「待て。……奥から声がする」
その時、森の木々たちがざわめいた……。
桃色の髪の女性が行き着いたのは、“行き止まり”だった。
後ろから、ふはは……、と薄く笑う足音が近づいて来る。
「残念。この道はハズレなんだよ、ハ・ズ・レ」
女性が振り返ると、そこに居たのは、紫色の髪の男。
紫髪の男は、再度薄気味悪い笑みを浮かべ、女性にジリジリと近寄っていく。
「小うるさいお供の目の届かないところに引っ張り出すのは苦労したよ。さあ、僕と来てくれるかな?――ガルバンゾ国王女、エステリーゼ様」
桃色髪の女性――エステリーゼ・シデス・ヒュラッセインの整った顔に、冷や汗が一滴零れる。
「わかるよね?近々キミの国とは戦争になる。でも、キミが人質になって、ガルバンゾ国の星晶(ホスチア)を渡してもらえれば、多くの人は血を流さずにすむ……」
紫髪の男は、スッと目を細め、口角を上げた。
宛ら、悪魔の微笑み……と言ったところか。
「どう?命って、重いのかな?」
剣を空いている手に添えて軽く打ち付ける。
そして、一歩。また一歩と、エステリーゼに近づいて行く。
だが、その時――数人の、走ってくる足音が聞こえた。
「――サレ!!」
紫髪の男――サレは、後ろに振り向く。
そこに居たのは……
「……。やあ、ヴェイグ。おひさしぶり」
武器を構えたヴェイグとエルフィ達一行の姿だった。
「キミのことはよく覚えているよ。僕に刃向かい、村を捨てて逃げた……“ドブネズミくん”」
「くッ……」
ヴェイグは、歯をギリッと噛み締める。
大剣を持つ手に、自然と力が籠る。
「逃げなければ、僕の玩具(おもちゃ)になれていたのになぁ……。残念だ」
「黙れ……ッ!!」
浴びせられる罵りの言葉に、とうとう堪忍の緒が切れたのか、ヴェイグは地を蹴ってサレに剣を振り下ろす。
しかし、サレも黙ってはいなかった。
ガギン……!
ヴェイグの剣を受け止め、弾き返す。
その隙に、連続突きと繰り出す。
「今回は逃さないよ」
「ぐ……!」
「ヴェイグ!このぉ!うおおおお!!」
今度はシングがサレに向かって行く。
「邪魔だよ……ウインドエッジ!」
「うわぁっ!!」
サレの放った風の刃が、容赦なくシングの身体を傷付ける。
ミントはすぐさま、その場に倒れたヴェイグとシングの治療にあたる。
だが、サレがそんな事を見逃すはずなく、ミントに攻撃を仕掛けようとする。
しかし、彼の背後を大きな影が覆った。
「……空襲刃」
「なッ……ぐはっ!」
エルフィの刃が、サレの背中を切り裂いた。
エルフィは、着地したのと同時に追撃を試みる。
「……斬刃連牙突」
「くッ!調子に乗るなよぉっ!!」
サレも負けてはいなかった。
連続突きを繰り出し、エルフィの連続斬りを牽制する。
エルフィも、負けじと二本のナイフで戦う。
剣とナイフ、そして時に銃弾。
三つの凶器がぶつかり合い、交錯し合う。
独特の金属音、地面が抉られる音。
永遠に続くかと思われた戦いは―――
ガギイィィィィン……!
銀色の刃が宙を舞い、後ろの地面に突き刺さる。
そして、膝を着いた“それ”の持ち主が言った。
「この僕がぁ……ッ!?う、ウソだろう……?僕が、こんなヤツらに……。――次は本気で叩き潰す」
と……。
―バンエルティア号―
「おかえりなさい。今回は残念だったね。でも、あのサレがいたんだもの……仕方ないわ」
帰ってきた一行に慰めの言葉をかけるアンジュ。
「物資の配達は、また今度にしましょう。それよりも……」
ちらりと、エルフィ達の後ろに居る三人の人物に視線を移す。
その視線に気づいた三人の内の一人――エステリーゼが少し前に出て、
「助けていただいて、ありがとうございます。わたしは、ガルバンゾ国の王女エステリーゼ。エステルって呼んでください」
お礼を含めて自己紹介をした。
エステリーゼ――エステルの自己紹介が終わると同時に、黒髪の青年が名乗り始める。
「オレはユーリ・ローウェル。ガルバンゾ国のギルドの者だ。今は、このお姫様に旅の護衛として雇われている。さっきは本当に助かったぜ、ありがとな」
「あたしはリタ。リタ・モルディオ」
ユーリの紹介が終わると、ゴーグルを付けた茶髪の少女が短く名乗る。
しかし、先の二人とは違い、リタはお礼を言っていない。
その事が気になったのか、ユーリはリタをじっと見る。
リタは「わ、わかってるわよ!」と怒鳴り散らすと、顔を少々赤らめて呟くように、
「そ、その……えっと、エステルを助けてくれて、あ……ありがと」
と、お礼を述べた。
それをアンジュは、「ふふ……」と微笑んだ。
リタは少しムスッとした表情になって、赤みの残った顔を背けた。
「……ツンデレ」
「う、うっさい!!」
ふと本音を呟いてしまったエルフィに、リタは一喝。
その時、皆が笑った。
「あなたのような大国の王族が、なぜギルドを雇って旅なんてしているの?」
「はい。コンフェイト大森林には、ガルバンゾ国の星晶(ホスチア)採掘跡地があるんです。現在、その土地を巡ってウリズン帝国とは緊張状態なのですが……」
ふっとエステルの顔が暗くなる。
「その採掘地跡で今、『変な現象が起こっている』という話を聞いたんです」
「変な現象……?」
「採掘が行われた土地の生物が変化してるって話よ」
リタが間に入って説明を始めた。
彼女の話によると、まだ原因が明確になっていない問題で、一部の学者の間では『土地にある星晶(ホスチア)を採りすぎたせいではないか』という仮説が立っているという。
しかし、国の評議会は『世間を騒がせた罪』とかで、最初にその仮説を立てた学者を逮捕したらしい。
結果的に、分かるのは一つだけ。
『国は一切、その事に関しては関与しない』という事だ。
「その話を知ってわたし、本当の事が知りたくて……。国が動かないなら、まず自分から調査しようと国を出たんです。そこを、サレに見つかってしまって……」
エステルは目を伏せて語る。
そして、何かを決心したように真っ直ぐとアンジュに視線を向けた。
「あの、わたしもここで働かせていただけませんか?採掘地跡に起こる異常現象の原因を確かめて、できれば自分の力で解決したいから」
「そんじゃ、オレも雇ってもらおうかね」
「エステルが行くならあたしも」
必死に懇願するエステルに比べ、ユーリとリタはまるでついでみたいな口振りだったが、アンジュはにこりと微笑むと、
「じゃあ、メンバー登録するからちゃんと働いてね」
と、またもやあっさりと三人の加入を歓迎した。
後に、新しく入ったメンバーの情報を聞きつけたエースが、入隊試験の件に関して『やらない』と聞くや否や、『あたしとエルフィ君だけ理不尽過ぎー!』と吠えていたのは、また別のお話。
†
「さて、今日はここまでにしましょう」
“ナーレ”は慣れた手付きで本を棚へ収める。
それを収めたと同時に、
―――コツ……。コツ……。
と、後ろの方から近づいて来る足音が聞こえる。
そして、足音の人物の姿がはっきりと見え始めた所で、その人物はその場で足を止めた。
“ナーレ”は、何処からともなく応接セットとテーブルと椅子を取り出し、用意し始めた。
準備が終わると、その人物は用意された椅子に座った。
「珍しいですわね。“貴女”がこの空間へいらっしゃるなんて」
「……たまにはこっちで世界を傍観するのも良いかと思った。それだけよ」
足音の人物――声からして女性のようだ――は、素っ気なく“ナーレ”に言う。
そんな彼女に“ナーレ”は再び笑みを浮かべると、ティーカップに紅茶を注ぎ、彼女の前に出す。
「……と言うより、そろそろ“その時”じゃないかと思ったのでは?」
「……。まあ、そんな所ね」
そう言うと彼女は、出された紅茶を一口啜った。
その冷たい表情を張り付けた顔に、微かな笑みを浮かばせながら……。
†続く†
読了ありがとうございます。
出来上がっている物とは言え、二つ投稿するのって疲れますね(笑)
今11話分仕上がっている状態で止まってるんですが……無事完結出来るのかなぁ。
とにかく、完結目指して頑張ります!
それでは、またお会いしましょう。