リバイスFORWARD 〜仮面ライダーリバイと叛逆のデモンズ〜   作:大島海峡

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プロローグ:蜂起

 ――ブルーバード、本部。

 今もなお続く悪魔絡みの犯罪、テロ行為やそれに準ずる超常犯罪に対応する平和維持組織の総本山。

 

「……Great! エークセレントッ!」

 外はあいにくの空模様だったが、施設内の大広間にて、ジョージ狩崎(かりざき)は感動に打ち震えていた。

 彼の前には、数十人で構成される異形の装甲兵たちが整列している。

 皆、規格は統一され、黒いアンダースーツに赤黒い蜘蛛の巣の前掛けや装甲を持った、複眼の兵士たちだった。

 ただし最前列の中心にいる個体だけは、色合いが違う。デモンズの究極形、インペリアルデモンズがベースとし、オレンジを基調としたアーマーパーツ。網の目状のマントがたなびいて、手脚もより重厚なる強化パーツが施されている。そして、筋線維のような意匠のバックルを持つ異形の変身装置、デモンズドライバーだけが、腹の前に据えられている。

 

「悪魔細胞に依存せず、人類の遺伝子そのものを動物の因子でコーティングする新型バイスタンプに、特殊作戦に特化させたデモンズのニューモデル、トラップデモンズ! これは全人類仮面ライダー化計画にとっての大きな一歩だ!」

 と熱っぽく語り、拳を握り固める。

 悪魔(デモンズ)の名はその意義を変える。悪魔そのものではなく、悪魔を絡めとる陥穽、罠、それを仕掛ける工兵としての字だ。

 

「……相変わらずだな、あいつ。少しは懲りたりしないのか?」

 と、その裏手でブルーバードの実働部隊長門田(かどた)ヒロミが、苦い顔をしながら壁にもたれかかり、

「まぁ、それでもなんだかんだ良い方向に持っていくのが、狩崎さんですよ?」

 隣で組織の主戦力たる青年、仮面ライダーライブこと五十嵐(いがらし)大二(だいじ)も苦笑いを浮かべている。

 

「ギフの一派やアリコーンとの戦いには間に合わなかったが、依然として厳しい戦いは続いている。特に君には、期待しているよ――綱本(つなもと)くん」

 

 その言葉を合図に、部隊はその変身を、装甲を解く。

 最後にリーダー格たるその中央の戦士――トラップデモンズがその正体を露わにする。

 ブルーバードの隊服たる、青いパーカーをきっちりと締め、その髪は短く刈り上げている。いかにも厳格そうな佇まいだが、その面持ちは若く、優しげな微笑をたたえている。

 綱本(なわて)

 若年ながらにその資質、指揮能力、カリスマ性を買われ、実力主義を謳う狩崎直々にこの新設トラップデモンズ部隊の長に抜擢。ほとんどの部下が年上にも関わらず、彼らからの信頼も厚く、その判断が正しかったことを証明している。

 

「ありがとうございます」

 深々と頭を下げながら、しかし、と彼は問い返した。

「少し、お伺いしても?」

「Of course! 何かな?」

「悪魔に拠らないライダーシステムの開発。貴方の父、狩崎真澄(ますみ)の研究の産物の、徹底的な駆逐。それこそが、全人類仮面ライダー化計画の根幹であり、旧フェニックスの命題であったはず……我々がそのために訓練を重ねていた間、何故そこから悪魔との協調路線に?」

 と。

 

 瞬間的に、ただならぬピリリとした空気が流れ、ヒロミと大二は顔を見合わせた。

 狩崎も、色眼鏡の奥の眼を気まずそうに逸らした。

 

「Ah……まぁ、それなんだが……その結論はいささか性急に過ぎた。むろん、悪魔が我々にとっての脅威であることには違いないが、その一方で切り離しがたい、人類の一部であることに違いはない。彼ら五十嵐familyのように、人と悪魔の調和の可能性は大いにあると、今の私は見ている」

 手招きして呼び寄せた大二の肩に手を置き、そう説いた。

 

「……なるほど、よく分かりました」

 ゆったりとした口調と動きで、畷はにこやかに顔を持ち上げた。

 

「とはいえ、まだまだ課題は多い。方針転換に流石の君も動揺しているだろうが、今後とも君の力も貸してくれ綱本くん。ご両親も、きっとそれを望むはずだ」

 

 狩崎が、今度は畷の肩を軽くたたいて労う。

 目線を下げて頷く彼は、恐縮のためか、拳を握り固めていた。

 

 ――そこに、けたたましい警告音が鳴り響いた。

 

「施設内に、悪魔が多数出現! 各所で救援信号が発信されています!」

 オペレーターの女性隊員、雛守(ひなもり)歌子(うたこ)がそう甲高い声を張るに際し、狩崎は眉をひそめた。

 壁に埋め込まれた画面が分かれ各所の状況が、それぞれに表示される。

 

 いずれにも、骨のごとき悪魔の兵隊、ギフジュニアとそれを率いる、まるで折り紙で動植物を折ったかのような異形の怪人デッドマンの姿が散見された。

 

「誰の仕業だか知らないが、水を差すようなマネしてくれるね……いや、むしろ好都合か」

 独りごちた狩崎は、頼れる仲間たちを顧みた。

 

「さっそくだ、綱本くん。トラップデモンズ部隊の力、披露してもらおうか。私と共に、各所の鎮圧に当たってくれ」

「はっ! 了解っ」

「大二、君も既存のデモンズトルーパーを率いて同行してくれ」

「分かりましたっ……よろしく頼むな、畷!」

「はい、背中はお任せください」

「俺は田淵(たぶち)と合流して、非戦闘員の保護に動く」

「OK。じゃあ、そっちは任せたよ」

 

 阿吽の呼吸にてそれぞれの持ち分を決めた勇者たちは、その場で二つのグループに分散したのだった。

 

 ~~~

 

 ――そこまでは、良かった。

 予期せぬアクシデントには違いないが、対応可能な戦力が、その場に結集していた。

 

 だが現場の一つ、作業用の通路に駆け付けた狩崎と大二は、思わず虚を突かれた。

 何も起こってはいない。誰もいなかった。

 そしてだからこそ、この静寂は異常だ。

 

「おかしい……これはいったいどういうことだ?」

「何もおかしくはありませんよ。だって、元々何も起こっていない」

 呟いた大二の横を、畷と、彼の率いる隊員たちが横切っていく。

 そして踵を返すと、大二や狩崎の前に立ちふさがるかのように、立った。

 ――その顔に、変わらぬ微笑を浮かべて。

 

 その隣に、広間でオペレーターとして待機していたはずの雛守が並んだ。

 披露するように突き出した端末の画面を操作すると、彼らのいる地点を含めた現場が無傷無人であること、従って今まで自分たちが見ていたものが改ざんされた偽の映像であることが示された。

 さらにそこに小走りで、小柄な若い男が駆け寄り、

「隊長、ブルーバードのメインシステムのハッキング完了しました」

 と報告した。

 

「……なんのつもりだ?」

 声を低くして問いかける大二に、にこやかに畷は言った。その隣の、背の向こうの皆、一様に迷いのない――敵意を残された狩崎たちに注いでいた。

「今聞いての通りです。貴方がたが離れている間に、この施設は掌握させてもらいました」

 大それたことを、さも当然のように。

〈パーフェクトウイング!〉

 何故、どうして。湧いてくる疑問を無視して、大二はパーフェクトウィングのバイスタンプを手にし、腰に切れ込みの痕が残る自身のツーサイドドライバーをセットした。

 

「変身……!」

〈パーフェクトアップ!〉

 白と黒との翼に抱かれて、彼の身体は戦士仮面ライダー、エビリティライブへと変わる。

 

「畷とその部隊が乱心した! ただちに制圧せよっ」

 そしてすぐさま後続のデモンズトルーパーたちに指示を飛ばし、まだ準備が整わない相手を数と速攻で圧しようと駆け出した。

 

『バカ大二! ()()()()もだ!』

 鋭い喚起の声が、内から飛ぶ。大二の裏に潜む悪魔、カゲロウの声だった。ライブの右腕が、彼自身の意志に反して動く。ぐいと横顔を掴むと、不自然に逸らす。

 その横顔を、弾圧が掠めた。

 そしてそれは単発では終わらず、方々からの一斉射撃が、大二を襲った。

 光弾がライブの全身に浴びせられ、大二は苦悶の声と共に吹き飛び、壁に叩きつけられる。

 

 デモンズトルーパーα、そしてβ。均等に数を揃えた両タイプともに、オーインバスター50を、明確に大二たちに突きつけている。

 

「――なるほど? 蜂起するからには当然、旧デモンズ部隊も取り込んでいるというわけだ」

 念を入れて新型に仕込んでおいた自壊システム(キルプロセス)。それもまた作動しないことを認めて、狩崎は自身の端末を放り投げた。

 

「人聞きの悪いことを言わないでもらいたい」

 と、柔らかい口調を崩さず畷は答えた。

「これは、皆の総意ですよ。もはや、いちいち情に流されて二転三転する貴方たちの方針には、皆ウンザリしている」

 

 そのことを証明するかのように、畷が手を挙げれば、その下に新旧の部隊は整列する。

〈トタテグモ〉

 そして自身は改めて、デモンズドライバー上部に新型バイスタンプを押印。

 

〈Deal〉

 それを読み込むと同時に、無数の蜘蛛型ボットが壁一面を這う。

 正確に数える余裕はないが、頭数はおそらく部隊の人数分だ。

 

「変身」

〈Decide up! Trail. Train. Trigger……〉

 笑みを崩さず、画面に再度スタンプを読み取らせると、それぞれに糸を吐いた蜘蛛たちが壁を、床を這い摺り巡り、巨大な繭を形成し、雛守や眼鏡の青年を含め、新設部隊を包み込む。

〈仮面ライダー・トラップ・デモンズ!〉

 焼けるが如くに内側から千切れ飛んだそこから現れたのは、先ほどと同じくトラップデモンズ。および、それを主としたトラップデモンズトルーパーたち。

 

 それこそが新機軸のデモンズシステム。

 部隊単位での、変身だった。

 

「I see……そっちがそのつもりなら、最終テストは私自身がするとしよう」

〈ジュウガ!〉

 そう宣言した狩崎はすでに戦闘準備万端。甲高い音声と共に神像がごときバイスタンプをセットし、十字に腕を組む。

 

「変身」

〈スクランブル! 十種の遺伝子、強き志、爆ぜろ、吠えろ、超越せよ! 仮面ライダージュウガ! Go Over!〉

 

 トラップデモンズと同様、悪魔に依存しないライダーシステム。

 闇を彩る、十色の輝き。黄金の閃き。

 様々な生物と平成ライダーの力を組み込んだ彼専用の仮面ライダージュウガが、解放される。

 

 狙うはただ一騎、畷のトラップデモンズ本体だ。彼さえ倒すことができれば、戦局的にも、そしてシステムとしてもこの謀反人たちを無力化できる。

 

 組み付いたまま、両者は場所を移す。

 その進路に壁があろうとなかろうと、突き破って転がり出た先は、カフェスペース。

 戦士の休息がために広めに確保されたその場所で、あらためて対峙。

 

「Come on!」

 他のトルーパーたちは、大二たちが抑えてくれている。彼らが追いつくより先にケリをつけようと、狩崎はテーブルを蹴り上げて戦場を確保し、挑発を行う。倒せずとも接戦となれば、敵部隊も流れ弾を恐れて容易に攻撃はできまいと踏んで。

 

 そんな思惑を知ってか知らずか、トラップデモンズより先に本格的な攻勢を仕掛けた。

「やっぱり反乱の理由は、私の翻意が気に食わないからかな?」

 一撃一撃に力の乗った攻めをやり過ごしながら、ジュウガもとい狩崎は尋ねた。

「君の眼には、それは許されざる手のひら返しに映ったか?」

 個としての出力(スペック)は、ジュウガの方が上だった。強烈な回し蹴りをかわし、カウンターのストレート一発。それを機に形勢はジュウガ有利に傾いた。

 

「ご両親のことを考えれば、君が恨みに思うのも無理ではない」

〈オクトパス!〉

 蛸のバイスタンプを押しながら、なお狩崎は続ける。

「だが、私はあるお人好しの家族に教えられてね……自分の弱さを受け入れ、他人の罪を赦す……そんな悪魔との共存の仕方もあるんじゃないかって、ね!」

 

〈アブゾーブドライブ・オクトパスフルスロットルアタック!〉

 仮面ライダードライブの技術力と蛸の遺伝子を掛け合わせた力を宿したジュウガが、地を蹴った。

 高速機動で敵を翻弄するだけではない。重加速粒子を発生させ、自分以外の動作一切を鈍くさせる。

 

「彼らに、五十嵐家に会えば、君もきっと……」

 畷はそれには答えない。

 ただ狩崎の速攻を耐えながら、無言で緩慢に、新たなるスタンプを起動させる。

 

〈クラゲ〉

 黒いレリーフと青いストレージが発光すると同時に、重加速粒子が飛散した。

 

「What!?」

 甲高く動揺を表出させる狩崎に、自らの速さを正常化させたトラップデモンズは判を握るその拳で真正面から攻めたジュウガの腹部を殴りつけた。

 

〈Add……Dominate up! クラゲ・ゲノミクス〉

 不意の直撃に腹を抱え込むジュウガの至近で、トラップデモンズはその手に武器を転送する。

 青い刃と黒い銃器が合成された未来の武器――ブレイドガンナーを。

 

「な、んだ……そのバイスタンプは!?」

 そして腕でジュウガの首を絡めとるや、そのこめかみにゼロ距離から、引鉄を前後させて連射した。

「――別に、貴方たちに恨みはありません」

 悶絶の絶叫をあげる狩崎を、把手の部分で何度も殴りつける。力なく倒れ込んだその後頭部にさらなる追い討ちを加えていく。

 

「ヒロミさんや大二さんの語るところから、きっと五十嵐家も素晴らしい人たちなんだとも理解します……でも、彼らは始まりにして例外中の例外だ」

〈ニワトリ・ゲノミクス〉

 

 その武器を用済みとして投げ捨てた畷の、その穏やかな口調とは裏腹に、激しい蒼炎が手甲となって左右に宿る。ジュウガのクワガタのような右角を掴む。そのまま身体を引きずり壁に叩きつける。押し付けた顔面(マスク)で壁を削る。その背中に、蹴りを浴びせかける。

 

「こ、の……!」

〈カンガルー!〉

〈アブゾーブ・ビルド〉

 必死の抵抗でその猛攻から抜け出た狩崎は、息も絶え絶えに自身も新たなにカンガルーのスタンプを装填。

〈カンガルー・ボルテック・アタック!〉

 曲線を描いて立体化した数式に乗り、勢いをつけてデモンズへと向かっていく。

 

 ――だが、時間切れがやってきた。

 追いついてきたトルーパーたちが、壁の亀裂、横合いからジュウガへと斉射を仕掛ける。

〈フンコロガシ・ゲノミクス〉

 数式の滑り台から転げ落ちたジュウガの首を、トラップデモンズの蒼炎の手甲に代わり右腕に形成された巨大でメカニックなアームが掴み上げる。

 

「そんな彼らをモデルケースにして、人類と悪魔の共存なんて間違っている。悪魔の科学者の産物は、徹底的に排除しなければならない……いわばこれは、大義だ」

 そのアームから分離した畷の腕が、再度新型バイスタンプをディスプレイに押印。両サイドから掌で押し込む。

〈フンコロガシ! Charge……デモンズフィニッシュ!〉

 

 毒々しい紫の妖光を帯びた両脚を開いて、畷は鰐の咢のように、ジュウガを何度も挟み込んで踵を叩きつける。

 逃れ得ぬ双極からの衝撃に、ジュウガの解けた狩崎は吹き飛んで白いコートを煤と自身の血で汚しながら転がった。

 

「狩崎さん!」

 追いついてきた大二が、彼を庇うべく割って入ろうとする。

〈ハリモグラ〉

 それに一瞥も呉れないまま、白いボディに緑青色のレリーフが入ったスタンプをトラップデモンズは押す。

 だが、召喚された武装は彼の手元には宿らず。

 

〈ハリモグラ・ゲノミクス〉

 さらに大二の背後より迫るトラップデモンズトルーパーに赤黒いガントレットが宿り、跳躍。エビリティライブの無防備に晒された背に叩き込まれた。

 大二もまた、狩崎同様に地を舐めるがごとくに強制的に変身を解除され、転がる。

 だがそれでもなお諦めず、狩崎の前に我が身を寄せる。

 

 彼らの末路に言葉も贈らず無情に腕を振り上げるトラップデモンズだったが、ふとその手を止めて、虚空を掴む。その手の中、眉間のすぐ手前に、矢が握られていた。

 

 死角からそれを射かけたのは、ヒロミだった。

 だがその生じた一瞬の隙に弓を投げ捨て、肉弾戦でトルーパーらを蹴散らし、開いた血路を突破して仲間たちの間に滑り込む。

 

「ヒロミさんッ! これは」

「あぁ、なんとなく状況は理解した……! あっちも、田淵が捕まった。こいつを奪い返すので精いっぱいだった」

 

 彼は、その脇に抱えていた大振りのスーツケースを大二に突き出した。

 それを開けると、中にはいくつかの装備が納められている。言わずもがな、そこには兄から譲渡された、あのドライバーも含まれている。

 

「分かってるな、カゲロウ……変身!」

〈メガバット!〉

 その一式を迷わず掴み取ると、ツーサイドライバーと換装。息を吹きかけた秘蔵の金印を押す。

『ったく、今度は足引っ張んなよ』

 半実体化した己が悪魔が振り下ろした判子に取り込まれ、その身体は二つに分かれる。

《マーベラスアップ! 輝くほどシャイニング! 激しくなるダークネス!  Crossing! Crossing! 仮面ライダーライブ&エビルマーベラス!〉

 リバイス調のカラーリングに強化・再調整されたライブマーベラスとエビルマーベラスが両立する。

 

 残る二人を背で守る形で左右に分かれた彼らは、怒涛の勢いで迫る敵を押し返していく。

 そして畷に対しては二体一にて挑みかかる。

 それを素早い手足の切り返しで捌きつつ、鋭い正拳突きの反撃を喰らい、

〈マーベラス・ジャスティスフィニッシュ!〉

 つんのめって後退した二人だったが、その合間に必殺技をドライバーの承認させていた。

 

 先にエビルが跳躍する。その下で、ライブがツーサイドライバーの射撃でデモンズ部隊を威嚇。翠光を帯びたテレフォンパンチを、カゲロウは見舞うも正面から受け止められる。

 

 自らの攻めの無意味さを見切ったカゲロウはすぐに飛び退き、入れ替わり七彩の光帯に後押しされ、ツーサイドライバーを足下に放った大二が飛び蹴りで挑みかかる。その渾身の波状攻撃はトラップデモンズのアームを破壊するも、本体に直接的ダメージを負わすことはできなかった。

 

 ――そう、元よりこれ以上は望めないことを、大二もカゲロウもよく分かっている。圧倒的に不利な状況に加え、加担していない多くの職員も人質にされているはずだ。

 カゲロウは、大二の攻撃の裏で拾い上げたツーサイドライバーを自身の近接武器、エビルブレードへと変形させるや、外に通じるウインドウを切り裂いた。

 破片を散らす。ちょうど数人分の幅を穿たれたその『脱出口』から、高度ゆえの気流が荒れ狂い、油断していればそのまま外へと投げ出されそうだった。

 

「ここはとりあえず撤退するしかない……カゲロウ、ヒロミさんを頼む!」

 実際、ダウンしたままの狩崎がそうなりかけたのを、飛び退いた大二が抱え込んだ。

悪魔(ヒト)に荷物持ちさせてんじゃねぇよ」

「おい、お前こそ、俺を荷物扱いするな!」

「だったらこの高さから自由落下でもするんだな、病み上がり」

 舌打ちまじりにカゲロウは毒づくも、ケースで手が塞がったヒロミの肩をしっかり押さえる。

 そして二人一対の仮面ライダーは、残存する味方を抱いて、そこから飛び降りて離脱したのだった。

 

 〜〜〜

 

「すみません、門田ヒロミを取り逃がした、我々の責任です」

 遅れて合流してきた別働部隊の長がそう言って詫びてくるのを、綱本畷は首を振った。

「構わないよ。彼らが頼りにする先なんて、だいたい察しがつく」

 事もなげにそう言った畷は、変身を解いた後で自らの首元に手をかける。

 

「そしてその頼り先こそが、我々の真の敵だ」

 ジッパーを下ろしてパーカーを脱ぎ捨てる。その先には、フェニックス時代の制服が、白黒暗転した状態で着込まれていた。

 そして差し出された長官服もまた、同じく黒い詰襟となっていて、それを上から羽織る。ブルーバードの隊員だった者たちも、変身が解除されるや、それに倣ってパーカーを放り出す。そのプロテクターつきの黒き戦闘服を、外気に晒す。

 その同志たちを顧みて、畷は高らかに宣言する。

 

「今こそッ、欺瞞に満ちた青い鳥の名を捨てて、我らは本道に立ち返る! 宿命の業火で身を焼きながら、悪魔たちを、一匹残らず葬り去る! そう……我らこそは、『ネオフェニックス』だ!!」

 

 その意気に消し飛ばされるように、脱ぎ捨てられたブルーバードの制服は吸い込まれるように外に投げ出され、曇天の下を踊るのだった。




区切り時が分からなかった……実はこれで全体の四分の一なんよ。
と言うわけで、サンゴヤドカリ様のご提案、リクエストによりオリジナルタイプのデモンズをメインに据えて作品を作ります。

ただ一部設定を追加・改変させていただきました。
我ながら心ならずもヴィラン扱いとなってしまいましたが、憎まれ役にはしないように心がける所存ですので、長くぬるい目で見ていただければ幸いです。
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