リバイスFORWARD 〜仮面ライダーリバイと叛逆のデモンズ〜   作:大島海峡

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9.仮面の真情

 朝、起きてすぐに一輝はリバイスドライバーの納められたケースを手に取った。

 それを開けると、様々なスタンプもまた同梱されていた。

 使い慣れたもの。見覚えのないもの。形こそ似ているが、色違いのもの。

 

『単独変身用に、いくつかサンプルを用意しておいた。存分に使ってくれ』

 と、ジョージ狩崎のサインを末尾に、書置きが記されていた。

「狩崎さん……ありがとうございます」

 自分の行動と決断をどの程度まで読んでいたものかは分からないが、ひとまず寝入る彼に深く感謝を示した。

 

 そして向かう先は、占拠されたブルーバード本拠。その敷地内にある倉庫。

 策も何も無く、リーダーに会いたい用向きを伝えると、そこへと通された。

 その中にはこれみよがしにダークグリーンの楕円形のタンクが設置されていた。

 

「てっきり徒党を組んで侵入してくるものかと思いましたが、大胆な人だ」

 黒い詰襟の男が、その中で待ち受けている。

 綱本畷だ。すでにドライバーをその身につけ、臨戦態勢の様相だった。

 

「ご用の向きは、この兵器ですか」

 タンクを目線で示しながら、畷は問うた。

「それとも心をあらためて、悪魔を摘出する気にでもなりましたか」

 服もあいまって罪を赦す神父のようだったが、それこそまさかの提案だ。

 

 そのいずれにも一輝は首を振った。

 そのうえで、

「君に」

 と真っすぐ視線を注いで答えた。

 

「個人的なリベンジですか。あれで、僕なりに決着がついたと思ってたんですがね」

「でもあの時、俺は君の秘めたことを引き出せなかった。それを引っ張り出さない限り、敗けは認めない」

「今更秘めたことなんてありませんよ。我々の目的は、大義名分を得たうえでの悪魔の殲滅。とうに調べはついてるでしょうに」

「君の思いはどうなるんだ?」

「ですから、これが俺の本意ですよ。憎しみを超えて、人の世のためにこの身を捧げる。それが俺の選んだ生き方です」

 畷の開き切った瞳孔に、一輝の姿が写し取られる。

 その中の彼は悲痛に目を眇めていた。

 

「嘘つくなよ」

 と、口を動かした。

 

「……嘘?」

「最初は、俺もそうなんじゃないかって思ってた。俺には誰かを憎む気持ちがよく分からない。大切な誰かを失ったこともない。だから、そういうのに鈍感で……そういう人間も、いるんだと思い込んでた」

 顔を伏せた畷に、一輝は静かに言い立てた。

「でも、そうじゃない。俺も、狩崎さんたちも、当たり前に考えれば良かったんだ」

 

 母が狂った。

 妹が巻き添えにされた。

 父が死んだ。

 

「家族が死んで苦しい。殺した誰かが憎い……そんな当然の思いに、誰も気づいてやれなかったんだ……って」

 

 父や、あるいは大谷希望のように。

 だが五十嵐元太には愛する人がいた。そして自分で仇を清算した。

 希望にはそんな父ちゃんが傍にいてやれた。

 

「でも君の復讐には、勝手に幕が引かれた。力を得る前に、すべてが終わっていた。その苦しみに……気づいてやれる人が誰もいなかったんだ。みんな、君がそれを乗り越えた人間だと思い込んで知らず知らずそれを強制して、本当の意味で君に向き合おうとしなかった――君自身でさえ」

 

 だから、と。

 リバイスドライバーを取り出し、装着する。

〈レックス!〉

 スタンプに息を吹きかけ、反応感度を高めて後、押印。

 その背に、動くことのないメッセージウインドウが表示される。

「変身……!」

〈バディアップ!〉

 スロットを倒すと、ひとりでに落ちてきたスタンプ型のエネルギーが一輝を包み、その遺伝子を恐竜戦士のそれへ、仮面ライダーへと組み換える。

 今は深く眠りについているがために。

 印を捺し、背を押す相棒はいない。だから、自分で進み始めるしかない。

〈オーイング! ショーニング! ローリング! ゴーイング! 仮面ライダー! リバイ! バイス! リバイス!〉

 そしてリバイへと変身した彼は、穏やかな声とともに進み出た。

「俺が、君の感情のすべてを受け止める。向き合うことしか俺にはできないけど……もう、君も自分の感情(アクマ)から逃げるなよ」

 

 まだ、雨は止まず。むしろ、小康状態を経て、その勢いはさらに強まっていた。

 水の粒や屋根や窓を叩く中、吹き出すように、俯く青年は笑った。時と段階を経てその震えも、声も、より大きくなる。甲高く室内を揺らす。

 

「――受け止めるだ?」

〈トタテグモ!〉

 

()()()が、いったい俺の、何を受け止めるっていうんだ。俺の何が分かるっていうんだ?」

 声の震えは、もはや笑いによるものではない。今まで押し殺してきた感情のすべてが、渾然一体となってそこに在る。

 

〈Deal〉

 俯いたまま、畷がスタンプを押す。一輝の足下を、壁や天井を、無数の蜘蛛が這いずり回る。

〈Decide up! Trail. Train. Trigger……仮面ライダー・トラップ・デモンズ!〉

 それらが吐く白灰色の、分厚い糸がドライバーに押印した畷の身体を覆っていく。最後までその面持ちを伏せたままに。

 

「テメェら悪魔の一族の戦いに巻き込んで、俺たち家族から当たり前の幸せを奪っておいて――何が、『ふつうの家族』だッ!? よくもそんなことが言えたァッ!」

 それを食い破り、悪魔を討つ者、というよりもソレそのものの、異形の殻を纏って変身した彼は、声音からだけでも伝わる悲痛さと共に、一輝に向けて飛びかかった。

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